研究課題/領域番号 |
21H03181
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
太田 茂 和歌山県立医科大学, 薬学部, 教授 (60160503)
|
研究分担者 |
佐能 正剛 和歌山県立医科大学, 薬学部, 准教授 (00552267)
古武 弥一郎 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (20335649)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
|
キーワード | 化学物質過敏症 / 揮発性有機化合物 / 匂い物質 / 嗅上皮 / 薬物代謝酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
化学物質過敏症の中には、匂い物質となる揮発性有機化合物の室内曝露により、脳神経系への健康影響を呈することが知られている。その発症には個人差があり、そのメカニズムは十分に分かっていない。その決定要因を明らかとするため、化学物質による嗅上皮における嗅覚受容体の活性化における薬物代謝酵素の寄与を調べる。これは、化学物質の使用基準の設定、化学物質過敏症の診断マーカーや治療薬の開発に貢献できる。
|
研究実績の概要 |
化学物質過敏症の原因となりうる匂い物質や揮発性有機化合物の感受性の決定要因を明らかにするため、in vitro、in vivo評価系を用いて、嗅上皮や鼻粘液における薬物代謝と嗅覚機能との関連性を明らかにしていくことを目的とする。嗅上皮や鼻粘液における薬物代謝酵素の誘導剤または阻害剤が、匂い物質の代謝を変化させることにより嗅覚受容体の活性化を制御することができる化学物質過敏症治療薬となることが期待される。 当該年度は、アルデヒド基を有する揮発性有機化合物を検証化合物として用い、次のような研究成果が得られた。 質量分析装置を用いたプロテオミクス解析の結果、マウスの嗅上皮には、様々な薬物代謝酵素が肝臓と同程度発現していることが明らかとなった。また、鼻腔洗浄液にも薬物代謝酵素が存在していることが分かった。この中には、アルデヒドからカルボン酸への酸化に関わるアルデヒド酸化酵素、アルデヒド脱水素酵素も含まれていた。芳香族アルデヒド化合物、脂肪族アルデヒド化合物を鼻腔洗浄液と一緒にインキュベーションさせたところ、カルボン酸体の代謝物が生成された。また、阻害剤や補酵素を用いた実験から、アルデヒド酸化酵素、アルデヒド脱水素酵素の関与が示唆された。鼻腔洗浄液に存在する薬物代謝酵素は、嗅上皮から分泌された可能性があり、その分泌メカニズムも考慮しながら、今後、マウスの行動評価やヒト組織を用いた代謝評価を行っていきたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
揮発性有機化合物を検証化合物として用い、嗅上皮だけでなく鼻腔洗浄液における薬物代謝の関与をin vitro評価にて確認することができた。これら成果は、学会にて発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
薬物代謝酵素の発現や活性には一般に個人差があることを鑑みると、嗅上皮における薬物代謝能は、化学物質過敏症の感受性を決定づける因子となっている可能性がある。今後、以下の研究を中心に進め、in vitroだけでなく、in vivoさらにはヒトにおいて薬物代謝の関与を明らかにしていきたい。 1.マウスの行動評価 上記の匂い物質の代謝評価を踏まえて、代謝の寄与が大きい匂い物質を選定し、この匂い物質に対するマウスの嗅覚閾値、嗜好性、識別力などを行動試験により評価する。その際に、menadioneなどのAOX阻害剤を併用することで鼻腔内の薬物代謝活性を変化させたマウスと比較し、嗅覚機能における薬物代謝の寄与を精査する。 2.ヒト組織を用いた代謝評価 ヒトから採取した嗅上皮や鼻粘液を用いてアルデヒドを有する揮発性有機化合物の代謝評価を行う。その上で化学物質過敏症の感受性との関連性を精査する。
|