研究課題/領域番号 |
21H03020
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55040:呼吸器外科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
芳川 豊史 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00452334)
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研究分担者 |
北坂 孝幸 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (00362294)
中尾 恵 京都大学, 医学研究科, 教授 (10362526)
中村 彰太 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20612849)
門松 由佳 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (80878364)
後藤 真輝 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (50844916)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | シミュレーション / 脱気変形 / バードビュー / 呼吸器外科 / 胸腔鏡手術 / 手術シミュレーション / 肺癌 / ロボット支援下手術 |
研究開始時の研究の概要 |
肺は、術前CT画像は含気状態であるが、手術は脱気状態で行われるため、術前と術中の形態が大きく異なる。 画像技術の進歩により、微小な肺結節の検出が増え、その切除には、術前マーキングが必須である。また、区域切除において、現在行われている区域間面の同定法も確実とはいえず、現在の内視鏡カメラでは視野に限界がある。 本研究では, 侵襲的な処置をすることなく、真に低侵襲に微小肺結節を切除するために、微小結節の位置や区域間面の同定が正確に可能となるシステムを情報学的手法により構築する。また、バードビューカメラシステムを用い、肺表面の位置情報を術中にリアルタイムで、わかりやすく、正確にガイドすることを目指す。
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研究実績の概要 |
肺は、術前CT画像は含気状態であるが、手術は脱気状態で行われるため、術前と術中の形態が大きく異なる。画像技術の進歩により、微小な肺結節の検出が増え、その切除には、低侵襲な胸腔鏡手術や区域切除が行われる。これらの微小結節の切除には、術前マーキングが必須だが、患者への侵襲、人的・時間的なコストがかかる上、正確にできないことも多い。また、区域切除において、現在行われている区域間面の同定法も確実とはいえない。さらに、現在の内視鏡カメラでは視野に限界があり、片側肺を一度に見ることはできない。本研究では, 侵襲的な処置をすることなく、安全かつ真に低侵襲に微小肺結節を切除するために、微小結節の位置や区域間面の同定が正確に可能となるシステムを情報学的手法により構築する。さらに、バードビューカメラシステムを用い、肺表面の位置情報を術中にリアルタイムで、わかりやすく、正確にガイドすることを目指す。 2022年までの実績の概要として、術前・術中CT画像と手術(胸腔鏡)画像を継続して複数取得し、これらの画像をデータサイエンスとして利用できるように編集し、統計的モデルの開発の際に指標になる解剖学的構造物が容易に認識可能な状態で保存、情報学研究グループがアクセス可能なデータベースを構築した。続いて、このデータベースを基に、情報学的処理を行い、患者個別に肺微小結節や区域間面の位置をより正確に投影するモデルの創出を狙い、脱気肺における肺微小結節や区域間面の予測モデルを構築した。さらに、脱気肺における肺内構造物の位置を推定するモデルに胸腔鏡画像における実際の脱気の状態を学習させることで、表面位置情報ガイドの創出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
術前・術中CT画像と手術(胸腔鏡)画像のデータベース化を継続して行った。種々のマーキングシステムを利用して、できる限り多くのヒト臨床データを取得し、マーキングした術前・術中画像と内視鏡画像を用いて、脱気変形アルゴリズムの検証を行った。これらの画像をデータサイエンスとして利用できるよう、外科医が編集し、統計的モデルの開発の際に指標になる解剖学的構造物が容易に認識可能な状態で保存、情報学研究グループがアクセス可能なデータベースを作成した。 次に、脱気肺における肺微小結節や区域間面の予測モデルを構築した。前述のCone beam CTデータを含む、VAL-MAP法、Super Dimension法などの術前画像データや胸腔鏡画像を収集して解析を進め、患者個別に肺微小結節や区域間面の位置をより正確に投影するモデルを開発した。具体的には、脱気変形の変形のタイプと手術時の体位の影響、位置移動が大きい解剖学的位置の把握などへの対応に苦慮した。 さらに、バードビューカメラシステムの研究を追加した。複数個のカメラを組み合わせることで、通常の内視鏡カメラによる限定された視野でなく、手術側の片側胸郭全体を描出できるようになると、片肺全体を一つの視野に入れることが可能となり、末梢肺野の正確な位置情報が分かりやすく認識できるため、より安全で正確な手術が可能となる。 最後に、表面位置情報ガイドの創出を行った。脱気肺における肺表面の予測モデルの開発の後に、手術ガイド画像を創出する技術開発を行った。このためには、脱気の状態がそれぞれ異なる個別の患者において、手術中の胸腔鏡画像から「脱気の状態」を認識し、その状態にあわせて結節や区域間面を投影する技術が必要である。上記のデータベースを利用し、脱気肺における肺内構造物の位置を推定するモデルに胸腔鏡画像における実際の脱気の状態を学習させることで可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では, 侵襲的な処置をすることなく、安全かつ真に低侵襲に微小肺結節を切除するために、微小結節の位置や区域間面の同定が正確に可能となるシステムを情報学的手法により構築する。さらに、バードビューカメラシステムを用い、肺表面の位置情報を術中にリアルタイムで、わかりやすく、正確にガイドすることを目指す。 2022年までに、術前・術中CT画像と手術(胸腔鏡)画像をデータサイエンスとして利用できるように編集しデータベースを構築した。続いて、このデータベースを基に、情報学的処理を行い、脱気肺における肺微小結節や区域間面の予測モデルを構築した。さらに、脱気肺における肺内構造物の位置を推定するモデルに胸腔鏡画像における実際の脱気の状態を学習させることで、表面位置情報ガイドの創出を行った。 2023年度以降は、開発した表面位置情報ガイドを実臨床で使用するために、レトロスペクティブな妥当性の検証を行う。さらに、前向きに実臨床での使用を考慮した臨床研究を行う予定である。すでに、生命倫理審査委員会での承認を受けているので、種々の機器など実際の体制が整い次第すぐに開始できる状況である。 さらに、可能であれば、胸腔鏡画像の認識と画像の描出を部分的にでも自動化し、胸腔鏡画像内の動きに合わせて肺内構造物の変位をリアルタイムに推定する技術を開発したい。また、バードビューカメラシステムを用い、全肺野の中での位置同定を行うなど、よりわかりやすい手術ガイド機能の創出を目指すことも続けて検討を行っていく方針である。
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