研究課題/領域番号 |
21H03002
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
檜井 孝夫 広島大学, 病院(医), 教授 (10444689)
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研究分担者 |
坂本 直也 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, ユニット長 (20571798)
下村 学 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (60457249)
外丸 祐介 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (90309352)
仙谷 和弘 広島大学, 医系科学研究科(医), 講師 (30508164)
池上 恒雄 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (80396712)
高倉 有二 広島大学, 学内共同利用施設等, その他 (20581698)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 治療抵抗性大腸癌 / マウスモデル |
研究開始時の研究の概要 |
大腸癌は遺伝子異常が多段階に蓄積して発生するため遺伝学的に複雑な癌であるが, 近年,遺伝子発現やゲノム不安定性によってサブタイプ分類されてきている. 治療抵抗性サブタイプのCMS3(代謝型)とCMS4(間葉型)で全体の4割を占め, CMS3ではBRAFやPI3K変異による高度浸潤癌, CMS4ではTGFbシグナル異常による間葉浸潤癌となる. 本研究では, 治療抵抗性の形質をもつCMS3やCMS4を再現する複合的遺伝子改変マウスモデルを作製し、腫瘍検体の解析により治療抵抗性の原因となるバイオマーカーの同定ならびに新規候補薬の開発を目指す.
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研究実績の概要 |
研究の成果:本研究では,治療抵抗性大腸癌に分類されるCMS3(代謝型)大腸癌, CMS4(間葉型)大腸癌の分子病態の解明と新規分子標的の同定による治療法の開発を目的としてきたが、以下の成果が得られた。 (1)CMS3(代謝型)マウスモデルを使った実験では、大腸癌でドライバー遺伝子としてRAS, BRAF,PI3K/PTENなどが関与しており、これに関連したマウスから腫瘍細胞を回収し、ゲノム解析を提出することができた。まずApc+Krasマウスでは、ゲノム不安定性に起因するheterogenietyが存在することから、二つのゲノム不安定性(MSIとCIN)を背景に遺伝子発現プロファイルを比較して応答分子の同定につなげることが可能となった。また、ヒトの高度浸潤癌に極めて近い分子病態を持つApc+Ptenマウスでも、腫瘍細胞を回収し、高品質な核酸を抽出し、網羅的遺伝子解析を行なったところデータが回収できた。PI3K/PTENの下流で中心的な役割を担っているmTORを特異的阻害剤(Rapamycin)によって阻害することで高い抗腫瘍効果が得られるモデルを使って、Wnt経路やPI3K/Pten経路の影響下でmTOR阻害による効果を比較するため、腫瘍細胞の回収とそれを用いた遺伝子発現プロファイル検査と全ゲノム解析を行い、データが回収できた。 (2)CMS4マウスモデル(Apc+Tgfbr2変異マウス)を使った実験では、腫瘍内に粘液癌が発生するというheterogenietyが観察されたが、形態の異なる腫瘍の発生原因を究明するために,異なる形態の腫瘍を回収して高品質の核酸を抽出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は研究期間が4年間の予定となっており、最初の2年間で解析に必要なデータを収集し、残りの2年間で対象遺伝子を絞り込み、その機能などを検証する計画となっていることから、令和4年度末の時点(2年目が終了した段階)で、以下の結果が得られており、今後はバイオインフォマティックスを中心とした解析とその検証の予定で、3年目の令和5年度には、解析に必要なデータが回収できている状況である。 (1)CMS3(代謝型)マウスモデルを使った実験では、Apc+Krasマウスでは、二つのゲノム不安定性(MSIとCIN)を背景に遺伝子発現プロファイルを比較して応答分子の同定につなげることが可能な状況となっている。また、Apc+Ptenマウスでも、腫瘍細胞を回収し、高品質な核酸を抽出し、データが回収できており、今後はin silicoでの解析を進める。mTORの特異的阻害剤(Rapamycin)で高い抗腫瘍効果が得られたモデルでも、腫瘍細胞の回収とそれを用いた遺伝子発現プロファイル検査と全ゲノム解析を行い、データが回収できている。 (2)CMS4マウスモデル(粘液がんモデル、Apc+Tgfbr2変異マウス)を使った実験では、形態の異なる腫瘍の発生原因を究明するために,異なる形態の腫瘍を回収して高品質の核酸を抽出できており、令和5年度には、バイオインフォマティシャンと協力して、形態変化に関連する分子の絞り込みを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1. CMS3マウスモデル Apc+Ptenマウスは、ヒトの高度浸潤癌に極めて近い分子病態であり、PI3K/PTENの下流で中心的な役割を担っているmTORを特異的阻害剤(Rapamycin)によって阻害することで高い抗腫瘍効果が得られるモデルである。また、染色体不安定性による発癌機構が関与していると考えられるため、全ゲノム解析を含めたゲノム不安定性についての解析によって、これまで検出されてこなかったゲノムのrearrengementなどについての情報が入ってくる可能性がある。2023年度中には、2022年度に提出した全ゲノム解析の結果を詳細に解析して、大腸癌におけるPI3K/PTENシグナルの影響をマウスで解明後、ヒトの大腸癌で検証する予定である。 2. CMS4マウスモデル Apc+Tgfbr2変異マウスで腫瘍内に粘液癌が発生するというheterogenietyが観察されており、形態の異なる腫瘍の発生原因を究明するために,異なる形態の腫瘍を回収して遺伝子発現プロファイルを比較する. 本マウスにおいても、染色体不安定性による発癌機構が関与していると考えられるため、全ゲノム解析を含めたゲノム不安定性についての解析によって、これまで検出されてこなかったゲノムのrearrengementなどについての情報が入ってくる可能性がある。2023年度中には、2022年度に提出した全ゲノム解析の結果を詳細に解析して、大腸癌におけるTGFのシグナルの影響をマウスで解明後、ヒトの大腸癌で検証する予定である。
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