研究課題/領域番号 |
21H02785
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷口 智憲 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (40424163)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | ERストレス / がん免疫治療 / がん免疫療法 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者は、これまでの研究で、がん免疫療法の不応例の原因となる免疫抑制機構に脂質代謝異常が関与することを見出した。そのメカニズムの一つとして、ER(小胞体)ストレスが関与し、それは加齢による影響を受けている可能性が示唆された。そこで、本研究では、臨床検体とマウス腫瘍モデルの両方を用いて、ERストレスとがん免疫応答の関係を、代謝や加齢による影響を考慮しつつ解析し、その細胞分子機構を解明する。さらに、得られた知見に基づいてERストレス制御法を開発することにより、免疫チェックポイント阻害治療におけるバイオマーカー同定やPD-1/PDL1阻害を基軸とした効果的な複合がん免疫療法開発を目指す。
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研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬は、不応例に対する併用療法の開発と、奏効例を選別するバイオマーカーの探索が必要である。研究代表者は、不応例の原因となる免疫抑制機構に脂質代謝異常が関与することを見出した。さらに、そのメカニズムの一つとして、ER(小胞体)ストレスが関与し、それは加齢による影響を受けている可能性が示唆された。本研究では、担癌生体の免疫細胞におけるERストレスの原因と、それが抗腫瘍免疫応答に及ぼす結果を、脂質代謝や加齢の要素を加味し解析する。そして、ERストレスを標的としたがん免疫治療法を開発する。本年度は、抗腫瘍T細胞がERストレスを受ける原因として、脂肪酸代謝が関与しているメカニズムを明らかにした。脂肪酸飽和に関与する酵素であるSCD-1 (stearoyl-CoA desaturase 1)の阻害薬は、T細胞のERストレスを軽減し、さらに増殖などの機能も増強できる事が明らかとなった。この阻害薬と抗PD-1抗体の併用は、相乗的な抗腫瘍効果を示した。本酵素のノックアウトマウスでも、T細胞のERストレスが、野生型と比べて低下しており、抗PD-1抗体の効果が増強した。さらに、抗PD-1抗体で治療された肺癌患者血清中では、SCD-1の基質であるパルミチン酸と生成物であるパルミトレイン酸の比が、予後と相関していた。すなわち、後者の比が高いと予後が悪く、高SCD-1活性が、免疫抑制的である事を示唆しており、そこにERストレスが関与しいることが予想できた。 さらに、ERストレスの原因として、免疫チェックポイント分子が関与している事が明らかとなった。また、ERストレスがT細胞機能を抑制するメカニズムに関して、責任となる転写因子を見いだした。また、ERストレスに関与するタンパクに結合し、そのタンパク機能及びT細胞機能を増強させる可能性のある物質を同定し、実際の結合を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、免疫細胞がERストレスを受ける原因として、脂肪酸代謝が関与している事を明らかにした。SCD-1の阻害薬は、T細胞のERストレスを軽減でき、さらに、免疫チェックポイント阻害薬の併用は、相乗的な抗腫瘍効果を示す事が明らかとなった。これらの発見に関して、英文論文として発表した(Kato Y et al. Inhibition of stearoyl-CoA desaturase 1 (SCD1) enhances the antitumor T cell response through regulating β-catenin signaling in cancer cells and ER stress in T cells and synergizes with anti-PD-1 antibody. J Immunother Cancer. 10 e004616 2022)。 さらに、ERストレスがT細胞機能を抑制するメカニズムの解析、ERストレスに関与するタンパクに結合し、そのタンパク機能及びT細胞機能を増強させる可能性のある物質を同定し、その機能解析を行っている。また、加齢によってERストレスが変化する原因にも、なっていることが分かった。また、ヒト臨床検体や、マウスモデルにおいて、免疫細胞でのERストレスの実態を解析するための一細胞RNAシーケンスの条件検討も概ね終了した。以上より、概ね計画通り研究が進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
癌微小環境において、免疫細胞がERストレスを受ける原因の解析を行う。具体的には、本年度見いだした免疫チェックポイント分子がERストレスに関与するメカニズムに関して、マウスとヒトにおいて、より詳細に解析する。さらに、免疫細胞のERストレスが、抗腫瘍免疫応答に与える結果を解析も行う。具体的には、本年度までに、T細胞へのERストレスの影響が明らかとなり、責任転写因子が明らかとなった。このメカニズムに関して、さらにマウスモデルを用いて解析をすすめる。また、加齢によってERストレスが変化する事も分かったので、そのメカニズムに関して解析する。また、ERストレスに関与するタンパクに結合し、そのタンパク機能及びT細胞機能を増強させる可能性のある物質に関しては、そのメカニズムをより詳細に解析する。これらの実験と同時に、ヒト腫瘍組織中の免疫細胞における、ERストレスの実態を評価する。ヒトやマウス腫瘍組織内の免疫細胞でのERストレスの実態を解析する。本年度行った一細胞RNAシーケンスを引き続き行い解析する。
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