研究課題/領域番号 |
21H03003
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
田尾 嘉誉 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30425417)
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研究分担者 |
浅井 義之 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00415639)
永野 浩昭 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10294050)
浅岡 洋一 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10436644)
徳永 雅之 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10845043)
宮本 達雄 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40452627)
清木 誠 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50226619)
硲 彰一 山口大学, 医学部, 特別医学研究員 (50253159)
柴田 健輔 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50529972)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | がん発症・進展 / YAP活性化 / メカノホメオスターシス / YAPの活性化 / がん免疫微小環境 / PhenoCycler / 磁気ピンセット法 / CODEX法 / magnetic tweezers法 / YAPレポーターマウス / YAP / メカノホメ オスターシス / イメージング・マスサイトメトリー / がんオルガノイド |
研究開始時の研究の概要 |
悪性ヒト腫瘍を顕微鏡で観察すると、同一症例でも様々な細胞集団から構成される組織構造を示しており、その構造は、腫瘍の悪性度や患者の予後と大きく関連している。本研究では、ヒト悪性腫瘍標本上でがん進展の進行状況と硬さ(細胞外物理特性)とYAPの活性化における分子メカニズムをイメージング・マスサイトメトリー、シングルセル遺伝子解析および新規性の高い三次元的力学測定法を用いて解明する。また、腫瘍が生体内でどのように振る舞うのか患者の腫瘍からのオルガノイドを用いることにより、YAP活性化とがん発症・進展の作用機序をより明確にし、YAPをターゲットとした分子標的治療への基盤とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、大腸における前がん病変(慢性炎症)からがん発生の進行状況と組織の硬さ(細胞外物理特性)とYAP活性化の関連性を空間的シングル解析、磁気ピンセット力学測定法を用いて解明する。 すでにヒト潰瘍性大腸炎誘発モデル系のAOM/DSSマウスを確立しており、そのがん発症までの時系列での炎症大腸組織のYAP活性化細胞の顕著な増加を蛍光免疫染色法およびに空間シングルセル解析(PhenoCycler法:旧CODEX法)により確認している。継続して、空間シングルセル解析(PhenoCycler法)を用いて慢性炎症から発がんまでを時系列にYAPの発現様式を中心として予備的解析を行った。結果、炎症時期の一時期を眺めてみても、YAP活性化が多様な細胞群で不均一に起こっていることを明らかにした。一方で多数の抗体を用いて大腸炎症領域における数万単位の隣接情報を定量化、数値化、グラフ化にすでに成功している。しかしながら、YAPの活性化と免疫細胞集団およびECMとのタンパク発現の位置的相関関係を“微細環境下の細胞集団”としてカテゴリー化し、分布状況を定量的かつ客観的に明らかにするには至っていない。引き続き、PhenoCycler法により得られたビックデータの統計学的処理方法を吟味しながらアノテーションを行っている。並行して、磁気ピンセット力学測定機器の改良と解析を通じて、実際の生体内の物理特性とその領域に存在する細胞群のグループ化を結びつけて統合的に解析していく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに本研究室でマウス潰瘍性大腸炎誘発モデル系(AOM/DSS)を確立しており、その炎症大腸組織でのYAP活性化細胞の顕著な増加を蛍光免疫染色法により確認している。また、YAPの活性化と免疫細胞集団およびECMとのタンパク発現の位置的相関関係を“微細環境下の細胞集団”としてカテゴリー化し、分布状況を定量的かつ客観的に明らかにする目的で空間シングルセル解析(PhenoCycler法:旧CODEX法)を用いて解析を行った。結果、多数の抗体を用いて大腸炎症領域における数万単位の隣接情報を定量化、数値化、グラフ化にすでに成功している。また、炎症期において多くのYAP活性細胞のポピュレーションで樹状細胞、リンパ球で顕著に観察された。加えて、樹状細胞の近傍の細胞でYAP活性化細胞の存在を見出した。さらに、少数のYAP活性細胞のポピュレーションでは、T細胞、B細胞などの各免疫細胞との隣接関係も示唆された。つまり、炎症時期の一時期を眺めてみても、YAP活性化が多様な細胞群で不均一に起こっていることを明らかにした。現在、これら“免疫細胞集団の分布の不均一性”の中に一定の規則性があるかどうかを解析用ソフトMAVやCytoMap、Stardist, CellPoseなどオープン大規模解析ソフトウエアを活用することによりさらに精密な統計分析解析を試みている。 一方で、カナダ共同研究者(Dr. Sevan Hopyan, Dr. Yu Sun)から譲渡、搬送された新規型magnetic tweezers機器にて、ゼブラフィッシュ胚を用いた検討で解析可能であると判断した。その後、本研究の対象となるマウス大腸組織での磁気測定を試みたが、マウス大腸組織の粘弾性が高く、改良の余地があった。
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今後の研究の推進方策 |
新規型magnetic tweezers機器の改良点として、磁気ビーズの大きさの変更やmagnetic tweezers機器を構成する各パーツの改良を数回加えてさらに条件検討をを行っている。また、これとは並行して現在、山口大学工学部 ものづくり機械工作工房と山口大学工学部 浅田 祐法教授と共に高出力のmagnetic tweezers機器を作成中である。このmagnetic tweezers機器により粘弾性測定を行うために、磁気ビーズをマウス大腸組織へ導入することが必須であるが、これについては、GDS-80 Gene Delivery System (WEALTEC社)によりすでに成功している。現在、磁気ピンセット力学測定法後、本研究室で確立された空間的シングル解析(Phenocycler法)を同じマウス潰瘍性大腸炎の組織上で行えるかどうか精力的に検討中である。加えて、他の研究グループがAOM/DSS系を用いて解析されたオープンリソースであるシングルセルRNA解析データと統合して比較することにより、YAP活性化と炎症からがん発症の作用機序をより明確にしていく予定である。
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