研究課題
基盤研究(B)
膵癌では術前化学放射線療法が推奨されているが,ほかの癌にくらべて効果は低い.その理由に,治療に対する感受性の低さがあげられる.したがい,耐性メカニズムの解明は予後改善のブレイクスルーになる.一方,我々は,抗癌剤や放射線耐性を有する膵癌細胞株の樹立に成功し,網羅的な遺伝子解析の結果IL-1RIに着目した.我々は既に,IL-1RIを介するシグナルが膵癌の浸潤や転移に関与することを世界に先駆けて報告した.IL-1RIの拮抗薬IL-1raは他疾患で認可されており,膵癌臨床への応用が可能と考える.本研究では,抗癌剤及び放射線耐性のメカニズムの解明と,IL-1RIの機能解析および新規治療薬の開発を目指す.
膵癌の予後は極めて悪く根治手術を行ってもすぐに再発する.現在では術前の化学放射線療法が推奨されているが,ほかの癌にくらべて効果は低い.その理由の1つに,治療に対する感受性の低さがあげられる.したがって,耐性メカニズムを解明し,術前治療の感受性を高めることは,真の根治手術を導き,予後改善のブレイクスルーになる.一方我々は,抗癌剤や放射線への耐性を有する膵癌細胞株の樹立に成功し,網羅的な遺伝子解析の結果,膵癌の細胞膜レセプターであるIL-1RIに着目した.我々はすでに,IL-1RIを介するシグナルが,膵癌の浸潤や転移に関与することを世界に先駆けて報告している.本研究では,抗癌剤および放射線耐性のメカニズムの解明と,IL-1RIの機能解析および新規治療薬の開発を目指す. 2022年度の研究実績は以下のとおりである.①ゲムシタビン感受性株(Gem-S)と耐性株(Gem-R),放射線感受性株(R-S)と耐性株(RR)の樹立:Gem-Rとして2株樹立(MIA PaCa-2および AsPC-1), RRとして2株樹立(MIA PaCa-2およびSW 1990)に成功している.Gem-RはさらにCapan-2があらたに樹立目前である.②ゲムシタビン感受性株(Gem-S)と耐性株(Gem-R)の浸潤能を比較:親株に比較してAsPC-1 Gem-およびMIA PaCa-2 Gem-Rは浸潤能が高く,IL-1Ra処理によってこれは抑制された.③ゲムシタビン耐性化に伴なうIL-1RtypeⅠの発現の変化:RT-qPCRを用いてIL-1RⅠのmRNAレベルの発現を比較検討した.その結果,AsPC-1およびMIA PaCa-2の両株でIL-1RⅠの発現が亢進していることが確認できた.さらに同様の現象をwestern blotでも確認した.
3: やや遅れている
vitroの研究は進んでいるが,動物実験まで進んでいない.
①転移には腫瘍血管新生が重要であることを報告してきた.独自の血管新生モデルを用い,Gem-RおよびR-Rの血管新生能が亢進していることを確認する.研究室では,膵癌のIL-1/IL-1RIシグナルが腫瘍血管新生を亢進することを,先駆けて報告している.②ゲルシフトアッセイを用いて,Gem-RおよびR-Rにおける転写因子NF-κBの活性を評価する.研究室では,転移能に転写因子NF-κBの活性が相関していることを報告してきた.さらにNF-κBは,VEGFやIL-8といった血管新生因子の産生を制御し,治療標的となることを見出した.耐性化に伴うNF-κBの活性亢進を評価し,耐性化に伴うIL-1/IL-1RIシグナル亢進,NF-κB活性亢進,微小転移亢進のメカニズムを解明する.③ヌードマウス同所移植モデル:ルシフェラーゼを遺伝子導入した膵癌細胞(Gem-SまたはGem-R)をヌードマウスに同所性に移植し,Gem, IL-1ra, Gem+IL-1raを腹腔内投与する.IVIS Imaging Systemを用いて経時的に腫瘍サイズを測定する.最後に組織を採取し,Ki-67およびCD31染色にて腫瘍の増殖能および血管新生能を評価し,IL-1raの抗腫瘍効果を検討する.同様にR-SまたはR-Rをヌードマウスに同所性に移植し,放射線治療(CAX-210)におけるIL-1raの相乗効果を検討する.以上により,化学放射線治療に対するIL-1raの効果を確認する予定である.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件)
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