研究課題/領域番号 |
21H03328
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
赤澤 智宏 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (80291160)
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研究分担者 |
久松 大介 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任研究員 (20880272)
馬渕 洋 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任准教授 (50424172)
奈良岡 佑南 順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (50828522)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 組織幹細胞 / デザイナーズオルガノイド / セクレトーム / 炎症性疾患 / オルガノイド / 三次元培養 / 多能性幹細胞 / 筋オルガノイド / サルコペニア / 中胚葉オルガノイド / バイオリアクター / Meatbud / 臓器連関 / フレイル |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者が筋疾患に罹患する確率は極めて高く、骨格筋の再生・機能の維持は非常に重要な課題である。近年我々は、筋サテライト細胞の人工ニッチとなる細胞外マトリックス培養法、および組織幹細胞の選択的分離やオルガノイドの創出に関する研究を行ってきた。本研究では、これらの技術を統合し、より生体内に近い多細胞からなる中胚葉オルガノイドを作製し、筋組織の再生と機能補完を同時に実現する幹細胞移植プラットフォームの創出を目指す。本研究は、細胞移植効率や組織再生効果を飛躍的に向上させるだけでなく、骨格筋保護作用により高齢者の筋力低下・アスリートの怪我の予防など、介護やスポーツ医学分野の発展につながる研究である。
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研究実績の概要 |
高齢者が筋疾患に罹患する確立は極めて高く、骨格筋の再生・機能の維持は非常に重要な課題である。近年我々は、筋サテライト細胞の人工ニッチとなる細胞外マトリックス培養法、および組織幹細胞の選択的分離やオルガノイド作製に関する基礎研究を行ってきた。本研究では、これらの技術を統合し、より生体内に近い多細胞からなるオルガノイドを作製し、筋組織の再生と機能補完を同時に実現する幹細胞移植プラットフォームの創出を実現し、高齢者の筋力低下やアスリートの筋障害の改善により、介護やスポーツ医学分野のさらなる発展を目指す。しかしながら、サルコペニアをはじめとした筋疾患に対する治療において、筋サテライト細胞の移植が試みられているが、培養により骨格筋幹細胞は筋芽細胞へと分化し移植効率が著しく低下することが知られる。一方で、骨格筋は様々なサイトカインを放出する内分泌器官としても注目されているが、いまだに機能が不明な分泌因子が多い。そこで本研究では、筋疾患を含む炎症を基盤とした疾患の改善を目的とし、移植に適した細胞の選定や培養法の確立、分泌因子の正確な遺伝子発現プロファイルの解明を行う。 細胞移植療法の分野では、移植に供する細胞の形態や投与経路などにより、治療効果が異なることが知られている。そこで当該年度は、サルコペニアと同様に炎症を基盤とする潰瘍性大腸炎に対する適切な細胞移植療法の確立を行った。具体的には、トランスクリプトーム解析により移植に使用する幹細胞が二次元培養と三次元培養後では異なる遺伝子発現プロファイルを示し、三次元培養で作製した細胞凝集塊(スフェロイド)ではECMリモデリング関連遺伝子の発現が上昇していることを見出した。さらに、デキストラン硫酸ナトリウムによる大腸炎モデルマウスにおいて、スフェロイドの経腸投与は二次元細胞よりも細胞の生着率が向上し、大腸炎を抑制する効果があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症性疾患に対する細胞移植療法では、移植時期、移植細胞形態、投与経路が重要である。当該年度は、移植に用いる幹細胞が二次元培養と三次元培養では異なる遺伝子発現プロファイルを示し、三次元培養の方がより炎症部位への生着率が高いことを見出し、論文発表を行った。さらに、移植に用いる細胞は正確な遺伝子あるいはタンパク質の発現情報の開示が重要であるが、筋組織由来の骨格筋幹細胞が増殖能や脂肪分化能の異なるHeterogeneityな細胞集団であることが明らかになりつつあることから、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、多細胞から構成される中胚葉オルガノイドの作製、中胚葉オルガノイドを用いた筋疾患をはじめとした炎症性疾患に対する移植効果の検証、生着したオルガノイドの内分泌器官としての効果の検証の3つの研究開発項目に分け目標達成を目指している。当該年度では、炎症性疾患に対する最適な移植細胞形態を明らかにし、さらに移植に供するオルガノイドを構成する細胞がHeterogeneityな細胞集団であることを明らかにしつつある。そこで、次年度は構築したオルガノイドの移植効果の検討を行うため、マウスを用いた中胚葉オルガノイド移植法の開発を行う。具体的には、前脛骨筋にコブラ毒の注入あるいは凍傷による筋損傷を誘導し、損傷部位へ作製したオルガノイドの移植を試みる。間葉系幹細胞では二次元培養よりも三次元培養後の細胞の方が損傷部位への生着率が高かったことから、間葉系幹細胞を含む中胚葉オルガノイドにおいて炎症部位への正着率の向上が見込まれる。そこで、次年度では骨格筋幹細胞のみからなるスフェロイドおよび間葉系幹細胞を含む中胚葉オルガノイドの移植を行い、生着率や移植細胞の成熟度等の違いを組織学的解析により明らかにする。また、生着した細胞を含む筋組織の一細胞トランスクリプトーム解析により、移植細胞の生体内における動態を詳細に解析する。 一方で、移植に供する中胚葉オルガノイドの作製では、骨格筋幹細胞や間葉系幹細胞が大量に必要であるが、細胞数を確保するための長期間の培養では細胞老化により、移植細胞の特性が変化する可能性が指摘される。実際、間葉系幹細胞では長期間培養することで、細胞老化が誘導され、刺激に対する応答性が変化することを明らかにしつつある。そこで次年度では、経時的なトランスクリプトーム解析を実施し、老化に伴う遺伝子発現変動を明らかにする。
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