研究課題/領域番号 |
21H02835
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
浅原 哲子 (佐藤哲子) 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究部長 (80373512)
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研究分担者 |
猪原 匡史 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (00372590)
二宮 利治 九州大学, 医学研究院, 教授 (30571765)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2021年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 認知症 / 糖尿病 / 肥満 / TREM2 / 予防戦略 / アミロイドβ / 早期予知バイオマーカー / 治療戦略 / 単球・ミクログリア / 単級・ミクログリア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は超高齢社会における認知症抑制に向け、糖尿病・肥満に伴う認知症進展機序の解明と効果的予防法の確立を目的とする。 本研究では構築した複数コホート(一般住民/糖尿病・肥満/認知症)、新規血液マーカー測定系(sTREM2・Aβ・タウ)やTREM2欠損マウス等を基盤に、以下4項目を検討する。①肥満・糖尿病進展におけるTREM2の病態意義、②認知症発症における脂肪-脳連関の分子機構の解明、③認知症血液バイオマーカー同定、④TREM2を標的とした認知症予防法確立。 以上より、本邦の糖尿病・肥満における認知症進展機序・脂肪-脳連関の解明とTREM2を標的とした新規評価系・予防戦略の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、単球・ミクログリアに発現するTREM2に焦点を当て、複数コホートやTREM2 欠損マウスを基盤に、糖尿病・肥満から認知症進展における脂肪-脳連関の分子基盤を解明し、TREM2を標的とした認知症の新規評価系・治療戦略の開発を目指す。 国立病院機構(NHO)多施設共同肥満症・糖尿病研究(JOMS/J-DOS2)(20施設・800例・5年追跡)では縦断解析により、肥満では認知機能指標(MMSE)低下と関連する指標はCAVI、糖尿病患者では血中sTREM2であり、肥満症と糖尿病では動脈硬化や炎症が認知症進展要因である事を示した。また、非肥満糖尿病患者HbA1cの増悪群では、sTREM2の初期高値が2年後の認知機能低下と有意に関連し、sTREM2が認知機能低下の新規予知指標となると報告した(Front. Endocrinol 2022)。 また、認知症・MCIコホート2000例を構築し、血中sTREM2と新規アッセイ系による血中Aβ・tauの同時測定を施行した。糖尿病の有無や認知症の重症度間で、血中Aβ42/Aβ40比 sTREM2値に有意差を認めた。特に、糖尿病群ではミクログリア機能障害によるsTREM2低下が起点になると考えられ、糖尿病性認知症の特徴と予知評価系を提唱した(Diabetes Res Clin Pract 2022)。現在、コグニティブフレイルに関する健診とNHO多施設共同肥満症・糖尿病コホート(J-DOS3)も構築し、糖尿病・肥満に伴う認知症・フレイルの病態を臨床的に検討している。さらに、肥満・糖尿病マウスの脳と脂肪組織では野生型に比し、TREM2の発現亢進を認め、TREM2は肥満・糖尿病に伴う脂肪組織リモデリングと認知機能低下に密接に関わると示唆された。本研究より、TREM2を標的とした脳-脂肪連関、糖尿病性認知症の病態と予防戦略の基盤を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も下記臨床・基礎研究を推進し、予定通りに次年度に続く研究基盤を構築し、さらに臨床試験の成績を纏め、英文誌への発表も行った。 1.臨床研究:1)NHO多施設研究 糖尿病・肥満症コホート(JOMS/J-DOS2)を構築し(20施設・800例)、現在5年目の追跡調査を終了し、全例のデータ固定 を仕上げた。2年間縦断データを用いて、論文報告を行い(Front. Endocrinol 2022)、現在、5年間の縦断解析を施行中である。2)さらに、コグニティブフレイルに関するNHO多施設共同肥満症・糖尿病コホート(J-DOS3)も採択され、現在、糖尿病・肥満に伴う認知症・フレイルの多施設共同研究の基盤を構築している2)認知症・MCIコホート2000例の登録が完了し、先行して一部症例に対し、 世界初で血中sTREM2と血中Aβ・tauの同時測定・比較検討した。その結果から、糖尿病性認知症の特徴(糖尿病群ではミクログリア機能障害によるsTREM2低下が起点となる)を報告し、糖尿病性認知症の特徴と予知評価系を提唱することができ、雑誌や学会でも反響があった(Diabetes Res Clin Pract 2022)。 2.基礎研究:TREM2欠損マウス、認知症モデルマウス(脳アミロイド血管症マウス、老化マウス)にて高脂肪食負荷による試験を推進し、計画通り、体組成・糖脂質代謝や認知機能テスト含めて成果を蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
I. 臨床研究(縦断研究):2年度に継続し、NHO糖尿病・肥満症コホート(JOMS/J-DOS2:登録後8年)と認知症・MCIコホート(登録後6年)、さらに新規構築したNHOコグニティブフレイルコホート(J-DOS3)と健診コホートを含め、体組成、糖脂質代謝、血液マーカー(sTREM2・Aβ・tau)と認知症診断成績(認知機能【MMSE, HDS-R】・脳画像検査)との関連解析より、各マーカーの認知症予知指標としての有用性を検討する。認知症の病型別(AD, VaD等)、病態ステージ別及び糖尿病の有無別に、特異的な予測マーカーを同定し、糖尿病から認知症発症過程での各血液マーカー(血中sTREM2・Aβ・tau)を比較し、各マーカーの特徴や出現時期を検討する。以上より、糖尿病性認知症、肥満に伴う認知症の特徴と予知指標・予防戦略を提唱する。II. 基礎研究:A. 動物実験: [1] TREM2欠損マウスの高脂肪食負荷や遺伝性肥満マウスとの交配により、脂肪蓄積・脂肪細胞肥大化、炎症、インスリン抵抗性進展など脂肪組織リモデリング・異所性脂肪に対するTREM2の病態意義を解明する。脳内Aβ・tau・TREM2の解析や認知機能への影響を検討し、糖尿病性認知症に対するTREM2の病態意義も解明する。[2] TREM2欠損マウスと認知症モデルマウスとの交配(高脂肪食負荷)を検討し、肥満・糖尿病に伴う認知症発症におけるTREM2の影響を明らかにする。脳内のAβ・tau等の解析から、糖尿病や肥満に伴う認知症進展における脳内TREM2・Aβ・tau出現の経時変化を検討し、各マーカーの意義を解明する。 B. 細胞実験:脂肪細胞やミクログリアを用い、生活習慣病薬や申請者が認知症改善作用を認めたタキシフォリン等のフラボノイドによるTREM2・炎症や各臓器のリモデリングへの影響とその分子機構を検討する。
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