研究課題/領域番号 |
21H02845
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
久住 一郎 北海道大学, 医学研究院, 教授 (30250426)
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研究分担者 |
石川 修平 北海道大学, 大学病院, 助教 (30880091)
橋本 直樹 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (40615895)
扇谷 昌宏 旭川医科大学, 医学部, 講師 (60636455)
豊巻 敦人 北海道大学, 大学病院, 助教 (70515494)
古賀 農人 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 精神科学, 助教 (70744936)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 統合失調症 / 認知機能障害 / CCL11 / 神経炎症 / 酸化ストレス / モデル動物 |
研究開始時の研究の概要 |
ケモカインCCL11は神経炎症、酸化ストレスを亢進し、認知機能低下をもたらすことが知られている。しかしながら、in vivoの基礎的研究、動物研究、臨床研究について十分な検討はされてない。本研究では、CCL11が細胞レベルで分泌能の増大が神経細胞に与える影響を探索する。動物実験として、CCL11投与モデル動物や統合失調症モデル動物で、CCL11の分泌能増大が神経炎症、酸化ストレスを亢進させ、認知機能低下を引き起こすか検討する。臨床研究として統合失調症患者の末梢血のCCL11濃度が、MRIで評価した大脳のミエリン鞘の密度低下に寄与し、認知機能検査の低下をもたらすが統計学的に検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は精神疾患の1つである統合失調症の認知機能障害について、免疫に関わる分子であるケモカインCCL11が特異的に中枢神経系で細胞傷害作用をもたらし、認知機能を低下させるかどうかを検討する、臨床研究と動物研究、基礎研究からなるトランスレーショナル研究である。 臨床研究については、統合失調症患者50名を対象に、採血によるCCL11濃度の測定、認知機能検査、精神症状評価、MRI撮像による全脳のミエリン鞘の信号強度を測定し、媒介分分析によってCCL11濃度の増加がミエリン鞘信号強度の低下を介して、認知機能検査成績低下を有意に予測するかを検討する。2022年度の成果について、患者に精神症状の評価、認知機能検査の施行について長時間の面談が必要であり、新型コロナ禍による感染症対策の必要性から研究体制を整えるのみであった。 動物研究については、各種統合失調症のモデル動物でCCL11濃度が増大するかどうか、動物における認知機能に対応する行動評価課題での成績低下が見られるかどうかを検討する。2022年度は、メタンフェタミンを用いた統合失調症のモデル動物(覚せい剤モデル)について、短期投与、長期投与においてもCCL11濃度の上昇は確認されなかった。その後に行ったフェンサイクリジンを投与したNMDA受容体低機能仮説に基づく統合失調症のモデルにおいてもCCL11濃度の上昇が見られなかった。他方で、ポジティブコントトールとしてLPS(感染症を引き起こすグラム陰性菌)投与モデルでは、CCL11濃度の上昇が見られたことから、統合失調患者でCCL11濃度が増大する臨床的知見に反して、統合失調症のモデル動物では、検討したどのモデル動物でもCCL11増加が見られなかった。患者では、神経伝達機能異常とは異なって、CCL11増加に寄与する病態の存在を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究について、やや遅れているとした理由は、臨床研究の進捗が遅れたことが寄与する。臨床研究では、統合失調症患者を対象に精神症状評価、認知機能検査による面談があり、長時間を要する。その他MRI計測、採血を行う。2022年度は新型コロナ禍による感染症対策を遵守する必要があることから、患者のリクルート、計測を控えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後について、臨床研究としては患者のリクルート、計測を本格的に着手する。2023年度内に必要例数のデータを得て、様々な知見が得られるが、特に末梢血CCL11濃度が、全脳のミエリン鞘信号強度を介して、認知機能検査成績を予測するか統計学的な探索を行う。動物研究については、統合失調症モデル動物の検討とは異なって、野生型マウスにCCL11を投与して、統合失調症モデル動物との認知機能を反映する行動異常が見られるかを探索する。また2022年度に行った統合失調症モデル動物の脳資料、2023年度に行うCCL11投与モデル動物の脳資料について、電子顕微鏡を用いて特にミエリン鞘傷害、その他、神経細胞傷害が見られるかどうか検討する。
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