研究課題/領域番号 |
21H02756
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
関谷 高史 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 免疫応答修飾研究室長 (80519207)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | 免疫学 / 癌免疫 / エピジェネティクス / ゲノム編集 / 細胞リプログラミング / 抗腫瘍免疫 / 腫瘍免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
「免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint blockade; ICB)」による抗腫瘍免疫の賦活化は、様々な進行癌の治療を可能とした。一方で奏効率や、対象となる癌種は依然限られている。従って、腫瘍組織で細胞傷害性T細胞(CTL)の疲弊化が誘導されるメカニズムのさらなる理解や、疲弊化CTLの賦活化を高効率かつ持続的に誘導する新規手法の開発は重要な課題である。本研究は、申請者が先行研究で構築した「新規・転写制御領域gRNAライブラリ」を基盤としたスクリーニングにより、疲弊化CTLに賦活化リプログラミングを導くエピジェネティック操作法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
① 疲弊化CTLレポーター細胞株、Tregレポーター細胞株をそれぞれ新たに3種類ずつ作製した 後述する通り、前年度までの研究で作製したレポーター細胞株(BW5147・CRISPRa/i-IL2-GFP, BW5147・CRISPRa/i-Foxp3-GFP)を用いたスクリーニングにより、CTLの疲弊化マーカー・PD-1の発現やTregマーカー・Foxp3の発現制御に寄与するクロマチン候補領域を複数見出しているが、内在性マーカーの発現をより忠実に反映するため、CRISPRa/i・IFN-g-GFPマウスから取得したプライマリー疲弊化CTL,およびCRISPRa/i・Foxp3-KIマウスから取得したプライマリーTh1細胞とBW5147細胞を融合し不死化させた、新たなレポーター細胞株をPEG法により作製した。 ② レポーター細胞株を用いたgRNAスクリーニングを進め、疲弊化CTLにおけるPD-1発現誘導やTh1細胞でのFoxp3発現抑制に寄与しているクロマチン候補領域を見出した BW5147・CRISPRa/i-IL2-GFPに対しては疲弊化CTLおよび活性化CTL、BW5147・CRISPRa/i-Foxp3-GFPレポーター細胞株に対してはTregから、それぞれ取得したヌクレアーゼ高感受性ゲノム領域gRNAライブラリーを導入した(スクリーニング操作)。それぞれPD-1発現低下細胞、Foxp3発現亢進細胞をソーティングにより取得し、細胞からライブラリーを回収し、2次ライブラリーを構築するというステップを3回繰り返した。このステップを経たライブラリー(4次ライブラリー)は、1次ライブラリーと比較し、PD-1発現やFoxp3発現を亢進に導く効率が著明に著明に上昇しており、目的のエピジェネティック変化を引き起こすクローンが著明に濃縮されている可能性が強く示唆される結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、既にスクリーニングは完了し、標的クロマチンに対するgRNAを用いた細胞リプログラミング、およびその効果の検討に着手している予定であるが、上記の通り現時点では、スクリーニングは完了していない。しかし、陽性クローンは著明に濃縮されており、順調であれば、標的クロマチン部位の同定はシーケンス解析のみで達成される段階にある。 さらに、最終年度(本年度)のメインテーマとなる、in vivoでのリプログラミングトライアルは、並行して作製している、目的の細胞種にin vivoでのレトロウイルス感染を可能とする「humanized Slc7a1マウス」が解析効率を飛躍的に高めることが期待される。従って、以上の当該年度に得られた成果と当初の研究計画を照らし合わせ、「やや遅れている」という評価が妥当であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究で4次ライブラリーまで濃縮した産物に対して次世代シーケンス(NGS)解析を行い、濃縮ライブラリーの構成因子を明らかとする。NGS解析結果をリファレンスゲノムにマッピングし、リプログラミングの標的となるゲノム領域を同定する。 また、前年度の研究で作製した、よりプライマリー細胞に近い性質を持つ「内在性レポーター細胞株」を用いたスクリーニングにも着手し、リプログラミングの標的となるゲノム領域のさらなる探索を行い、前年度までのスクリーニングでは見出されなかった新規標的部位の同定を試みる。 同定されたリプログラミング標的部位のgRNAに対しては、前年度までの研究で構築した、CRISPR/Cas9システムによるエピジェネティック操作を生体内で行うことができる遺伝子改変マウスに加え、上述の新規「humanized Slc7a1マウス」を用いた実験を行う。このin vivoでの試みにより、標的クロマチン部位エピジェネティック操作による、生体内での抗腫瘍免疫賦活化能およびTreg誘導能の検討を行う。特に、humanized Slc7a1マウスは、目的細胞種へのin vivoでのレトロウイルスの感染を可能とする世界初の試みであり、類似研究で行われている、in vitroで操作を施した細胞の移入実験では見出されなかった、新たなエピジェネティック制御因子の同定が可能となることが期待される。 また、細胞レベルでの解析に関しては、エピジェネティック操作を施した細胞からRNAを回収し、遺伝子発現解析を行うことで、当該gRNAとCRISPRa,CRISPRiを用いたエピジェネティック操作がCTLやTh1細胞に及ぼす作用を分子レベルで明らかとする。
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