研究課題
基盤研究(B)
ロタウイルス(RV)は乳幼児に深刻な嘔吐・下痢症を引き起こす原因ウイルスであり、発展途上国を中心に年間約20万人の死亡例が報告されている。本研究では、独自に開発したRV遺伝子改変技術を駆使することで、VP4およびNSP4遺伝子に変異を加えた組換えウイルスを作製し、RV感染における侵入機構ならびに下痢症発症機構の解明を行う。得られた知見を基に、RV感染制御プラットフォームの構築を目指す。
HT29細胞(ヒト結腸癌由来)とサルロタウイルスSA11株を使用したCRISPR-Cas9ゲノムワイドスクリーニングを実施した。この結果、ロタウイルス感染に関わる宿主因子の一つとしてTumor Associated Calcium Signal Transducer 2(TACSTD2)を同定した。TACSTD2は皮膚や肺などの上皮に発現する膜1回貫通型糖タンパク質である。TACSTD2遺伝子をノックアウトすると、ロタウイルスの感染性が抑制されることが観察された。さらに、ロタウイルス感染によってTACSTD2の開裂が認められ、この開裂がロタウイルス感染に重要な役割を果たしていることが示唆された。膜貫通型の糖タンパク質であるTACSTD2は、Matriptaseによって細胞膜上で開裂されることが知られている。ロタウイルス感染細胞におけるTACSTD2の経時的な開裂が観察されたが、MatriptaseのノックダウンまたはMatriptase阻害剤Nafamostatの存在下では、ロタウイルス感染時の開裂が抑制され、ロタウイルスの感染性が低下することが確認された。これらの結果より、細胞膜上のTACSTD2がMatriptaseによって開裂されることでロタウイルスの細胞侵入に寄与していることが示された。サルロタウイルス(SA11株)をマウスで10回継代し、得られたマウス馴化ロタウイルスの性状を解析した。マウス馴化ロタウイルス(SA11m株)は、Balb/cマウスで親株と比較してウイルスの増殖性および下痢発症能が増強していた。3週齢のマウスでは、親株と比較して腸内で効率よく増殖することが観察された。SA11m株のシークエンス解析とリバースジェネティクスを用いた研究により、SA11m株の病原性増強に関与する分節遺伝子を同定した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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