研究課題/領域番号 |
21H03218
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58050:基礎看護学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
神代 充 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (30314967)
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研究分担者 |
今井 宏美 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (00369406)
滝 聖子 千葉工業大学, 社会システム科学部, 教授 (50433181)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 身体的インタラクション / 介助動作 / 教育システム / 人間-ロボットシステム / 動作解析 |
研究開始時の研究の概要 |
人同士の介助では,声をかけるなど互いの身体的リズムを同調させ,息の合った介助を行っている.そこで,本研究課題では熟練した介助者の介助動作を身体的インタラクション特性に基づく身体的リズムの同調に着目した解析を行い,その解析結果に基づいて身体的リズムを同調させるような介助動作モデルを提案する.さらに,この介助動作モデルを適用したロボットシステムや熟練した介助者と同じような間合いとなる介助動作を練習するための教育システムを開発する.
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研究実績の概要 |
2021年度は, まず, 起居を支援する介助を対象に, 熟練介助者と未習熟介助者の支援動作について解析を行った. 解析では, モーションキャプチャ, 磁気式3次元位置計測装置, およびマイクなどを用いて, 介助者の上肢動作, 動作開始や発話のタイミングなどについての計測を行った. また, 被介助者については両肩の移動軌跡について計測を行った. この解析により, 熟練介助者と未習熟介助者とでは, 起居支援での上肢動作が異なっていることが示された. そこで, 熟練介助者による起居の支援動作に基づいて被介助者の両肩の軌跡を再現できる起居支援動作モデルの提案を行った. この動作モデルは移動距離に合わせて両肩の位置や姿勢を変化させるものであり, 動作時間や途中での停止時間などを自由に調整することが可能である. 次に, 接近を伴う手渡し動作についての解析を行った. 解析では, 手渡し側が受け取り側に接近し, 手渡す動作を対象として, 手渡し側の手部動作, 動作の開始や発話のタイミング, および視線方向などの計測を行った. この解析結果から多くの人は接近している間は相手の顔部や胸部を注視し, 手渡しのための手部動作の開始前に注視位置を相手の手部に移すことが示された. そこで, この視線の変更をモデル化し, 視線提示が可能な双腕のロボットに適用することで, 手渡しロボットシステムの構築を行った. そして, このロボットシステムを用いて, ロボットが人間に接近し, ものを手渡す場合での人に好まれるロボットの視線提示について官能評価実験を行った. その結果, ロボットから人への手渡し動作では, ロボットは人に接近中は胸部を注視し, 手部動作を開始する0.6秒前に胸部から手部へ視線を移す視線提示が多くの人に好まれることが示された. また, この視線提示は人同士の手渡し動作での視線と一致するものであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は被介助者の起居を支援する動作と被介助者にものを手渡す動作の2つの動作についてモデル化を進めてきた. 起居支援では人同士の起居を支援する介助での動作解析を行った. 解析結果から熟練介助者と未習熟介助者では, 起居を支援する介助動作が異なっていることが示された. そこで, 健常な人が片肘をついて起居を行う際の両肩の軌跡について, 計測を行った. その結果, 熟練介助者が起居の支援を行った場合と健常な人が片肘をついて起居を行った場合は両肩の軌跡が類似していた. このことから, 熟練介助者は被介助者が一人で起居動作を行うような動作により支援を行っていることが示された. これにより, 被介助者は自らが行う様な動作により起居が行えることから, 安心感のある心地良い支援動作となっていることが示唆された. そこで, 熟練介助者による起居の支援動作に基づいて提案した起居支援動作モデルは熟練介助者と類似した支援動作が生成できることから, 人に好まれる起居支援が行えると期待できる. 手渡し動作では人に接近し, ものを手渡す動作を対象に視線提示に注目してモデル化を行った. 人同士の手渡し動作の解析から, 多くの人は接近している間は相手の顔部や胸部を注視し, 手渡しのための手部動作の開始前に注視位置を相手の手部に移すことが示された. そこで, この視線提示をモデル化し, 適用した手渡しロボットシステムを構築した. そして, このロボットシステムを用いた官能評価実験から, 接近している間は人の胸部を注視し, 手渡しのための手部動作の開始前に人の手部に注視位置を移す視線提示が好まれることが示された. これらのことから, 人に好まれる起居支援や手渡しが生成できる動作モデルの提案が完了しており, 本研究課題は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は, まず, 人の起居支援動作を生成する起居支援ロボットシステムのプロトタイプを開発する. このロボットシステムには, 2021年度に提案した起居支援動作モデルを適用することで, 熟練介助者と類似した動作により, 被介助者の起居を支援することを可能にする. この起居支援動作モデルはロボットアームの移動距離に合わせて被介助者の両肩の位置や姿勢を変化させるものであり, 動作開始のタイミング, 動作時間, および途中での停止時間などを自由に変更することが可能である. そのため, このロボットシステムでは, 発声や手部動作の開始タイミング, 動作時間, および動作と動作との間合いなど, 身体的リズムの同調に重要となる動作特性を調整することができる. そこで, このロボットシステムを用いた合成的解析により, 起居支援において被介助者と身体的リズムが同調する支援動作を生成するための動作特性について検討する. さらに, この合成的解析と動作モデルの改良を繰り返すことで, 提案する動作モデルにより生成される介助動作が熟練介助者のように被介助者と息の合った温かさや安心感などを与えられようなものにする. これにより, あたかも人に介助を行って貰っているような支援をロボットシステムに実現することを目指す. 手渡し動作については, 視線提示を含む動作モデルの提案を行ってきた. そのため, この動作モデルを適用して視線提示が行える人型の手渡しロボットシステムを構築する. さらに, この手渡しロボットシステムを用いた評価実験から, おしぼりや薬などをロボットから接近し, 被介助者に手渡す動作について解析する. そして, 人に好まれる手渡し動作を生成するための発声や手部動作の開始タイミング, および被介助者への接近方向などのロボットの動作特性について検討する.
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