研究課題/領域番号 |
21H03120
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柴 秀樹 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (60260668)
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研究分担者 |
武田 克浩 広島大学, 病院(歯), 講師 (10452591)
松尾 美樹 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (20527048)
應原 一久 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (80550425)
丸山 博文 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (90304443)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | Cnm陽性う蝕原因細菌 / 脳出血 / PRIP / 健康寿命の延伸 |
研究開始時の研究の概要 |
脳内出血(脳出血)の増悪にう蝕が強く関与する証拠を収集し、う蝕予防を含めた歯科治療が生活・生命の質の向上と健康寿命の延伸に寄与できることを示すために、う蝕原因細菌であるStreptococcus mutans のコラーゲン結合タンパク質Cnmが脳出血の病態増悪に関わるメカニズムを明らかにする。また、疫学的に脳出血のリスク因子としてのCnmの重要性を示す。
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研究実績の概要 |
本年度も昨年度に続き、in vivo研究では、すでに確立しているCnm陽性Sm歯髄感染 ラット脳出血モデルを、in vitroの研究では歯髄細胞と血管内皮細胞を用いて実験を行った。1.Cnm陽性Sm(WT株)とCnmノックアウトSm(KO株)を感染させたラットモデルマウスを用いた実験:WT株群の大脳における出血班数と拡張血管数は、KO株群と比較して増加していた。HE染色画像において、WT群では出血像が観察できた。さらに、Smの蛍光免疫染色によって、Smは血管内皮の裏打ちが崩壊した部位に沿って存在していた。WT群の血清中のIL-1β(脳出血に伴いその量が増加するサイトカイン)値は、KO群より高かった。2.細胞外基質に対するSmの付着実験:Ⅳ型コラーゲンに加えて、Ⅰ型コラーゲンとラミニンに対する付着については、WT株と比較し、KO株の各基質への付着率が減少していた。3.血管内皮細胞と歯髄細胞に対する付着実験:WT株と比較し、KO株の各細胞への付着率が減少していた。4.siRNAによってⅣ型コラーゲン発現をノックダウンした血管内皮細胞へのWT株の付着実験:Ⅳ型コラーゲン発現細胞と比較し、付着率が減少していた。5:臨床分離株を用いたⅣ型コラーゲンと血管内皮細胞への付着実験:Cnm陰性株と比べて、陽性株の付着率は高かった。6.疫学研究:本大学病院脳神経内科受診中の脳出血の既往のある患者と配偶者、合計57名からプラークを採取した。Sm検出は41名、41名の内、Cnm検出は13名であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究にはCnm抗体が不可欠なため、第一に、Cnmのリコンビナントタンパク質(His-Tagタンパク質)を作製した。引き続き、作製したこのタンパク質をマウスに免疫し、抗Cnm血清を獲得した。しかしながら、この血清を使用して、Cnm陽性のSmの染色を試みたところ、染色することができなかった。抗体がCnm陽性のSmを認識できなかった理由としては、リコンビナントタンパクが直鎖で作製されていることから、抗原認識部位が菌体表層に出現していないことが考えられた。そこで、抗原認識部位として可能性の高い配列部位の合成ペプチドを作製し、現在、免疫し、抗体を作製中である。また血管内皮細胞のPRIP発現に対するCnm陽性Smの作用を検討するため、両者を共培養し、PRIP1およびPRIP2のmRNA発現を調べた。その結果、PRIP2に関しては、Cnm陰性Smよる発現と比較して、Cnm陽性Smの刺激による発現が抑制される傾向が示された。 疫学研究については、令和4年度も新型コロナ感染症の拡大のため、感染対策上、配偶者を除く3親等以内の親族である患者家族からのプラークを採取することはできなかったが、57名からサンプルを採取し、41名からSm検出し、41名の内13名から、Cnm検出を検出した。新型コロナ感染症の拡大のため、Smの垂直伝播を調べることはできなくなったが、代わりの研究をすでに開始している(下記、今後の研究の推進方策に記載)。このように、これまでの研究成果を含め、研究は概ね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro実験では、宿主細胞の異物(細菌)排除機構であるオートファジーを担うPRIPのCnm陽性Smによる脳出血への関与に関する研究を継続して実施する。具体的には、血管内皮細胞や歯髄細胞内へ侵入したCnm陽性SmとPRIPの関係について組織学的に調べ、PRIPの役割を明らかにすることにしている。抗体作製については、His-Tagタンパク質では立体構造が菌体表層と異なっている可能性があり、20-30残基のペプチドを合成し、ペプチドに対する抗体を作製し、脳組織に移行したCnmの局在を調べる予定である。加えて、作製したペプチド抗体を用いて、PCRによるCnmの同定だけではなく、Cnm発現量を調べるとともに、細胞への付着、動物実験での神経症状への影響を検討する。 疫学研究については、引き続き、脳出血を起こした患者のCnm陽性Smの検出および検出Smの性状を調べる。脳出血患者(本大学病院脳神経内科患者)の口腔内プラークからSmを分離し、PCR法でcnm遺伝子を検出する。新型コロナ感染の影響で、3親等間の垂直伝播の研究遂行はできなくなったので、代わりに、分離Sm(Cnm陽性Smと陰性Smの両方)のgenomic sequenceを行い、Cnm遺伝子に加えて、他の各種遺伝子の有無から、Smの性状(例えば、各種バクテリオシン遺伝子など)を明らかにし、性状と脳出血に関わる医学的所見との関係を検討する。
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