研究課題/領域番号 |
21H02842
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
高嶋 博 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (80372803)
|
研究分担者 |
樋口 雄二郎 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (10867724)
安藤 匡宏 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特任助教 (60896976)
橋口 昭大 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (70760560)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
|
キーワード | Charcot-Marie-Tooth病 / 遺伝性ニューロパチー / ゲノム解析 / 遺伝子診断 / 末梢神経 / RFC1遺伝子 / NOTCH2NLC / リピート伸長 |
研究開始時の研究の概要 |
Charcot-Marie-Tooth病患者の包括的遺伝子診断を継続して行う事により、個別のCMT病患者の診断をすることはもちろん、本邦の分子疫学を正確に把握する。 また、遺伝子別にCMTの特徴を明らかにし、疾患の特徴や予後などを検討する。 加えてCMT病の新規原因遺伝子の同定を行い、治療法開発をめざした病態解明のブレイクスルーを行い、個別に治療法についてヒントを得る。発見された遺伝子は、共同研究で動物モデルを作製し、病態解析をして、将来の治療につなげる。
|
研究実績の概要 |
本年度も、遺伝子診断は順調に行われ、Ion PROTONシークエンサーを用いている。陽性率向上のため、従来の72遺伝子から100の原因遺伝子に増加させた。我々の診断は世界で最も詳細なものと思われるが、それを様々な面から分析し、J Hum Genet(2022)に報告した。今年度は9編の国際ジャーナルに論文を発表することができ、特に、本年度は,小脳失調症、末梢神経障害を呈するCANVASの原因RFC1遺伝子が末梢神経障害の原因であることが明らかとなり、我々も本邦において調査した。CMTについては18例のRFC1の異常がみいだされ、成人発症のCMTの原因として重要であった(Biomedicines,2022)。遺伝性感覚自律神経性ニューロパチー(HSAN)については、79例中22例にRFC1遺伝子の異常が見られ、本疾患の圧倒的に最も多い原因となっている。(Front Neurol,2022)さらに、我々は脳、末梢神経障害、自律神経症状を伴う神経核内封入体病(NIID)の原因であるNOTCH2NLC遺伝子のリピート延長について、未診断のCMT患者から 22家系26名の患者を診断し、その臨床像を詳細に解析しJNNP誌(2023)に報告した。NIIDは通常、中枢神経症状と特徴的なMRI異常所見により診断されるが、我々の診断した26例には、特徴的なMRI所見は2例にしかみられず、末梢神経障害主体の患者が多数存在することが明らかとなった。その他の遺伝子では、POLR3B遺伝子異常による脱髄型CMTの特徴をAnn Clin Transl Neurol誌(2022)に報告。さらにSLC12A6遺伝子によるCMTは、世界で8例しか報告がなかったが、4例の患者と2例の疑い患者について臨床像をAnn Clin Transl Neurol誌(2022)に報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
遺伝子診断はここ1年250例の依頼があり、総数3000名近くとなり、順調におこなわれている。一次スクリーニングにIon PROTONシークエンサーを用いた包括的な解析を行っているが、そのスクリーニング法を改良し、CMTのみならず、遠位型ミオパチーやFALSなど間違われやすい関連疾患も迅速に診断できるようにした。さらにRFC1遺伝子とNOTCH2NLCが、本邦の遺伝性ニューロパチーの主要な原因であることが、我々の研究で判明したため、遺伝子のリピート伸長のスクリーニングシステムも構築した。論文として報告するとともに、多くの患者、主治医に原因判明を報告することができた。 新しい原因遺伝子や報告された遺伝子について、日本人の臨床像を解析し、順次投稿しており、本年度に9編の遺伝性ニューロパチーの論文が発表し、多くはIF4点以上で、NOTCH2NLC遺伝子の報告はトップ10%ジャーナルのJNNP誌(IF13.654)にも掲載された。昨年度と通算して20編近くになり、本研究では想定以上の論文報告を行うことができている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では大規模の遺伝子臨床像の解析を2023年度も継続していく。本年度に、ロングリードのシークエンスに対応したOxford NANOPORE社GridIONシークエンサーを導入したため、今後リピート伸長の疾患についてもより詳細に調べていく予定である。 これまで、遺伝子検査が陰性の場合にはエクソーム解析を行っている。これまでに800名に行われ、さらに、東京大学ゲノム医学研究所の辻省次教授との共同研究で、800例を追加予定で、東京大学ゲノムセンターで解析中である。 さらに開発した新規の遺伝子異常を抽出するESVDシステムを用いて新規原因遺伝子の発見を継続していく。ESVDシステムはエクソーム解析を用いて、一人あたり100-200個程度の強い変異を抜きだし、家系間で比較し共通の遺伝子異常を見いだすことで、新規CMT関連遺伝子を発見する方法である。現在本システムで発見した遺伝子Xについて、動物モデルを作製し、解析がおおよそ完成した。その他の新しいCMTの原因の候補も抽出した。
|