研究課題/領域番号 |
21H02793
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
森 誠一 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 次世代がん研究シーズ育成プロジェクト, プロジェクトリーダー (10334814)
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研究分担者 |
丸山 玲緒 公益財団法人がん研究会, がん研究所 がんエピゲノムプロジェクト, プロジェクトリーダー (60607985)
杉山 裕子 公益財団法人がん研究会, 有明病院 細胞診断部, 部長 (80322634)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 子宮体がん / エピゲノム / エストロゲン受容体 / CTCF / クロマチン高次構造 / DNAメチローム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではCTCF の変異による子宮体がんのエストロゲン非依存性の獲得ならびにがん化の機序を明らかにする。子宮体がんの既存データを利活用しながら、CTCF 変異型と野生型の腫瘍検体で統計比較を行い、CTCF の下流因子について、特にER 活性制御とDNA メチロームの変化に注目しながら探索する。臨床検体で得られた知見について、CTCF に変異を有する子宮体がんの細胞株やCTCF 野生型の細胞株に変異を導入した細胞株を用いて実験的に実証する。前向きに収集する臨床検体を用いてクロマチン3次元構造解析を行い、DNA メチロームとトランスクリプトームより類推した現象を確認する
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研究実績の概要 |
本研究ではCTCF の変異による、類内膜性子宮体がんのエストロゲン非依存性の獲得、ならびにがん化の機序を明らかにする。 多様ながん種でCTCF に変異を認め、特に子宮体がんでその頻度が高く、がん化に関わるドライバー遺伝子と考えられているが、その分子機序は不明である。本研究では、クロマチン3次元構造に着目し、CTCF の下流因子を、特にER 活性調節とDNAメチロームに注目しながら探索する。本研究により子宮体がんのエストロゲン非依存性の獲得とがん化の過程におけるCTCF の役割が明らかになり、新規分子標的治療・ホルモン療法の開発につながるものと期待される。 1) CTCF 変異によるDNA メチローム・トランスクリプトームの変化を測定する目的で、既存オミックスデータ(子宮体がん69 症例、子宮・卵 巣がん肉腫109 症 例)について、統合解析を進め、転写ドメイン内外における遺伝子発現の相関や、エンハンサーのDNA メチル化による近傍遺伝子の発現変化を調べた。TCGA の子宮体がんのオミックスデータを用いて、検証解析を行った。TCGAデータでは、CTCFおよびコヒーシン複合体構成分子の変異により、CTCF結合部位のメチル化が確認できた。自験例ではCTCF変異子宮体がんはエストロゲン受容体結合部位のメチル化が亢進していたが、TCGAデータでは亢進していなかった。 2) 臨床検体で得られた知見が細胞株でも観察できるかどうか確認する目的で、CTCF 野生型・変異型それぞれ3種類の類内膜性子宮体がん細胞株について、エク ソーム解析によりCTCFを含む子宮体がんドライバー遺伝子の変異を確認した。CTCF 変異型の細胞株においてエストロゲン反応性の低下は認められなかった。 3) 子宮体がんの手術検体ならびに臨床情報を、前向きに収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CTCF 変異体の子宮体がんにおいて、自験例とTCGA データベースの結果と齟齬があり、またCTCF 変異体の細胞株でエストロゲン反応性の低下が認められないなど、当初の想定から外れた結果が得られてはいるが、進捗として遅滞はなく、おおむね順調に進展していると考えている。 1) CTCF 変異によるDNA メチローム・トランスクリプトームの変化を測定する目的で、既存オミックスデータだけでなく、前がん病変などについても、統合解析を順調に進めた。前年度に開発したDNA メチル化による近傍遺伝子の発現変化を調べる手法を用いて、メチル化の程度と遺伝子発現との相関が指標になることを明らかにし た。TCGA の子宮体がんのオミックスデータを用いて、検証解析を行い、TCGAデータでは、CTCFおよびコヒーシン複合体構成分子の変異体における、CTCF結合部位 のメチル化が確認できたが、TCGAデータではエストロゲン受容体結合部位のメチル化亢進が観察されず、エストロゲン受容体経路のFOXA2, ZFHX3の発現低下も認めなかった。解析自体は順調であり、原因は不明であるが、TCGAではネガティブな結果であることが判明した。 2) 臨床検体で得られた知見が細胞株でも観察できるかどうか確認する目的で、CTCF 野生型・変異型それぞれ3種類の類内膜性子宮体がん細胞株について、エク ソーム解析によりCTCFを含む子宮体がんドライバー遺伝子の変異を確認した。CTCF変異体の細胞株で、エストロゲン反応性の低下は認められなかった。解析自体は順調であり、原因は不明であるが、細胞株では予想した結果を得られないことが判明した。 3) 子宮体がんの手術検体ならびに臨床情報を、前向きに順調に収集した。
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今後の研究の推進方策 |
自験コホートとTCGAにおいて、CTCF変異の下流においてエストロゲン受容体シグナルの反応性が大きく異なっており、CTCF変異体細胞株においてもエストロゲン反応性の低下は認めなかった。解析自体および臨床検体と臨床情報の収集は順調に進んでいるが、当初考えていた仮説が、エストロゲン受容体シグナルという点についてTCGAと細胞株では成立していないことが判明したものである。現在、腫瘍形成過程における子宮内膜の発生や分化に重要な転写因子の結合部位のDNAメチル化・遺伝子発現変化に着目し、腫瘍形成過程におけるそれらの転写因子の活性の変化を見るなど、CTCF-エストロゲンに拘泥せずに研究を推進している。現在、子宮内膜の発生や分化に重要な転写因子のうち、SOX17, FOXA2, HNF1Bなどの活性化、HAND2などの不活性化など、腫瘍形成過程におけるそれらの転写因子の重要性を示唆する結果が得られている。
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