研究課題/領域番号 |
21H02806
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51020:認知脳科学関連
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研究機関 | 株式会社アラヤ(研究開発部) (2022-2023) 生理学研究所 (2021) |
研究代表者 |
近添 淳一 株式会社アラヤ(研究開発部), 研究開発部, チームリーダー (40456108)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 脳機能画像 / 機能的MRI / 脳機能イメージング / 機械学習 / 技術開発 / 多ボクセルパターン解析 / 島皮質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究においては、ヒト味覚の神経基盤の機能構造の解明を目的として、撮像技術と解析技術の開発を進める。ネズミのカルシウムイメージング研究の結果では、島皮質における味覚マップの存在が示唆されているのに対し、ヒトの機能的MRI研究では、味覚マップの存在を支持するような結果は得られていない。島皮質の解剖学的・機能的特徴を考慮して、最適な撮像手法と解析手法を開発し、ヒトとネズミの味覚神経基盤研究間で得られた結果の不一致が、計測、機能構造、種差のいずれに由来するものかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、7テスラの超高磁場MRIを用いた味覚実験を施行した。被験者には、あらかじめ苦味、甘味、酸味、塩味、旨味の5種の基本味覚刺激をそれぞれ4段階の濃度で変化させた刺激に対し、刺激の好ましさ、不快さ、強さの3項目について回答してもらった。これらの回答に基づき、刺激の強さが5種の基本味覚刺激の間で可能な限り近くなるように、機能的MRI実験で使用する刺激の濃度を選択する。本年度は計40名のデータを取得し、現在解析を行っている。 また、一部予定を前倒しして、脳領域間活動推定法による「刺激によって生じる副次的脳活動の解析的除去法の開発」を行った。具体的には、オンラインで公開されているHorikawa et al., 2017の視覚実験データを用いて、腹側視覚路における注意機構によるトップダウン修飾の影響、あるいは、網膜からのボトムアップシグナルの影響を取り除く手法を開発した。例えば、初期視覚野であるV1の脳活動は網膜からのボトムアップシグナルを強く反映したものとなっているが、ここには、Fusiform gyrusなどの高次視覚野からのトップダウンシグナルの影響も含まれている。また同様に、高次視覚野の脳活動には、V1などの初期視覚野で表現される刺激の傾き情報などを反映した、低次の視覚特徴の影響も含まれる。 もし仮に、このような影響を解析的に除去できるのであれば、脳活動からの表象内容の解読(decoding)の精度を高めることが可能であり、関連分野への大きな波及効果が期待できる。解析の結果、このような情報解読の精度を有意に改善できることが示されたため、この結果をまとめて、Frontiers in Human Neuroscience誌にて発表した(Pham et al., 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
島皮質は基本味覚の中枢であるのみでなく、情動や注意機構、口腔内の体性感覚とも関連しており、これらが基本味覚への反応と混合することにより、複雑な活動パターンを示すことが知られている(Craig 2009; Rolls 2016)。苦みと甘みといった味覚の違いは異なる情動的反応を惹起するため、これらの影響を実験的に除去することは困難であり、副次的脳活動を解析的に除去する手法を新規に考案する必要がある。 令和3年度は、脳領域活動推定法の技術を確立させることを目的に、視覚実験のデータを用いて、領域間の活動をリッジ回帰によって推定する手法の開発を進めた。例えば、高次視覚野の活動から初期視覚野の活動を推定した上で、この成分を元の初期視覚野の活動から除去し、表現される視覚情報(例:GIST)の変化量を計算することで、初期視覚野におけるトップダウン修飾の影響を定量化することができる。さらに、このような情報の流れが課題依存的に変化することを明らかにした(Pham et al., 2021)。 この技術は本研究において、中核的な役割を果たす。すなわち、味覚野のみでなく全脳の活動を測定し、頭頂葉などの味覚と関連をもたない脳領域の活動から島皮質の活動を推定し、この成分を除去する。この手続きによって、味覚刺激提示中の島皮質の脳活動から、味覚と関連のない成分の除去を試みる。 上述したように、領域間活動推定法の応用による、刺激関連活動情報の解読精度の改善技術を確立したことで、「島皮質において、味覚マップが発見されていないのは、味覚と関連しない活動が混入していることによる」という仮説を検証することが可能な状況となっている。この手法を適用することにより、ヒトの島皮質においても味覚マップが発見されることを予想している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、取得済みの超高磁場MRIデータを用いて、領域間活動推定法による副次的脳活動除去を島皮質に適用し、味覚マップの同定を試みる。味覚野は島皮質と前頭眼窩野、および前頭弁蓋、頭頂弁蓋であることが先行研究で示されているため、これらの領域の活動を、それ以外の脳領域の活動から推定し、推定された成分を元の脳活動から除去する。この手続きにより、味覚と関連の弱い交絡因子(例:情動や注意)を除去することで、味覚マップの同定が可能となることを期待している。 さらに、Gradient-Echo法と、より磁場の不均一性の影響を受けづらいSpin-Echo法を組み合わせた撮像法で、空間解像度を向上させられることが知られている3D-GRASE法による撮像を1x1x1mmの超高解像度で行う。島皮質は視覚野などと比べて皮質が厚く、レイヤー・レベルの信号の分離を行う際には、この特徴は有利に働く。脳表の流出静脈は信号強度が高いため、機能的MRI実験の際にはこれを含めることで観察したい効果の検出力が上がることが期待されるが、一方で、流出静脈においてみられる信号は近傍の領域の影響を加算したものとなるため、空間的特異性は失われる。本研究においては、信号の空間的特異性を高めるために、脳表の画素を除外して皮質深部~中央部のみを解析に用いる。さらに、線形判別分析(Chikazoe et al., 2019)などの機械学習的手法を用いて、脳活動のパターン情報に基づき基本味覚の分類が可能であるかを検証する。先行研究の結果が流出静脈の影響による信号の混合で説明できるものであるとすれば、空間的特異性を高めることにより、味覚clusterの分離が観察されることを予想している。
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