研究課題/領域番号 |
21H02874
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
小平 聡 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, グループリーダー (00434324)
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研究分担者 |
小川原 亮 京都大学, 化学研究所, 助教 (00807729)
楠本 多聞 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, 主任研究員 (90825499)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | 線量率効果 / 放射線化学分解 / ラジカル / 放射線治療 / 超高線量率放射線治療 / 電子線 / 陽子線 / 超高線量率 / 放射線化学 / 放射線分解 / 炭素線 / フラッシュ放射線治療 / 線量率 / 作用機序 |
研究開始時の研究の概要 |
通常の放射線治療で用いる照射線量率(0.03 Gy/s程度)に比べて1000倍以上の極端に高い線量率(>40 Gy/s)で照射する超高線量率放射線がん治療(FLASH)の利点は、腫瘍への治療効果を維持しつつ、周囲の正常組織への副作用を低減できることにある。FLASH効果は細胞や動物を用いた生物実験によって確認されている一方で、その作用機序は未だ明らかになっていない。そこで本研究では、生体を模擬した水の放射線分解生成物(OHラジカル、水和電子、過酸化水素)の収率と線量率の関係について、治療用放射線(電子線、陽子線、炭素線)に対して系統的に検証し、FLASH効果の作用機序を実験的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
放射線照射により水溶液中で発生する放射線分解生成物の一つである水和電子ならびに過酸化水素の収率の照射線量率依存性について陽子線ならびに電子線を用いて実験的に調べた。量子科学技術研究開発機構の大型サイクロトロンの火災事故により停止状態であるため、フランス国立科学センターユベールキュリアン学際研究所のサイクロトロン(CYRCe)を活用した25 MeV陽子線の照射を実施した。また、京都大学化学研究所の線形加速器を用いて20 MeV電子線の照射を実施した。ラジカル同士の再結合によって生成が予測される過酸化水素(*OH + *OH → H2O2)の定量をゴームレー法ならびに電気化学検出法により行った。メタノール及び硝酸ナトリウムの混合水溶液を用いた実験を実施することで、照射後の水和電子及びOHラジカルによる過酸化水素の分解を防ぐことが可能である。参照実験として純水を用いた照射実験も行った。純水に陽子線ならびに電子線照射を照射すると、過酸化水素の収率は線量率の増加に伴って減少する。これは先行実験によって示された傾向と一致するものであり、過酸化水素が隣接するトラックから生成した水和電子やOHラジカルと反応し、分解が進んだものと考えられる。これと比較してメタノール及び硝酸ナトリウムの混合水溶液を用いた場合、過酸化水素の収率は線量率の増加に伴って単調に増加した。間接作用を支配しているOHラジカル同士の再結合が高線量率領域で促進され、間接作用を低減させたことを示すエビデンスと考えられる。今後、水和電子との反応を切り分けた測定を進めるとともにデータの再現性の確認を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在故障中の陽子線照射用のサイクロトロンの代替となるフランスのサイクロトロンを活用した照射体系を構築でき、水溶液中に生じる放射線分解生成物の線量率依存性の測定を予定通り進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って、水溶液中に生じる放射線分解生成物の線量率依存性とLET依存性の検証を進め、モンテカルロシミュレーションとの比較を今後実施する予定である。また、高エネルギーの陽子線(230 MeV)を用いた照射実験を新たに住友重機械工業株式会社と共同で進める予定である。
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