研究課題/領域番号 |
21H02813
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
野田 賀大 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (20807226)
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研究分担者 |
中島 振一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60383866)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / ニューロモデュレーション / 経頭蓋磁気刺激療法 / TMS誘発脳波 / 神経可塑性 / 非侵襲的経頭蓋磁気刺激法 / TMS脳波計測 / 新規TMS療法開発 / ニューロモジュレーション / TMS / TMS-EEG / MRIナビゲーション |
研究開始時の研究の概要 |
ASDは、その中核症状である「こだわりの強さ」や「対人関係を調整することの難しさ」を特徴とした発達障害であり、それらの先天的な脳の特性により生活に支障を来しやすい(発現率は約3.5%)。しかしながら、その苦悩を生み出す原因となる特性そのものを改善させる治療法は存在しない。AMPA受容体の新規リガンドを用いた予備的なASD-PET研究では、特にASDの神経基盤に内側前頭前野のAMPA受容体機能の亢進が関与している可能性が示唆された。本研究ではASDの神経基盤の一つである内側前頭前野にQPSプロトコルを適用することでASDの中核症状を改善させることができるかどうかを検証することを目的としている。
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研究実績の概要 |
2022年度は、自閉スペクトラム症(ASD)患者30名から収集した、経頭蓋磁気刺激法(TMS)と高精度脳波計測(EEG)を組み合わせたTMS-EEGデータに関する神経生理学的解析を進めた。特にASD患者の前頭前野における、GABAB受容体介在性神経生理機能を反映した生理指標である長間隔皮質内抑制(Long-inerval intracortical interval: LICI)の解析を行い、ASD患者では健常者と比べ、前頭前野のGABA機能が相対的に低下している可能性が示唆された。さらに、TMS誘発脳波に関して時間周波数解析を追加し、ASD患者では、健常者と比べ、ベータ帯域の位相同期性が過剰に亢進している可能性が示唆された。
また、2022年度はASD患者に対する新規TMS治療法を開発するための準備段階として、まずは治療抵抗性うつ病に対して現在一部使用されている左前頭前野に対するシータバースト刺激によるニューロモデュレーション治療の有用性について、予備的に検討した。その結果、ASD患者においても同治療法は、うつ症状に関しては一定の有効性を示すことを明らかにした。しかしながら、ASD患者の中核症状に関しては現行のTMS治療では限界があるため、今後研究開発を進めていく上での重要な課題であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度はASD患者30名に対する左前頭前野におけるTMS-EEG計測データのうち、LICI指標の解析を終え、健常者における解析結果を対照に一定の結果を出すことができたため。
さらに、ASD患者に対する新規TMS治療法の開発に向けた準備として、通常のシータバースト刺激療法がASD患者のうつ症状に対して与える影響をオープンラベルケースシリーズとして実施し、ASD患者のうつ症状に対しては、一定の有用性があることを検証することができたこともその理由の一つに挙げられる。
また、今年度後半から着手予定のASD患者を対象とした新規TMS治療法開発に向けた医師主導臨床研究(特定臨床研究)の認定臨床研究審査の承認を取得することができたことも理由の一つとして挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
ASD患者の背外側前頭前野を対象としたLICI-TMS-EEG研究の論文化を目指す。 また、2023年後半からASD患者を対象とした新規TMS治療法開発に関する特定臨床研究を開始し、実際の症例の組入れと臨床評価および新規治療法の介入を行っていくことを目標とする。
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