研究課題/領域番号 |
21H02819
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
原田 高幸 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 参事研究員 (90345306)
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研究分担者 |
行方 和彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 副参事研究員 (70392355)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 神経変性疾患 / 遺伝子治療 / 軸索再生 / 視神経再生 |
研究開始時の研究の概要 |
代表的な神経変性疾患として、視神経や脊髄の外傷、多発性硬化症、アルツハイマー病などに注目し、疾患モデルを用いて新しい治療法の開発を目指す。特に遺伝子治療による神経保護と軸索再生を促進することを目標とする。合わせて霊長類における検討を行い、将来的な臨床応用を目指す。
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研究実績の概要 |
脳や視神経などの中枢神経系において神経回路が傷害されると、その修復や機能の改善は不可能と考えられてきた。しかし近年では軸索伸長等を促進する因子として、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor; BDNF)などの神経栄養因子が注目されている。しかし神経栄養因子は半減期が短いことから繰り返し投与の必要性があり、また仮に反復投与できたとしても、受容体の発現量が低下するなどして、持続的な効果を得ることは難しいと考えられてきた。 本研究ではBDNFの高親和性受容体であるTropomyosin receptor kinase B(TrkB)の細胞内領域のみ(iTrkB)を細胞膜に強制発現させるアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-iTrkB)を作製した。これを緑内障の疾患モデルマウスに眼球内投与して、網膜神経節細胞に対する神経保護効果を調べた。さらに視神経または上丘の外傷モデルに対しても同じAAV-iTrkBベクターを投与し、視神経軸索の再生効果について検討した。 今回開発したAAV-iTrkBベクターでは、一度だけの眼球内投与により、BDNFの投与無しに、網膜神経節細胞における細胞内シグナルを活性化することに成功した。また緑内障の疾患モデルマウスにおいても神経保護効果を促進し、神経変性の進行を抑制した。さらに視神経外傷モデルにおいては、視神経軸索が視交叉に到達するほどの強力な再生効果が確認された。一方、上丘外傷モデルにおいては、再生線維が切断部位を超えて上丘内に到達し, 視機性動眼反射が一部改善した. 以上からAAV-iTrkBベクターを用いた遺伝子治療が神経変性疾患の進行抑制や機能回復に寄与する可能性が示された。以上の成果を、米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy」誌上で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
緑内障及び視神経外傷モデルに対する遺伝子治療効果が確認され、すでに論文発表を終えている。
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今後の研究の推進方策 |
我々の考案した遺伝子治療では、一回の投与で数ヶ月間の持続効果があり、かつ十分な治療効果が観察された。今後は遺伝子導入を行う細胞の特異性や効果を上げるために、さらなる遺伝子ベクターの改良や効果的な投与方法を検討する。また炎症や癌化などの副作用が見られないか、さらに長期間の効果についても観察を続ける予定である。
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