研究課題/領域番号 |
21H02951
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宮本 敏浩 金沢大学, 医学系, 教授 (70343324)
|
研究分担者 |
菊繁 吉謙 九州大学, 大学病院, 講師 (40619706)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
|
キーワード | 急性白血病 / 白血病幹細胞 / 微小残存病変 / 治療抵抗性 / TIM-3 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではTIM-3シグナル阻害療法の開発を見据えて、TIM-3でマークされる治療後に残存する治療抵抗性白血病幹細胞(LSCs)の細胞生物学的特性の解明に取り組む。治療後に残存する極少数のLSCsを直接純化し、genomic解析技術、single cell transcriptome解析により、治療抵抗性残存LSCsの多様性の解明を行う。さらに質量分析装置をベースとした網羅的シグナル解析を行い、治療抵抗性LSCsが依存するシグナル経路の解明に取り組む。これら研究により治療後に残存するTIM-3陽性治療抵抗性LSCsを根絶するための基盤とする。
|
研究実績の概要 |
白血病幹細胞(LSCs)は、再発・治療抵抗性の獲得に中心的な役割を担うが、実際の臨床上は治療後残存するLSCsは極少数であるために、LSCsを直接対象とする研究は困難で、再発難治メカニズムは不明のままである。これは正常造血幹細胞(HSCs)とLSCsを識別する有効な表面マーカーが欠如しているため、極少数のLSCsを純化できないことに起因している。申請者らは癌幹細胞を標的とした治療モデルを白血病において確立すべく、世界に先駆けてLSCsの特異的表面抗原TIM-3を同定し、その機能としてLSCsの自己複製を制御する分子であることを見出した。2021年度までの臨床検体を用いた研究において、同種造血幹細胞移植後の症例において、幹細胞分画内のTIM-3発現により治療抵抗性残存LSCsをモニターすることが可能であることを見出した。TIM-3により再発難治化に繋がる機能的なLSCsを正確に捕捉し、高純度にLSCsを分離することが可能である。真の治療抵抗性TIM-3陽性LSCsを純化し、シングルセルあるいは100-1000の少数細胞数レベルでgenomics/transcriptomics/proteomics解析を行い、より詳細に治療抵抗残存LSCsの生物学的特性を検討する。これにより、治療抵抗性LSCsが依存する生存メカニズムを解明し、新たな治療開発のプラットフォームを構築するため、本研究を計画した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度までコロナ禍医療体制において化学療法・同種移植治療が先送りされ、十分な検体収集が遅延していた。2022年度中期から臨床検体収集に関して増加傾向に転じ、TIM-3陽性LSCsの推移解析と臨床経過、特に同種移植後を評価している。移植後寛解およびドナー造血を構築した79例において、幹細胞分画内のTIM-3陽性LSCs率を評価しROCカーブ解析により適切な閾値を設定して、予後との関連性を検証した。結果は、TIM-3陽性率に基づきhigh, intermediate, lowの3群に分類すると、再発リスクが明らかに層別化され、多変量解析にて残存TIM-3陽性率は独立した移植後再発の予後因子となった(Sakoda et al, manuscript in preparation)。TIM-3は移植後ドナー由来HSCsと残存LSCsを識別する有効なマーカーと考える。今年度はより多数の検体を用いて予後との相関を確固とする。 TIM-3シグナル阻害療法開発を見据え、TIM-3でマークされる治療抵抗LSCsの細胞生物学的特性の解明に取り組んでいる。TIM-3はそのリガンドGalectin-9とのオートクライン・ループを形成し、恒常的に古典的Wnt/beta-catenin経路を活性化することで白血病幹細胞活性の維持に寄与する機序を明らかにした (Sakoda et al. Blood Adv 2023)。 極少数のLSCsを純化し、genomics、single cell transcriptome解析により、治療抵抗残存LSCsの多様性の解明も併せて施行中である。また質量分析をベースとした網羅的シグナル解析を行い、治療抵抗LSCsが依存するシグナル経路の解明に取り組む。この研究により治療後に残存するTIM-3+LSCsを根絶する基盤とする。以上の経過から予定している本研究課題については概ね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は2023年度以降も研究計画書に記載した3項目を中心に研究を行う。 1.TIM-3による残存LSCs推移解析とモニタリングシステムの構築:症例集積の継続をしながら、同時に予後の層別化をより効率的に分類可能となるようなパラメーターの探索を行う。本研究で得られた結果をもとに、TIM-3と共発現するLSCsマーカーを組み合わせた微小残存病変(MRD)検出パネルおよび評価システムを開発する。リアルタイムでAML症例のMRD結果が得られることにより、本邦で遅れているMRDガイド下でのAML個別化治療の推進を図る。 2.Single cell transcriptomics解析による治療抵抗性TIM-3+ LSCsの潜伏メカニズム解明:2022年度までに確立した解析システムを用いて、多数例での解析に取り組む。新規Tapestri platformを利用した遺伝子変異解析と遺伝子発現解析を同時に行う解析を樹立し、シングルセルにおけるマルチオミックス解析を行なっている。またTIM-3はT細胞に発現する免疫チェックポイント分子として報告され、PD-1に続く第2世代チェックポイント分子として注目されている。現在までに、残存微小LSCs分画は免疫逃避関連分子およびシグナル増殖関連分子が微小残存LSCs分画に高発現していることを見出している。さらに多くの臨床検体を用いて、免疫学的観点からも多面的に検証する。 3.Genomics解析による治療抵抗性TIM-3+ LSCsのクローン進化の解明: CyTOFにより潜伏LSCsに特徴的な細胞内シグナル特性について定量的に解析を行う。さらに質量分析装置をベースとした網羅的シグナル解析を行い、治療抵抗性LSCsが依存するシグナル経路の解明に取り組む。これら研究により治療後に残存するTIM-3+治療抵抗性LSCsを根絶するための基盤とする。
|