研究課題/領域番号 |
21H03291
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091)
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研究分担者 |
高橋 あゆみ 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (60980985)
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)
片岡 英樹 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (50749489)
本田 祐一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (40736344)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 運動器不活動症候群 / 骨格筋障害 / ミトコンドリア恒常性 / 筋核アポトーシス / 骨格筋電気刺激 / 疼痛 / 拘縮 / 筋萎縮 / 骨萎縮 / 筋収縮運動 / 発生メカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
身体の不活動は,疼痛や拘縮,筋萎縮,骨萎縮といった運動器不活動症候群(ILSs)を惹起する.そして,骨格筋由来のILSsの発生メカニズムには,筋核のアポトーシスを発端とした炎症型マクロファージの集積が関与することが判明しているが,この事象の上流のメカニズムは不明である.そこで,本研究では仮説しているミトコンドリア恒常性の変化とアポトーシス関連分子の動態を解析する.加えて,この仮説に基づくと骨格筋の代謝促進効果が期待できる筋収縮運動が有効な介入戦略になると考えられ,ベルト電極式骨格筋電気刺激によるILSsの予防効果を生物学的機序も含めて検証し,臨床応用を想定した至適運動条件の策定なども試みる.
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研究実績の概要 |
昨年度,骨格筋由来の運動器不活動症候群(以下,ILSs)の発生メカニズムにミトコンドリアの機能不全ならびにそのことに基づく骨格筋代謝機能障害が関与することを明らかにした.そこで,本年度はミトコンドリアの機能維持に関わっているAMP活性化キナーゼ(AMPK)ならびに転写コアクチベーターであるPGC-1αの動態を検索した.不活動モデルはラット後肢を1,2週間ギプスで固定することで作製し,実験終了後はヒラメ筋を採取し,生化学・分子生物学的検索に供した. 結果,1週間の不活動でAMPKならびにPGC-1αの発現低下を認め,これらの動態が昨年度明らかにしたミトコンドリア恒常性の崩壊に関与していることが明らかとなった. 加えて,PGC-1αの発現は筋収縮運動のみで制御されることから,ベルト電極式骨格筋電気刺激法(B-SES)を活用した筋収縮運動はILSsの予防に効果的である可能性があり,その介入戦略の開発に向けた予備的検討を行った.具体的には,B-SESの刺激条件として刺激周波数は後肢骨格筋に強縮を誘発させる目的で50Hzとし,刺激強度はラット足関節の最大底屈筋力の60%が発揮される4.7mAとした.そして,刺激サイクルは2秒収縮,2秒休止の1:1サイクルとし,刺激時間は15分間とし,2週間の不活動の過程で6回/週の頻度で介入を行った.結果,仮説した通りB-SES介入によって腓腹筋におけるPGC-1αの発現低下が抑制された.そして,同筋由来の筋萎縮や筋性拘縮,筋痛に進行抑制効果を認め,大腿骨の力学的脆弱性が維持され,海綿骨の微細構造変化も抑制されていた. このように,ILSsの予防にB-SES介入が有用であることが確かめられ,今後はそのメカニズムを解明するとともに,至適運動条件策定のための実験を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の成果として,骨格筋由来のILSsの発生メカニズムに関与しているミトコンドリ恒常性の崩壊にはAMPKならびにPGC-1αの発現低下が発端となっていることを突き止め,当初仮説していたメカニズムの一端を解明した.しかし,「caspase-8の活性化によるアポトーシス促進タンパク(Bid)の開裂と活性型Bid(tBid)のミトコンドリアへの移動」といったメカニズムは明らかにできなかった.また,骨標本解析に関しても実験プロトコルの確立に時間を要し,骨芽細胞や破骨細胞の動態に関わるデータ収集が完遂できなかった.つまり,これらの点に関しては次年度以降に優先して取り組む課題といえる. その一方で,PGC-1αの発現は筋収縮運動のみで制御されることから,B-SESを活用した筋収縮運動は有効な介入戦略になるのではないかと仮説し,介入実験に関する予備的検討を進めた.その結果,B-SES 介入の有用性が確かめられ,この点は次年度以降に予定している至適運動条件策定のための基礎データとして活用でき,その意味では十分な成果といえる. このように,実験の進め方を一部変更したものの,全体を通しては本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度明らかにできなかった「caspase-8の活性化によるBidの開裂とtBidのミトコンドリアへの移動」といったメカニズムならびに「骨芽細胞や破骨細胞の動態」に関わるデータ収集を優先的に進める. あわせて, ILSsに対するB-SES介入の有用性が確かめられたことから,そのメカニズムを明らかにするとともに,至適運動条件策定に向けた様々な条件設定のプロトコル作成を進め,一部の実験も開始する予定である.
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