研究課題/領域番号 |
21H02720
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 秀人 愛知医科大学, 分子医科学研究所, 教授 (90240514)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | バーシカン / プロテオグリカン / バーシカイン / 細胞外マトリックス / クロストーク / マトリカイン / 遺伝子改変マウス / 炎症 / 腸炎 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞外マトリックスに存在する巨大分子バーシカン(Vcan)は各種病態の組織破壊・修復の際の仮設マトリックスの形成に中心的役割を果たす分子であり、その分解産物バーシカイン(V-kine)は新たな生理機能を獲得する。本研究では、種々のVcan遺伝子改変マウスに炎症モデルと腫瘍移植モデルを作出し、病変部位から種々の細胞を採取・分離して共培養系にてVcanとV-kineを介した細胞間の相互作用を解析することで、病態におけるVcanとV-kineの機能ならびにこれらの分子を介する細胞間のクロストークの実体を解明する。
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研究実績の概要 |
細胞外マトリックスのプロテオグリカン群のうちバーシカン(versican、以下Vcan)は各種病態の組織破壊・修復の際の仮設マトリックスの形成に中心的役割を果たす分子である。同分子はADAMTS蛋白質分解酵素群バーシカナーゼによって特異的に分解され、その分解産物バーシカイン(versikine、以下V-kine)は新たな生理機能を獲得することが明らかとなりつつある。本研究の目的は炎症と腫瘍の組織破壊・修復過程におけるVcanとV-kineの機能ならびにこれらの分子を介する細胞間のクロストークの詳細を明らかにすることである。 2021年度までに実施し2022年に論文発表した「バーシカナーゼ抵抗性Vcanを発現するノックインマウスV1R系を用いたドデシル酸ナトリウム誘導性腸炎モデルの研究」では、Vcanが由来する細胞による差異は認められなかった。そこでマクロファージと線維芽細胞との共培養系を中断し、線維芽細胞の三次元培養法を導入し、細胞外マトリックス形成におけるVcanの役割の解明を目指した。まず種々の三次元培養法を試みた結果、アンチトロンビン存在下でフィブリンゲルを作成する方法が再現性と細胞外マトリックスの形成等の点で優れていることを確認したため、同培養系を採用することとした。V1Rホモ接合体RRと野生型の皮膚線維芽細胞を培養すると、RRではコラーゲン線維、フィブロネクチンの沈着亢進が観察された。またin vivoの所見と同様、Vcanの沈着と筋線維芽細胞分化とが正の相関を示すことが確認された。引き続き、当該分化の機構解明を目指し、生理活性分子の発現等に関して検討を進めている。 また関連する研究として共同研究にて「胎児発育におけるVcan関連の役割」に関して論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RRノックインマウスと並行して、Vcan発現を人為的に欠失させるモデルも試してきたが、Vcan<flox/flox>:CAG-cre-ERT2マウス由来の線維芽細胞に対して培養系にてタモキシフェンを投与する系が難しいことが判明した。Vcanコンディショナルノックアウトマウスを用いたin vivoの実験系に関してもタモキシフェン投与の条件検討に相当の時間を費やし、期待通りのVcan発現欠失が得られなかった。そこでin vivo、in vitro共にAAV-cre系に切り替えることとしたため研究は全体として遅延を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、以下の二項目に関して研究を実施する。 1)三次元培養系においてVcanが細胞外マトリックス形成にどのように関与するのかを明らかにする。特に筋線維芽細胞への分化促進の作用と、コラーゲン等マトリックス成分のアセンブリに対する直接の影響の2つの可能性に関して検討する。また、V-kineによる分化抑制機構に関しては、細胞内シグナル伝達経路の解析を実施する。 2)腫瘍の微小環境の構築・維持にVcanやV-kineがどのような影響を与えるかを検討する。 昨年度までの研究では、マウス皮下に移植した腫瘍組織の形態学的観察では、RRに移植した細胞塊では野生型と比較して腫瘍分化が維持される傾向が窺われたが、個体差が大きく有意差が出なかったため、検体数を増やして検討を進める。RRマウスの個体差に関しては表現型の浸透度(penetrance)が影響している可能性があるので、合趾症を呈するRRマウスに絞って検討を行う。また腫瘍塊から腫瘍細胞、間質の線維芽細胞、マクロファージをそれぞれ分取し、腫瘍細胞-間質線維芽細胞、腫瘍細胞-マクロファージ、線維芽細胞-マクロファージの3つの組み合わせで細胞間クロストークの実体を解明する。 上記の2つの実験系に関してRRと野生型の比較のみならず、Vcan<flox/flox>にAAV-creを感染させた系を組み合わせて、より深い検討を実施する。
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