研究課題/領域番号 |
21H03178
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山道 信毅 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30463897)
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研究分担者 |
牛島 俊和 星薬科大学, 薬学部, 学長 (90232818)
冨田 秀太 岡山大学, 大学病院, 准教授 (10372111)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2021年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 自己免疫性胃炎 / Helicobacter pylori / 胃癌 / 発癌リスク層別化 / エピゲノム解析 / ピロリ菌感染胃炎 / マイクロアレイ / エクソーム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
自己免疫性胃炎(AIG)・ピロリ菌感染胃炎(HP胃炎)の分子機序を解析し、腫瘍化進展における両胃炎の違いを解明すること、大規模コホートに研究成果を外挿し、胃癌リスクの層別化マーカーを同定することが目標である。具体的には、① AIG・HP胃炎の疫学調査、② 網羅的遺伝子発現解析・エクソーム解析・メチル化アレイ解析とWEBデータベースへの公表、③ 特異的な発現変化・変異~欠失・メチル化状態を呈する両胃炎関連遺伝子の同定、④ 同定遺伝子の発現解析と機能解析に基づく発癌分子機構の解明、⑤ 胃癌発症と同定AIG・HP胃炎関連遺伝子の発現の関連の解析、を達成し、AIG・HP胃炎の臨床戦略を確立する。
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研究実績の概要 |
自己免疫性胃炎が稀少疾患であることに加えて、新型コロナウイルスの感染拡大があり、症例集積が遅れていたが、2023年12月までに自己免疫性胃炎(AIG) 34例、ピロリ菌感染胃炎(HPG) 20例、正常胃(Normal) 15例の検体集積が得られた。AIG 12症例、HPG 10症例、Normal 8症例の胃粘膜抽出DNAを用いてゲノムワイドメチル化アレイを施行したところ、AIG・HPGではいずれも高度なメチル化亢進を認めた。細胞周期、細胞接着、p53経路、WNT経路のがん抑制遺伝子のプロモーター領域のCpGアイランドはAIG・HPGのいずれも高度にメチル化されており、発癌との関連が示唆された。一方、両胃炎のメチル化プロファイルは明らかに異なっており、粘膜内に混入している白血球成分を評価したところ、AIGではマクロファージ・B細胞がHPGと比較して有意に少なく、浸潤炎症細胞の違いが両胃炎のメチル化に影響を与えることを示唆された。 次にAIG 14症例、HPG 13例、Normal 9症例に対し、網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、健常胃と比べてAIG・HPGでは腸分化に関連する遺伝子の発現が亢進しており、その傾向はAIG でより顕著であった。また、AIGではHPGとは異なり、PNLIP、CEL、CTRB1、CTRCなどの膵特異的遺伝子の発現亢進を認め、AIGで膵腺房化生が生じることを遺伝子発現レベルで示唆する結果が得られた。また、AIGでは肺のマスター遺伝子であるNKX2-1/TTF1、その制御下にあるSFTPB・SFTPCの発現上昇を認め、腸・肺・膵と多様な分化異常を認めることが明らかとなった。AIGで認める著明な胃内pH上昇が、多様な分化異常をきたすメカニズムの1つとして示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大による影響に伴い、研究協力医療機関における解析対象患者の受診頻度が2020~2021年に大きく減じた結果、検体の集積が遅れ、予定していた網羅的遺伝子発現解析・エクソーム解析・エピゲノム解析、これらの結果に基づく分子生物学的実験の予定も遅れが生じた。しかし、2022年以降は各医療機関における受診者数も概ね回復し、この結果、検体の集積も順調に回復している。最も早く解析が完了し、英文原著論文として公表したメチル化アレイの結果にひき続き、網羅的遺伝子発現解析(マイクロアレイ)の解析も完了して、英文原著論文として公表した。現在は、最終目標である発癌リスクとの関連の解析を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染拡大による影響による検体集積の遅れがあったが、2022年以降はほぼ回復し、メチル化アレイ・網羅的遺伝子発現解析(マイクロアレイ)が順調に進み、概ねの遅れは取り戻している。現在、① 腫瘍合併症を含めた臨床検体における発現解析、② 遺伝子発現解析から発見された多様な異常分化のメカニズムの解析を行っており、これらの結果が出たら、原著論文の作成・投稿へと進む予定である。また、今までの結果にエクソーム解析・オミックス解析を予定しており、多角的な視点からの自己免疫性胃炎・ピロリ菌感染胃炎の研究を推進する。
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