研究課題/領域番号 |
21H03183
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
高橋 忠伸 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (20405145)
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研究分担者 |
池田 潔 広島国際大学, 薬学部, 教授 (40168125)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | シアリダーゼ / ノイラミニダーゼ / インフルエンザウイルス / 蛍光イメージング / 増殖 / 酵素 / 流行 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトのA型インフルエンザウイルスは数十年に一度、新型(新抗原性)インフルエンザによる世界大流行のパンデミックを起こす。過去にパンデミックを起こしたウイルスのNAに見られる酵素性状の酸性安定性に基づいて、細胞レベルでどのようにウイルス増殖を促進させているのか?、細胞の現象を解明する。さらに、2009年パンデミック以降、パンデミック由来ウイルスのNAの酸性安定性の変化やウイルス増殖性の変化と共に、過去のパンデミックでもこの細胞の現象が相関しているのか?を解析して、NAの酸性安定性や細胞の現象がパンデミック発生を促進する一つの要因であることを検証する。
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研究実績の概要 |
ヒトのA型インフルエンザウイルスは数十年に一度、新型(新抗原性)インフルエンザによる世界大流行(パンデミック)を起こす。インフルエンザウイルスの表面酵素ノイラミニダーゼ(NA)の酵素性状の一つである酸性安定性は、季節性ウイルスではほぼ見られず、過去のパンデミックを起こしたすべてのウイルスに見られる特有の酵素性状である。この酵素性状は培養細胞レベルでウイルス増殖を促進させることから、当時のパンデミック発生に貢献する一要因の可能性が考えられた。本研究では、NAの酸性安定性に基づく細胞レベルのウイルス増殖促進機構を解析し、パンデミック発生に貢献する宿主細胞側の要因を解明する。この細胞レベルの機構を自然界のパンデミックウイルスで確認し、NAの酸性安定性やこの酵素性状を介した機構がパンデミックの一要因である可能性を検証する。NAの酵素性状やこの性状を介した機構は、パンデミックを予測する指標に利用できるものと期待される。 ウイルス細胞侵入過程のNAのみにおける細胞への影響を解析するため、前年度に引き続きNAのタンパク質発現・精製系の確立をめざした。バキュロウイルス-タンパク質発現システムを利用して、1968年にパンデミックを起こしたホンコンインフルエンザウイルス株のN2型NA四量体の分泌型タンパク質の大量発現系を確立した。これにエンドサイトーシスシグナルを付加したところ、精製後の収量が大きく減少した。NA発現時にヘパリンを添加したが、収量の改善は見られなかった。その他、細胞内のNAのシアリダーゼ活性をイメージングするための蛍光剤の開発や方法の検討を行った。既報の蛍光剤を利用して、固定化した感染細胞内のゴルジ装置に局在したNAのシアリダーゼ活性を蛍光イメージングする手法を確立した。さらに、既報の蛍光剤の性能を向上させた新規蛍光剤の候補が探索できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バキュロウイルス-タンパク質発現システムを利用して、シアリダーゼ活性を有しているNA四量体の分泌型タンパク質を大量に生産できるようになったが、エンドサイトーシスシグナルを付加したところ、収量が大きく減少した。収量を増加するための条件を検討中であるが、現在のところ改善していない。しかしながら、NAのシアリダーゼ活性を解析する蛍光剤の開発や手法の確立では大きな進展があった。本年度の「やや遅れている」は、「おおむね順調に進展している」に近い判定である。
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今後の研究の推進方策 |
インフルエンザウイルスはエンドサイトーシス過程を介して細胞内へ取り込まれる。バキュロウイルス-タンパク質発現システムで生産したNAはそのままでは細胞内へ取り込まれないと予想されるため、エンドサイトーシスシグナル配列を付加した。収量が大きく減少してしまったことから、このシグナルの付加位置を検討して、収量の改善をめざす。最終的には、四量体化シグナル配列とエンドサイトーシスシグナル配列の両方を付加したNAを生産し、酸性安定性の異なるNAを細胞に取り込ませて、細胞における影響の差を解析することで、NAのみを介した機構を解明する。 前年度までに酸性安定性の異なるNA遺伝子を持つインフルエンザウイルスを作製したので、そのウイルス間で細胞への影響の差を解析する。 ウイルス細胞侵入過程の細胞内NAのシアリダーゼ活性の局在を解析する手法の確立をめざす。これを達成するためには、性能を向上させた新規蛍光剤も必要と考えられる。性能を向上させた蛍光剤構造も視野に入れて、新規蛍光剤の開発をめざす。酸性安定性は細胞内のエンドサイトーシス過程のシアリダーゼ活性に影響していると予想される。蛍光剤を死使用して、酸性安定性の異なるNAを持つウイルスあるいはバキュロウイルス-タンパク質発現システムで生産したNAの細胞内でのシアリダーゼ活性の局在や持続時間を比較する。細胞内のシアリダーゼ活性の位置や時間と細胞内の分子機構との関連を明らかにすることをめざす。
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