研究課題
基盤研究(B)
近年、腫瘍微小環境において、がん細胞や免疫細胞など多細胞間での代謝の競合が腫瘍運命を決定する重要な要素の一つであることが明らかになりつつある。鉄は生体に必須の栄養素であり様々な生命機能を制御するが、腫瘍微小環境における鉄の役割は十分に解明されていない。本研究では腫瘍微小環境に存在する様々な細胞で鉄代謝を変容させることで、腫瘍運命の決定における鉄代謝の役割を調べる。本研究の遂行により鉄が制御する新たな生命機能や病態を明らかにするとともに、鉄動態の変容によるがんや炎症性疾患等の新たな予防・治療法の創薬シーズ開発を目指す。
がん細胞は、その周囲に混在する免疫細胞や間質細胞などと共に、複雑な細胞社会を形成し、それが腫瘍微小環境と呼ばれている。この腫瘍微小環境では、様々な細胞が相互作用し、がんの進行に関与している。近年、この腫瘍微小環境における細胞間での代謝の変化が、がんの進行に影響する重要な要素であることが注目されている。一方、鉄は生体に必須の栄養素であり、様々な生命機能を制御しているが、腫瘍微小環境における鉄の役割はまだ十分に解明されていない。本研究課題では、腫瘍微小環境に存在する様々な細胞における鉄の重要性を調べた。その結果、腫瘍微小環境において鉄ががん細胞の成長や免疫応答に影響を及ぼすことが明らかにされた。
鉄は生体に必須の栄養素であり、軽度の不足は貧血を引き起こし、重度の不足では生命活動を維持できなくなる。一方、その過剰は神経変性疾患やがんに関連することも知られており、生体において鉄量のバランスを維持することは非常に重要である。本研究ではがん細胞の成長や免疫応答における鉄バランスの重要性を明らかにした。これらの研究成果は、鉄が腫瘍微小環境においてがん細胞や免疫細胞にどのように影響を与え、がんの進展にどう寄与していくかという学術的理解を深めるだけでなく、今回解明された分子機構を基盤に将来的な研究を発展させることで、がんに対する新たな治療法開発への一助となることも期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
Cancer Science
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