研究課題/領域番号 |
21H02890
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
中川 修 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (40283593)
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研究分担者 |
原田 恭弘 立命館大学, 生命科学部, 助教 (70911402)
川村 晃久 立命館大学, 生命科学部, 教授 (90393199)
渡邉 裕介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (20562333)
浦崎 明宏 京都府立医科大学, 医学部, 研究員 (40550083)
橋本 大輝 近畿大学, 医学部, 助教 (40911342)
岩朝 徹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (80712843)
白石 公 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 客員研究員 (80295659)
LAMRI LYNDA 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, リサーチフェロー (90883984)
垣花 優希 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, リサーチフェロー (40910534)
能丸 寛子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (30885538)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 心血管発生 / 血管病 / 先天性心疾患 / シグナル伝達 / 先天性心血管疾患 / 遺伝性血管病 / 内皮細胞 / 心筋細胞 / 遺伝子組換えマウス |
研究開始時の研究の概要 |
心血管系のシグナル伝達異常は遺伝性血管病や先天性心血管疾患の原因となり、生後に生ずる脳血管障害・網膜症・癌などにおいても重要である。私達はこれまでに、ヒト心血管疾患に重要な意義を有するシグナル伝達系の下流ターゲットとして遺伝子発現制御や細胞間・細胞内分子相互作用に働く機能因子を同定してきた。本研究では、これら機能因子の生体における意義・分子機能メカニズム・発現制御機構・心血管疾患における意義を明らかにすることを試みる。
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研究実績の概要 |
私たちは先天性心血管疾患および遺伝性血管病において直接の病因あるいは素因となる遺伝子変異に注目し、原因遺伝子が働くNotchおよびALK1シグナル伝達系の研究を進めている。特に、NotchおよびALK1シグナル伝達系の下流ターゲット因子として、Hey転写因子ファミリー・Tmem100膜タンパク質・Sgk1リン酸化酵素などを同定し、その生理的・病態生理的意義の検討を行ってきた。私達および他の研究者の研究を通して、これら遺伝子の欠損によってマウス胎仔が重篤な心血管形成異常を示して致死となることが明らかになっており、その発現制御機構や機能メカニズムが注目されている。今回の研究では、遺伝子組換えマウスモデルと分子生物学的手法などを用いて、これらのNotchシグナル・ALK1シグナルの下流ターゲット因子について、その上流発現制御機構と分子独自の機能メカニズムを明らかにすることを試みている。その結果、Hey1・Hey2・Tmem100・Sgk1の胎生期心臓あるいは血管系における特異的発現を規定するエンハンサー制御領域を特定することに成功した。これらのエンハンサーはタンパク質をコードするエクソン領域や転写開始点から数十キロベース以上離れた遠位に存在するにもかかわらず、マウス胎仔における当該遺伝子の発現に重要な役割を有していた。さらに、そのエンハンサー領域をゲノムから欠損させた遺伝子組換えマウスの一部はエクソン領域欠損マウスと同様の発生異常を示し、心血管発生に必須の意義を有することが明らかになった。さらに、これらのゲノム領域に結合してエンハンサー活性を亢進させる複数の上流転写因子を同定し、それらの相互作用と遺伝子発現様式の関係を詳細に検討するとともに、これら下流ターゲット因子の分子機能解析においても、特にTmem100の小型膜タンパク質としての細胞機能における意義についての研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究において遺伝子組換えマウスモデルと分子生物学・生化学・組織学的手法を組み合わせた解析を行なった。Notchシグナル・ALK1シグナルの下流ターゲット因子の上流発現制御機構を検討し、特にHey1・Hey2・Tmem100・Sgk1の胎生期心臓あるいは血管系における特異的発現を規定する遠位のエンハンサー制御領域を特定することに成功したことは、これらの下流ターゲット因子の胎生期心血管発現の分子メカニズム解明に必須のステップとなる。さらに、そのエンハンサー領域に結合して当該遺伝子の発現をコントロールする転写因子の同定にも成功したことは、Notchシグナル・ALK1シグナルと協調・クロストークして働く新しい上流シグナル伝達系の解明にもつながると予想される。また、下流ターゲット因子の分子機能解析においても、特にTmem100の小型膜タンパク質としての細胞機能における意義について検討が進んでいる。これらの成果は、心臓・血管系の胎生期発生・形態形成機構の基礎的研究としてのみならず、ヒト疾患の病因・病態の分子機構解明の基盤としても重要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
循環器系(心臓・血管系)の発生・形態形成を制御するシグナル伝達機構の異常は先天性心血管疾患および遺伝性血管病の原因となり、成人の虚血性疾患・癌などの疾患における病的血管新生においても重要な意義を有する。本研究では、引き続き遺伝子組換えマウスモデルと複数の実験手法を組み合わせて、NotchおよびALK1シグナル伝達系を中心とした心臓・血管系の胎生期発生・形態形成機構の研究を進める。例えば、これまでに複数のNotchおよびALK1シグナル下流ターゲット因子について、そのエンハンサー領域に結合して転写制御に働く上流転写因子を同定したが、動脈・静脈内皮、心房・心室筋、胎生期・成熟期による遺伝子発現の特異性を完全にコントロールするメカニズムの解明には至っておらず、今後のさらなる研究の継続が必要と考えられるため、ゲノム網羅的な解析・一細胞レベルの解析を含めて幅広く検討を進めてゆく方針である。さらに、同定したエンハンサーの特徴を活かして未分化前駆細胞の特徴づけ・マーキング、未分化前駆細胞から心臓血管系細胞への分化制御の新規手法開発の基盤情報獲得にも努めたい。これら下流ターゲット因子やそのエンハンサーゲノム領域のヒト疾患に病因・病態における意義も併せて検討する計画である。
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