研究課題/領域番号 |
21H03359
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
増田 真志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (50754488)
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研究分担者 |
安倍 知紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (00736605)
谷村 綾子 島根県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (10610199)
金子 一郎 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (40389515)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 小胞体ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
ミネラルであるリンと寿命を含めた老化との関連が注目されている。血清リン濃度を制御する腸管でその中心を担うNpt2b発現は加齢に伴い増加するが、その機序は不明である。近年、転写因子C/EBPbがNpt2b遺伝子発現を制御することや、C/EBPbのアイソフォームの比が、寿命や加齢性疾患発症に重要である可能性が示された。また、小胞体内の異常タンパク質の蓄積により生じる小胞体ストレスは、細胞内リン代謝や加齢性疾患発症に関わっている。本研究では、老化を起因とする腸管リン吸収の制御機構を解明するため、小胞体ストレスとC/EBPbアイソフォームに標的を絞り、老化モデル動物や小腸オルガノイドを用いて解析する。
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研究実績の概要 |
リンは、生命活動を支える必須の元素であるが、多くの動物種の血清リン濃度と平均寿命が逆相関することから、リンと寿命を含めた老化との関連が注目されている。血清リン濃度は腸管で制御され、その中心を担うリン酸輸送担体Npt2b発現は加齢に伴い増加するが、その機序は不明である。近年、転写因子C/EBPbがNpt2b遺伝子発現を正に制御することや、C/EBPb mRNAから産生されるアイソフォームの比が、寿命や加齢性疾患発症に重要である可能性が示された。また、細胞内外の環境変化に起因する小胞体内の異常タンパク質の蓄積により生じる小胞体ストレスは、細胞内リン代謝や加齢性疾患発症に関わっている。本研究では、小胞体ストレスとC/EBPbアイソフォームに標的を絞り、若齢および高齢マウスを用いて老化を起因とする腸管リン吸収の制御機構の解明を目指す。 2021年度は、若齢および高齢マウスに低リン食またはコントロール食を15週間与えた結果、腸管における小胞体ストレス応答の中でも細胞保護に働くシャペロンタンパク質BiPの発現量や細胞死誘導に働くCHOPの発現量に対する低リン食の影響は、若齢と高齢では異なることが分かった。C/EBPbのアイソフォーム比(LAP/LIP比)は、若齢マウスの低リン食群で最もLAP/LIP比が高いことを確認した。 2022年度は、前年度のマウスと同じ条件の腎臓サンプルを用いて、以下の結果を得た。腎臓のリン酸輸送担体Npt2a/2c mRNA発現量は高齢よりも若齢マウスにおいて低リン食で大きく上昇した。腎臓のBiP発現量に関しては、若齢および高齢共に低リン食による変化はなかった。一方、CHOP発現量は、若齢マウスでは変化がなかったが、高齢マウスでは低リン食で減少した。さらに、C/EBPbのアイソフォーム比は、若齢マウスよりも高齢マウスで低リン食により上昇率が高くなることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は若齢マウスと高齢マウスの腸管に対する低リン食の影響を検討し、2022度は生体内リン恒常性維持にとって腸管と同様に重要な腎臓に対する低リン食の影響を検討した。その結果、小胞体ストレス応答の中でも細胞保護に働くタンパク質と、逆に細胞死に働くタンパク質の発現量に対する若齢マウスと高齢マウスにおける低リン食の影響は異なることが分かった。そして、2021年度の腸管における結果と合わせて考えると、生体内リン代謝維持に重要な腸管と腎臓では加齢と低リン食による小胞体ストレス応答への影響は異なることを明らかにしたので、実験は概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を基に、 1) 老化によるC/EBPbを介したNpt2b発現増大機構を検討するために、増田(研究代表者)が若齢マウス(9週齢)と高齢マウス(76週齢)に低リン食(0.11%)またはコントロール食を15週間与え、腸管を採取する。また、C/EBPb遺伝子floxマウスとvillin-Creマウスを掛け合わせた腸管特異的な過剰発現C/EBPb transgenic (TG) マウスを作製し、腸管リン代謝調節機構(リン酸取込み活性、Npt2b発現量)、腸管の小胞体ストレス応答遺伝子、C/EBPbアイソフォーム(LAP1/2、LIP)のタンパク質発現量を評価する。 2) 老化によるC/EBPbを介したNpt2b発現増大機構の中核を担うC/EBPbアイソフォームを同定するために、金子(研究分担者)が上記の高齢と若齢マウスの腸管を用いて、Npt2b遺伝子プロモーター領域に結合する転写因子をLAP1/2とLIPを中心にChIP-Seq法で解析する。 3) 老化によるC/EBPbアイソフォームの発現量の違いを生む機序を解明するために、安倍(研究分担者)が上記の腸管を用いて、加齢によるE3ユビキチンリガーゼMdm2タンパク質の発現量、そして、Mdm2発現を調節する癌抑制遺伝子p53タンパク質発現量も解析する。加齢によりユビキチン化されたLAP/LIP発現量をユビキチン抗体およびMdm2抗体で免疫沈降させた後、western blotting法で検討する。 4) 老化時の腸管リン吸収を抑制する栄養素を探索するために、谷村(研究分担者)が上記の実験結果から予測される老化した腸管のリン吸収を再現する上で必要な因子を、iPS細胞にlentivirusを用いて恒常的に過剰発現またはCRISPR/Cas9で欠損させたヒト小腸オルガノイドを作製する。
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