研究課題/領域番号 |
21H02878
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
磯田 健志 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (80815225)
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研究分担者 |
高木 正稔 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (10406267)
森尾 友宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30239628)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 非コードRNA / ThymoD / エピジェネティクス / 白血病 / 免疫不全症 / メチル化 / 転写 / ゲノムの3次元構造 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らはT細胞分化に必須の転写因子BCL11bに注目し、そのスーパーエンハンサー上の非コードRNA転写停止が、細胞の分化異常による疾患や、がんの悪性クローン形成にも関与することを示してきた。本研究では、腫瘍細胞に生じる遺伝子変異の特徴や、ThymoD転写領域におけるR-loop形成と脱メチル化の制御機構、相分離とスーパーエンハンサーの核内局在の影響について明らかにするだけでなく、ヒトThymoDの同定と同領域の変異解析・ゲノムの3次元構造解析を実施することで非コードRNA転写によるエンハンサー活性化機構の解明を飛躍的に推進できると考えている。
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研究実績の概要 |
【ThymoD転写とゲノムの3次元構造の検討】B細胞系及びT細胞系白血病細胞株を用いてThymoD-BCL11B領域のクロマチンの状態をATAC-seq、転写産物をRNA-seq、ChIPseqによるRNAポリメラーゼIIの結合状態及びヒストン修飾、3次元構造を捉えるHi-C法を実施し、正常T細胞及びすべての白血病細胞株において、ThymoD-BCL11B領域のドメイン構造の構成が異なることを確認した。さらにアクチノマイシンD、BRD4阻害剤、CDK7阻害剤を添加しゲノムの3次元構造に変動を認めるか、時間軸での解析を実施した。 【ThymoD転写とメチル化制御機構の解明】スーパーエンハンサー上で生じる非コードRNA ThymoD転写がDNAメチル化に影響するか検討を行った。前述の阻害剤をそれぞれを添加し、ChIP-seqによる時間軸でTET2の結合状態、ヒストン修飾、Hi-C法、ゲノムのメチル化状態についてtarget capture法を用いて実施した。シークエンス結果を得たのちに変動を確認する予定である。 【ThymoD転写領域にリクルートされる候補分子の同定】白血病細胞株にdCas9-APEX2システムを用いた標的ゲノム周辺の蛋白質修飾法を用いたプロテオミクス解析の準備を行った。一部の細胞株にdCas9-APEX2の導入に成功し、標的領域に対するsgRNA発現プラスミドのスクリーニングを実施している。 【ThymoD転写産物の同定】B細胞系、T細胞系白血病細胞株、正常T細胞、患者T細胞性白血病細胞を用いたThymoD転写産物の同定も試みている。ロングリードシークエンサーによるIso-seqを完了し、対象コントロールのタンパク質をコードする遺伝子の転写産物と比較し、ThymoDのアイソフォームに違いがあることを確認できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想通り、ThymoD-BCL11B領域が広い遺伝子砂漠上に位置していることから転写停止により3次元構造への影響を可視化することができている。B細胞系およびT細胞系白血病細胞株のクロマチンの開閉状態、ヒストン修飾、転写活動と転写物のデータ、Hi-C解析を実施済みである。加えて、メチル化を評価するためtarget capture sequenceを実施し、非コードRNA転写とメチル化及びゲノムの3次元構造を評価するための基礎データを入手できていることが理由として挙げられる。転写活動の違い、阻害剤を用いた急激な非コードRNA転写停止が、スーパーエンハンサー活性化維持にどのくらいの時間経過で影響を与えうるか、検討できると考えている。dCas9-APEX2を利用した近接性依存性標識法によるスーパーエンハンサー上にリクルートされる蛋白質複合体の検討準備を行っており、sgRNAのスクリーニングを完了させることで非コードRNA転写領域にリクルートされる候補蛋白質の同定を進められると考えている。さらには、Iso-seqを実施することでヒトThymoDの様々な転写産物を同定することができている。転写がオンである転写領域、その転写産物の機能について検討を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
【ThymoD転写とゲノムの3次元構造の検討】ThymoD転写停止後、時間軸で得たHi-Cデータを取得している。転写停止の影響をゲノムワイド及び標的領域であるThymoD-BCL11Bドメインの変化に注目し比較検討を行い、論文化に向けた作図などを進めていく。 【ThymoD転写とメチル化制御機構の解明】転写停止後、脱メチル化因子のリクルート低下を確認している。転写停止後、どのくらいの時間軸でDNAメチル化自体の変動を生じるか、標的領域を中心としたメチル化解析を行い検討する。 【ThymoD転写領域にリクルートされる候補分子の同定】dCas9-APEX2システムを用いた標的ゲノム周辺の蛋白質修飾法を用いたプロテオミクス解析を実施する。sgRNA標的領域の選定をT7E1アッセイにてスクリーニングし、dCas9がリクルートされているかChIP PCR法を用いて確認を予定している。標的領域への到達が確認されたらビオチン化反応の誘導を行い、蛋白質の抽出を予定する。本手法でdCas9のリクルートがうまくいかない場合は、MS2配列のゲノムへの挿入と、転写後のMS2配列に結合するMCP-APEX2を用いたバックアッププランも行っていく。プロテオミクス解析は学内の解析センターとの打ち合わせ済みであり、今後予備検討結果を検討して解析を進める計画である。これらにより、非コードRNA転写がどのように候補蛋白質を転写領域に誘導し、スーパーエンハンサーの活性化に寄与するか引き続き検討を進めていく。
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