研究課題/領域番号 |
21H02809
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岩田 修永 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (70246213)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | ジスキネジア / PRRT2 / 大脳基底核 / ドーパミン / マイクロダイアリシス / ドーパミントランスポーター / ノミフェンシン / 線条体 / ドパミン / ドパミントランスポーター / ノックインマウス |
研究開始時の研究の概要 |
PRRT2は発作性運動誘発性ジスキネジア(PKD)の原因遺伝子である。申請者はPRRT2の家族性変異を導入したPrrt2ノックインマウスを作製し、本マウスの線条体で神経興奮時に細胞外ドーパミン (DA) 濃度が著増することを見出した。線条体へのDA入力は大脳皮質-大脳基底核ループ (運動回路) を調節するため、PKDの痙攣や不随意運動はPRRT2変異による過剰なDA伝達に起因すると考えられる。本研究では、Prrt2変異による細胞外伝達物質濃度の著増が線条体またはDAに選択的な現象か、また、この著増が神経回路の活動性を高めるかを検証し、Prrt2による細胞外伝達物質濃度の制御機序を解明する。
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研究実績の概要 |
発作性運動誘発性ジスキネジア(PKD)関連分子PRRT2の大脳基底核運動ループにおける病態生理学的役割について解析した。 ・ 研究代表者はPrrt2変異によってマウス線条体間質液中のドーパミン(DA)濃度が神経興奮依存的に顕著に増加することを見出している。そこで、この発見とPKD病態との関連を明確にするため、二重免疫染色法を用いて大脳基底核でPrrt2を発現する神経細胞のサブタイプを調べた。Prrt2は、線条体、淡蒼球外節、黒質、視床下核のうち、線条体のみでDA作動性神経細胞マーカー・ドーパミントランスポーター (Dat) と共局在した。昨年度までの結果と考え合わせると、Prrt2は線条体のDA作動性神経細胞のプレシナプスに局在し、間質液中のドーパミン(DA)濃度の調節に関わることが明らかになった。一方、研究代表者はPrrt2変異がDAだけでなくセロトニンも神経興奮依存的放出を促進することを見出しており、現在、Prrt2のセロトニン作動性神経細胞への局在性についても解析している。 ・ Prrt2変異による神経興奮依存的間質液DA濃度の上昇には、① DAの細胞内取り込み機能の抑制、② シナプス小胞から細胞外へのDA放出促進、③ DAの小胞内取り込み機能の抑制が関わると仮説を立てた。線条体にDat阻害剤ノミフェンシンをマイクロダイアリシスの灌流液から投与したところ、間質液DA濃度は野生型マウスに比較してPrrt2変異マウスで増加した。次に、ノミフェンシン存在下KClを共投与するとPrrt2変異マウスで間質液DA濃度はさらに増加した。 これらの結果は、PRRT2がDAの放出と、部分的に再取り込みに関与しており、PRRT2の機能低下が線条体DAの過剰放出を介して、PKD発症に関わることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究成果の概要」に記載した通り、令和4年度に計画した研究内容はほぼ達成できている。【項目3】については視床-大脳皮質ループに注目してPrrt2のPKDに及ぼす責任脳領域をさらに詳細に調べるための準備段階として、マウスの視床(視床外側腹側核+視床前腹側核)から投射を受ける大脳皮質(一次運動皮質M1領域)にマイクロダイアリシスプローブを挿入する座標を既に決定している。現在、定常時および神経興奮時のDA、グルタミン酸、GABAの間質液中濃度を測定し、少しずつデータが蓄積している。 【項目4】のPRRT2による細胞外神経伝達物質量の恒常性維持制御機序の解析についても、マウス線条体マイクロダイアリシスでの薬剤の投与量、投与スケジュール、還流液回収間隔等、測定条件の十分な予備試験を終了して、Dat阻害剤投与の解析が完了している。 現在、これまでのデータで投稿論文を書き終えたが、論文の内容を俯瞰し、足りていないデータを補充している。 以上の理由により、本研究課題が概ね順調に進行していると判断し、(2) を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
計画調書に沿って、昨年度に引き続き【項目3】【項目4】の解析を進め、【項目6】に取り組む。 【項目3】 Prrt2変異により線条体で神経興奮依存的な DA放出が顕著に増加することがPKD発作を引き起こすという研究代表者の仮説を実証するため、線条体刺激時の大脳皮質の興奮性の変化を調べる。(方法) 野生型およびPrrt2 KIマウスの線条体に神経興奮を誘導し、大脳皮質の細胞外グルタミン酸濃度をマイクロダイアリス法により測定し比較する。同時に線条体の細胞外DA濃度もモニターし、大脳皮質のグルタミン酸濃度との相関性を調べる。 【項目4】 PRRT2が神経活動時に細胞外のDAまたはその他の伝達物質量を制御する分子機構を薬理学的に明らかにする。 (方法) 野生型およびPrrt2 KIマウスの線条体に、開口放出阻害剤 (カルシウムキレーター: BAPTA-AM)やVMAT2阻害剤等の薬剤をマイクロダイアリシスの灌流液から投与した後、KClで神経興奮を誘導して、細胞外神経伝達物質濃度を測定する。[ノミフェンシンについては令和4年度に完了] 【項目6】 PKDの創薬標的および治療薬候補の選定と治療有効性の検証を行う。本研究で明らかにしたPRRT2の生理的機能およびPKD発症機序をもとに、開口放出や細胞外DA濃度を調節する薬剤等、治療薬となりうる薬剤を考案し、Prrt2 KIマウスの異常な神経活動を抑制するかを検証する。(方法6) Prrt2 KIマウスに治療薬候補となる薬剤を投与し、【項目3】で確立した大脳皮質・大脳基底核ループの活動性を評価する系を用いて、薬剤投与による大脳皮質のグルタミン酸量、線条体のDA量を測定する。
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