研究課題/領域番号 |
21H03311
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
|
研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
長谷 公隆 関西医科大学, 医学部, 教授 (80198704)
|
研究分担者 |
森 公彦 関西医科大学, リハビリテーション学部, 助教 (10890890)
脇田 正徳 関西医科大学, リハビリテーション学部, 助教 (70890888)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
|
キーワード | 片麻痺歩行 / 歩行分析 / 人工知能 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、片麻痺歩行の活動指標である歩行速度・持久力・バランス能力の回復に寄与する歩行関連指標を、定量的歩行分析データの中から抽出する人工知能システムを開発し、病態に応じた運動学的治療指針を提示する学術的基盤を形成することである。健常歩行の基本空間に対する多変量のずれをマハラノビスの距離として尺度化し、高次元多変量の分布から重要度の高い指標をサンプリングするマルコフ連鎖モンテカルロ法によって、歩行による移動能力を高めるために改善するべき運動学的目標を選定し、運動療法の治療指針を導く人工知能システムとしての有用性を検証する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、片麻痺歩行再建に寄与する歩行関連指標を定量的歩行分析データから抽出する人工知能システムを開発し、病態に応じた運動学的治療指針を提示する学術的基盤を形成することである。 高齢者歩行の特徴ベクトルを規定する基本空間を形成する目的で、地域生活に必要な歩行耐久性指標として6分間歩行距離(以下、6MWD)を含む3次元歩行分析を100名の健常高齢者について実施した。次に、片麻痺歩行での6MWDに寄与する特徴量を抽出する目的で、計測を完了した片麻痺患者29名のデータについて、健常者のマハラノビス空間における距離が6MWDに相関する歩行関連指標の組み合わせ(1-10指標)を、マルコフ連鎖モンテカルロ法によって抽出(各500サンプル)した。6MWDと単独で最も高い相関を示した歩行関連指標は、非麻痺肢・荷重応答期の歩行制動力(r = 0.743)であり、麻痺肢からの歩行推進力が大きく、麻痺肢を振り出すための代償がないことが6MWDに寄与すると考えられた。2-10指標の組み合わせで抽出された計4,500サンプルの中から、相関係数0.8以上のマハラノビス距離を構成する特徴量の出現率で重要度サンプリングを実施した。抽出された292サンプル(平均相関係数:0.818)において出現率が20%以上であった項目は、麻痺肢・立脚後期の膝関節角度の左右差(33.2%)、股関節屈曲角度の左右差(24.0%)、非麻痺肢・荷重応答期のleading limb angle(LLA)(22.3%)及び麻痺肢・立脚後期のtrailing limb angle(TLA)(20.2%)の4項目であった。麻痺肢・立脚後期の膝関節・股関節角度は立脚後期に麻痺肢で身体を支持する能力、非麻痺肢LLAは麻痺肢振り出し時の代償に影響され、また、麻痺肢TLA形成は下肢Fugl-Meyerスコアで説明できないことを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍における感染対策を講じながら、高齢者歩行のマハラノビス空間形成に必要な健常高齢者100名の歩行速度、Community Balance and Mobility Scaleおよび6分間歩行距離を含む3次元歩行分析を完了した。3次元歩行分析データのマーカー付けに要する仕事量は膨大であることから、本学リハビリテーション学部から複数名の研究協力者を募り、データ処理過程の円滑化を図ったが、マーカー付けを終了した例数は現時点で60%程度である。 片麻痺患者の歩行速度については、特徴ベクトルを用いたクラスタリングによって、治療アルゴリズムを形成しており、また、Community Balance and Mobility Scale・6分間歩行距離のデータ集積および中間解析を実施した。これらについての特徴ベクトルは抽出できており、治療目標としての特徴量の有用性を確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度として、計測を終了している健常高齢者の歩行分析処理を上半期までに完了し、目標としている片麻痺患者100名のデータ集積ならびにマルコフ連鎖モンテカルロ法による重要度サンプリングを通じて、片麻痺歩行速度の予測モデルを構築する。さらに、片麻痺患者のCommunity Balance and Mobility Scale・6分間歩行距離のデータ集積を通じて、令和5年度中に特徴ベクトルを用いたクラスタリングを行い、治療アルゴリズム形成を目指す。下肢装具療法やロボット歩行支援などの治療法との関連性を検出することによって、実臨床における本システムの有効性について検証を行う。 研究成果を第1回日本リハビリテーション医療D X研究会学術集会、第48回日本運動療法学会学術集会、第60回日本リハビリテーション医学会学術集会、第7回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会、第53回日本臨床神経生理学会学術大会等で発表する。
|