研究課題/領域番号 |
21H03334
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
|
研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
岩脇 隆夫 金沢医科大学, 総合医学研究所, 教授 (50342754)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
|
キーワード | 疲労 / ストレス / 炎症 / 睡眠 / 運動 / 細胞ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
疲労のナゾに迫る研究を行う。疲労は発熱や痛みと共に生体3大アラームと言われ、私たちの生命や健康を維持する上でカラダが発する重要なシグナルであるが、その研究と理解は発熱や痛みに比べて遅れており、科学が進んだ現代でも疲労の実態は掴めていない。本研究では初めに疲労研究のためのマウス実験系を構築する。次に生体イメージングとオミックス解析から細胞ストレスや炎症が疲労の発生/回復に関与する可能性を検証し、最終的には疲労のメカニズムを分子/細胞レベルで解明する。疲労に苦しむ人々は非常に多く、これは現代社会において決して無視できない大きな問題であり、その解決の新たな糸口となることを目指して本研究に取り組む。
|
研究実績の概要 |
古くから今日に至るまで疲労研究は心療内科学、栄養学、感染学、免疫学、脳神経科学など様々な視点から行われてきた。その甲斐あって疲労を科学的に評価する方法は確立されつつあり、血中の酸化ストレス度や唾液中のヘルペスウイルス数などは疲労の指標となっている。また以前には信じられていた学説も訂正されつつある。例えば、無酸素運動時に筋肉組織中で生じる乳酸は疲労を生じさせると考えられていたが、現在では否定されている。その一方で未だに疲労の実態を理解することはできておらず、誰しもが感じる疲労の発生/回復メカニズムはあまり分かっていない。その大きな理由として疲労研究における分子および細胞生物学的な取り組みが弱いからだと考えている。前述の背景および問題を踏まえ、本研究では疲労が生じる際や疲労が回復する際のカラダの仕組みを分子生物学および細胞生物学のレベルで解明することに目標を定めている。特に細胞ストレス応答や炎症反応で機能する分子や細胞の働きと疲労との関連性に着眼して研究を進めている。細胞ストレス応答や炎症反応は生体内で生じる異常からカラダを守るために生き物が有する防御反応であり、疲労と密接な関係にあっても不思議ではない。また重要なのは、この研究から明らかになることが単に基礎的な生命科学へ貢献するだけでなく、疲労が生む社会問題(健康障害から事故・自殺に至るまで)に対する解決への新たな糸口になる可能性を十分に含んでいることである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では対象生物としてマウスを採用している。そのマウスを用いた疲労研究のための実験系を初年度に構築できた。そこで本年度は独自に開発した4種類(ERAI、UMAI、OKD48、およびIDOL)の遺伝子組換えマウスの利用から疲労による細胞ストレス応答や炎症反応への影響を解析する実験へ進んだ。これらのマウスは異なるストレスや炎症刺激に応答して発光する性質を持ち、その発光を検出できる装置を利用すれば、マウスを生かしたままで特定の分子が「いつ」「どこで」活性化するのか調べられる。使用するマウスは8~12週齢の雌雄8匹ずつとした。また疲労負荷期間は1週間とし、馴化期間も1週間とした。したがって1回の実験には2週間を要することになった。睡眠障害ケージについては1回の実験で4台を稼働させる予定なので、全ての実験を完了させるのに単純計算で64週以上もの時間を必要とすることになり、現在までに60%に相当する計画が完了した。またデータの取得と同時にイメージング解析を通じて「細胞ストレスや炎症」と「疲労」の関連性について検証も進めた。なお解析の結果の一部はテレビ(NHK BSプレミアム「ヒューマニエンス」2022年10月4日10:00~11:00)でも放映された。
|
今後の研究の推進方策 |
残っている40%分の睡眠障害ケージを用いた実験を有益なデータが得られると信じて地道に計画を進める。そして引き続きイメージング解析を通じて「細胞ストレスや炎症」と「疲労」の関連性について検証も進める。加えて生体イメージングや遺伝子改変マウスの解析では捉えきれない分子の動きに迫るためマルチオミックス解析も計画している。疲労負荷実験の最終日には血液採取および臓器摘出を予定しており、それらのサンプルからトランスクリプトーム、プロテオーム、およびメタボローム解析を行い、疲労に伴う生体反応の全体的な分子動態について理解を深める。
|