研究課題/領域番号 |
21H02776
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川上 正敬 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90438648)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 肺癌 / 過剰中心体 / 多極性細胞分裂 / KIFC1 / anaphase catastrophe |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らはこれまでに、癌細胞でサイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)の阻害で過剰中心体の二極への収束が阻害され、多極性細胞分裂からアポトーシスに至ることを示し、この機構をanaphase catastropheと名付けた。正常細胞では過剰中心体はまれで、同機構は癌特異的な誘導が期待できるが、CDK2はもともと細胞周期進行に重要で、その阻害は正常細胞への有害作用も多い。本研究では、RNAスクリーニングにより、中心体収束に特異的に関与する標的候補を同定し、肺癌細胞株、マウスモデルを用いた機能解析を進め、anaphase catastrophe誘導による癌治療の新規標的の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
癌細胞の特性の一つに過剰中心体があり、申請者らは、肺癌細胞でサイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)の阻害により細胞分裂時の過剰中心体収束が阻害され、多極性細胞分裂により細胞死に至るanaphase catastropheが誘導されることを報告した(Kawakami M et al. J Natl Cancer Inst.2017; Kawakami M et al. Mol Cancer Ther.2018)。しかしCDK2は正常細胞の細胞周期進行にも重要で、癌の治療標的として最適ではない。本研究では、CDK2以外でanaphase catastropheを誘導する治療標的を同定し、癌治療機構として確立することを目指している。その有力候補としてキネシンタンパクであるKIFC1の肺癌における治療標的の可能性の検証のために、2021年度にRNA、蛋白でノックダウンを確認したsiRNAを用いて、昨年度は機能解析を進めた。複数の肺癌細胞株でKIFC1のsiRNAによるノックダウンで細胞増殖抑制効果を確認できたが、さらなる機能解析のために、siRNAによる一時的なノックダウンでなく、長期的なKIFC1ノックアウトの安定細胞株が望ましいと考え、レンチウィルスを用いたCRISPR-Cas9システムを導入することとし、まず、KIFC1のDNA配列に相補的なガイドRNAを複数設計した。次に設計したガイドRNAとCas9のレンチウィルスベクターの構築に着手した。現在は構築したレンチウィルスベクターを用いて、標的配列部位のDNAシークエンス及びウェスタンブロットによりKIFC1ノックアウト効率を確認中である。また、並行して、KIFC1の特異的阻害剤(CW069、AZ82)による解析も進めており、これまでに、複数の肺癌細胞株においてAZ82の細胞増殖抑制効果を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はsiRNAを用いたノックダウンによりKIFC1阻害の肺癌での機能解析を進める予定であったが、siRNAの導入効率や、今後予定している機能解析アッセイの種類やマウス実験を考慮し、siRNAによる一時的なノックダウンではなく、長期的なKIFC1のノックアウトが可能なレンチウィルスベクターによるCRISPR-Cas9システムを用いた方法でのKIFC1阻害をメインで進めていくこととした。そのため、CRISPR-Cas9に必要なガイドRNAを自ら設計し、また、レンチウィルスベクターへのガイドRNA-Cas9のサブクローニングなどを行う必要があり、市販ではなく、全て自分達の手で設計、構築したため、多くの時間を要した。KIFC1をより効率的に、かつ、長期に阻害し、今後予定している機能解析を円滑に進めるためには、必要な時間であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
KIFC1を標的とするガイドRNA-Cas9 レンチウィルスベクターの構築のために昨年度は多くの時間を要したが、今後は、実際に肺癌細胞で、標的配列部位のDNAシークエンス及びウェスタンブロットによりKIFC1ノックアウト効率を確認することができたら、これらを用いたKIFC1阻害による機能解析に進むことが可能な段階である。レンチウィルスベクター構築が完成すれば、これらを用いた機能解析アッセイについては、複数のアッセイを同時に行うことが可能であり、研究を推進するために、複数の細胞株、複数の機能解析アッセイ(ATP定量による細胞増殖アッセイ、アネキシンV/PI染色によるアポトーシスアッセイ、BrDU染色による細胞周期アッセイ、βガラクトシダーゼ検出によるセネッセンスアッセイ、細胞遊走能・浸潤能アッセイなど)を同時に行っていく。また、KIFC1の特異的阻害剤(CW069、AZ82)による同様の機能解析も並行して進め、KIFC1の肺癌での治療標的としての可能性を確立していきたい。
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