研究課題
基盤研究(B)
ワクチンは感染症の予防において重要な役割を果たしてきました。多くのワクチンは、病原体が産生するタンパク質に対する免疫応答を増強することを主眼として作製されています。しかし、タンパク質のアミノ酸配列は変異しやすいことからワクチンが効かない変異株の出現が懸念されます。私たちは、病原体脂質を標的とした新しい免疫応答の存在を明らかにしてきました。脂質は変異の導入が困難であることを考慮し、有効な脂質ワクチンの開発を目指しています。
研究代表者は、アカゲザルエイズモデルの詳細な免疫解析を通じて、ミリストイル化ウイルスタンパク質のN末端配列に由来するリポペプチドを標的としたCD8陽性細胞傷害性T細胞応答の存在を発見し、特定のアカゲザルMHCクラス1分子群(Mamu-B*098, Mamu-B*05104)がその拘束分子として機能することを明らかにした。本研究課題においては、将来のリポペプチドワクチン開発を念頭に、有用な小動物モデルの樹立とそれを活用したリポペプチド特異的CTL応答の人為的賦活化法の確立を目指した研究を展開している。本年度、樹立を完了したTAPペプチドトランスポーター欠損(TAP KO)Mamu-B*098トランスジェニック(B098 Tg)マウスの詳細な解析を行った。まず、脾臓細胞の各細胞分画および骨髄樹状細胞におけるMamu-B*098の細胞表面発現はTAPに依存しないことを確認した。またB098 Tg/TAP KOマウスにおいては、non-Tg/TAP KOマウスに比して、CD8陽性T細胞の絶対数やT細胞における比率が優位に増加することを見出した。したがって、Mamu-B*098拘束性CTLの分化はTAP非依存的に起きると結論づけた。さらにB098 Tg/TAP KOマウスに対し、B型肝炎ウイルス(HBV)S1タンパク質のN末端に由来するミリストイル化ペプチド(C14-S1)を搭載したBCGによる感作を行い、脾臓細胞を採取してC14-S1リポペプチドで頻回刺激することによりC14-S1特異的CTLクローンを樹立することに成功した。したがって、従来の概念と異なり、TAP非依存的なMHCクラス1拘束性CTL応答の存在が明らかになった。なお、リポペプチド搭載BCGに代わる免疫賦活化法としてAlumアジュバントや脂質ナノ粒子についても検討したが、BCGを超えるポテンシャルは見出せなかった。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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International Immunology
巻: 35 号: 1 ページ: 7-17
10.1093/intimm/dxac046
Journal of Biological Chemistry
巻: 298 号: 7 ページ: 102100-102100
10.1016/j.jbc.2022.102100
https://www.infront.kyoto-u.ac.jp/laboratory/lab06/