研究課題/領域番号 |
21H03371
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松坂 賢 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70400679)
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研究分担者 |
大野 博 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20847909)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 脂肪酸伸長酵素 / ミトコンドリア / 肝臓 / 脂肪組織 |
研究開始時の研究の概要 |
生活習慣病の発症原因としてミトコンドリア機能障害が注目されている。申請者らは、脂肪酸伸長酵素Elovl6の研究から、肝臓におけるElovl6の欠損が脂肪肝にともなうミトコンドリア障害を改善すること、エネルギー燃焼型脂肪細胞であるベージュ細胞におけるミトコンドリア活性化にElovl6が必須であることを見出した。本研究では、脂肪肝およびベージュ脂肪細胞のミトコンドリアの形態・機能・品質管理におけるElovl6の意義を明らかにし、肥満、非アルコール性脂肪性肝疾患、2型糖尿病をはじめとした生活習慣病やミトコンドリア機能障害を基盤とした様々な疾患の病態基盤の解明や新規予防法・治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
生活習慣病の発症原因としてミトコンドリア機能障害が注目されている。本研究では、脂肪肝およびベージュ脂肪細胞のミトコンドリアの形態・機能・品質管理における脂肪酸伸長酵素Elovl6の意義を明らかにし、肥満、非アルコール性脂肪性肝疾患、2型糖尿病をはじめとした生活習慣病やミトコンドリア機能障害を基盤とした様々な疾患の病態基盤の解明や新規予防法・治療法の開発を目指している。これまでに、肥満・脂肪肝モデルob/obマウスと肝細胞特異的Elovl6欠損マウスの交配動物を作製し、肝細胞におけるElovl6の欠損が脂肪肝におけるミトコンドリアの形態的・機能的異常を改善すること、それがミトコンドリア固有のリン脂質であるカルジオリピンの脂肪酸組成変化と相関することを明らかにした。また、ミトコンドリアが豊富な褐色脂肪組織において、寒冷刺激やβ3アドレナリン受容体刺激によりElovl6の発現が増加すること、このときElovl6欠損マウスではミトコンドリア活性化が減弱することを明らかにした。さらに、その代償機構として、Elovl6欠損マウスではベージュ脂肪細胞が豊富な皮下脂肪組織の重量が増加するとともに、UCP1非依存的な熱産性能が亢進することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肥満モデル動物であるob/obマウスと肝臓特異的Elovl6欠損マウス(LKO)のダブルミュータント(ob/ob-LKOマウス)の交配動物を作製し、脂肪肝におけるElovl6の意義を肝臓のリピドミクスにより解析した。正常マウスに比べてob/obマウスでは脂肪肝によりカルジオリピン(CL)が減少するのに対し、ob/ob-LKOマウスの肝臓では多くのCL分子種が顕著に増加することを見出した。電子顕微鏡解析から、ob/obマウスの肝臓ではミトコンドリアの巨大化やクリステの密度の低下が認められたのに対し、ob/ob-LKOマウスの肝臓のミトコンドリアの大きさは正常であり、クリステがよく発達していた。また、細胞外フラックスアナライザーを用いて初代肝細胞のミトコンドリア好機呼吸能を解析し、ob/obマウスの肝細胞では酸素消費量が減少するのに対して、ob/ob-LKOマウスの肝細胞の酸素消費量は正常マウスの肝細胞と同等に保たれることを明らかにした。CLはミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成に重要であることから、BN-PAGEにより肝ミトコンドリアの複合体形成を解析したところ、ob/obマウスとob/ob-LKOマウスで異なる超複合体形成パターンが認められた。 脂肪組織では、β3アドレナリン受容体刺激により褐色脂肪組織および皮下脂肪組織でElovl6の発現が増加すること、またElovl6欠損マウスではこのミトコンドリア活性化が減弱することを遺伝子発現、タンパク発現、電子顕微鏡解析により明らかにした。さらに、その代償機構として、Elovl6欠損マウスではベージュ脂肪細胞が豊富な皮下脂肪組織の重量が増加し、クレアチン生合成を介したUCP1非依存的な熱産性能が亢進することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪肝ではCLの脂肪酸リモデリングを活性化し、それがさらにミトコンドリア機能障害を増悪することが報告されている。そこで、肝細胞株においてCLリモデリング酵素の過剰発現およびElovl6のノックダウンまたはノックアウトを行い、CLリモデリングにともなう肝細胞のミトコンドリアの機能や構造の変化とそれに対するElovl6欠損の効果を解析する。また、ob/obマウスとob/ob-LKOマウスでは異なるミトコンドリア呼吸鎖超複合体形成パターンが認められたことから、この意義を呼吸能、活性酸素種産生、ミトコンドリア膜脂質過酸化等の点から解析する。脂肪組織では、β3アドレナリン受容体刺激を行った野生型マウスおよびElovl6欠損マウスの褐色脂肪組織および皮下脂肪組織のミトコンドリアの脂質分析を行い、各脂肪組織のミトコンドリア脂質におけるElovl6の意義とその分子機序を明らかにする。
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