研究課題/領域番号 |
21H02992
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
谷口 高平 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (70779686)
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研究分担者 |
柴田 雅朗 大阪医科薬科大学, 医学部, 功労教授 (10319543)
林 淳祐 大阪医科薬科大学, 薬学部, 助教 (30740295)
河村 暁文 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (50612579)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | microRNA / 核酸医薬 / ドラッグデリバリーシステム / 核酸創薬 / DDS / 酸化還元 / 切除不能 / miRNA / 創薬 / 化学修飾 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、癌抑制型miRNAの補充療法による難治性固形癌の新規治療戦略を構築するため、これまで作製を進めてきたマテリアル・動物モデルを駆使し、miRNA創薬化に向けた検証を行うことが目的である。具体的には、①改良した新規合成miRNAを中心に、開発した独自の輸送キャリアや動物モデルを用い、新規合成miRNAの抗腫瘍効果を検証する。②細胞内還元環境を利用する新たなmiRNA輸送システムの検証を行う。
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研究実績の概要 |
昨年度の継続実験として、大腸癌骨盤内再発モデルを用いて、化学修飾型miRNA-143をリポフェクションにより全身投与する動物実験を中心に進めた。結果として、化学修飾型miRNA-143を投与した群で有意な抗腫瘍効果を確認した。さらに、抗腫瘍効果の機序を明らかにするために、miRNA-143投与後の腫瘍切片を用いたプロテオーム解析を実施し、標的遺伝子としてMARCKSを同定した。細胞実験において、MARCKSのノックダウンによって顕著な細胞増殖効果を認めた。以上の結果をまとめて論文として発信した。 細胞内還元環境を利用した新たなDDS開発に関しては、検討期間の延長を申請し、合成miRNA-145に2'-O-メチルの修飾位置に関する最適化の検討等を実施した。本年度はヌクレアーゼに分解を受けやすい位置を同定し、2'-O-メチル修飾を付加した合成miRNA-145を作成し、細胞導入実験を実施した。これまでの実験で分解能の抑制は示されていたが、細胞に導入した際の、増殖抑制効果は乏しい結果となった。 還元分解型カチオン性ゲル微粒子とmiRNAのポリプレックス形成については、細胞内導入および、殺細胞効果についての検討を進めた。カチオン性ゲル微粒子が細胞内でより低分子量まで分解されることでmiRNAの効果が増大することが確認できたが、市販の製剤を用いたリポプレックスと比較して殺細胞効果が3分の1程度であった。よって、ポリプレックスの細胞内移行をさらに最適化することが必要であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗腫瘍効果の検証に関しては計画通りに進め、結果を報告することができた。しかし、当初の想定に反し、化学修飾型miRNA-143のマウスがん細胞への増殖抑制効果が限定的であることが判明した。このため、特に免疫応答評価が可能な別の動物モデルを用いる必要が生じた。また合成miRNA-145の検討に関しては、作成した合成miRNA-145が期待したほどの導入効果を示さなかったため、一旦、検討を中断することとなった。また、作成したゲル微粒子キャリアは安定性は認めたものの、殺細胞効果が既存のリポフェクタミンに劣後していた。このため、更なるプロトコルの最適化が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
化学修飾型のmiRNA-143に関しては、抗腫瘍効果の汎用性を広範囲に検討するため、新たに別のがん種における動物モデルを作成し、その効果の検証を開始している。これまでの研究で示された抗腫瘍効果の理解をさらに深め、より多くのがん腫での効果を確認することが目的である。現在、一部の動物モデルに対するmiRNA-143の投与効果の検討を進めており、抗腫瘍効果も確認されている。次年度さらに詳細な解析を実施する計画である。 また治療における副作用および抗炎症作用、特に腫瘍発症予防効果に関する研究を遂行している。この目的のため、新たな動物モデルの作製に着手しており、これによりmiRNA-143の副作用と腫瘍に対する予防効果を同時に評価することが可能だと考えている。このモデルで有用な効果が得られた場合、副作用とその予防効果についての詳細な検討を進め、次のステップとして臨床への応用可能性を探る計画である。 一方、酸化還元反応を利用した新規の薬物送達システム(DDS)の開発に関しては、これまでの検証結果から、特にゲル微粒子キャリアを用いたDDSに焦点を当てている。このキャリアシステムを使用することで、薬物の安定性を向上させつつ、標的細胞への効率的な薬物送達を実現することを念頭においている。現在、このゲル微粒子キャリアを用いたDDSにおける細胞実験を中心に、プロトコルの最適化を進めており、これにより薬物の送達効率および細胞への取り込み効率を最大し殺細胞効果をより得られる方法を探求している。次年度も検討を継続し、プロトコルの最適化を目指す計画である。
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