研究課題/領域番号 |
21H03412
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60040:計算機システム関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
鶴岡 徹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 主席研究員 (20271992)
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研究分担者 |
寺部 一弥 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 特命研究員 (60370300)
土屋 敬志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 主幹研究員 (70756387)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2021年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 固体イオニクス / 人工シナプス / 人工ニューロン / 知能情報処理システム / 原子層堆積法 / 知能情報システム / 人工ニューロン回路 / 側方抑制 / エッジ検出 / 固体電解質 / 固体電解質薄膜 / 人工シナプス・ニューロン回路 |
研究開始時の研究の概要 |
脳の機能を模倣する人工的なシナプスやニューロン回路のアイデアが提案されてからおよそ40年になる。これは脳神経の非線形な電気的振る舞いを半導体集積回路で真似て、脳の情報処理機能の解明と効率化を目指すものであった。しかし、1個のシナプスの動作を模倣するためには10個以上のトランジスタが必要となり、小型化・低消費電力化の足枷となる。本研究は、固体中のイオン伝導と電気化学反応を利用して、人工シナプス・ニューロン回路の構築とそれらを用いた知能情報処理機能の実現を目指す。固体イオニクス素子の特徴を活かした小型で低消費電力の脳型回路の可能性を探る。
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研究実績の概要 |
リチウム(Li)イオン伝導体のリチウムリン酸窒化物(LiPON)上にLiイオンと電子の混合伝導体であるコバルト酸リチウム(LCO)チャネルを1次元配列させた、神経細胞(ニューロン)の側方抑制を模倣する素子を構築した。チャネルに電圧パルスを印加しときの起こるLiPON中のLiイオン移動とLCOチャネルへのインターカレーション/デインターカレーションにより入力電圧パターンの境界(エッジ)付近で出力のチャネル電流対比が増大し、錯視のマッハバンド効果を再現する。この特性を利用して画像信号を入力すると、明暗のエッジ検出が材料特性だけで可能となることを見い出した。 LiPON/LCO素子ではチャネル電流変化の時定数が10秒以上あり、視覚素子応用には応答速度が遅い。異なるアプローチとして、プロトン伝導体のキトサン上に酸化インジウム亜鉛チャネルを1次元配列したニューロン素子を作製した。高いプロトン伝導性により、チャネル電流変化の時定数は100ミリ秒以下に低減できた。これは一般的なカメラのフレームレートより速い。この結果は素子性能を材料特性によって劇的に向上できることを示唆しており、当初予想していなかった新しい成果である。 微細加工プロセスに必要な平坦な薄膜形成の手段として、Li固体電解質の原子層堆積(ALD)成膜を目指している。リン酸リチウムへの窒素ドープ(窒化)に必要なアンモニア(NH3)プラズマの条件出しを行った。その結果、5%以上の窒化が可能なNH3ガスの投入量範囲を特定し、イオン伝導度が室温で1×10-6 S/cm程度まで向上することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Liイオンを用いたマルチチャネル素子を作製し、ニューロンの側方抑制を模倣することに成功した。実験で得られた隣り合うチェネル間の挙動をシミュレーションに取り込んだ結果、画像のエッジ検出が材料特性だけでできることを実証できた。他にも、Liイオンでゲーティングするシナプストランジスタの動作も確認しており、ゲート電極にパルス電圧を印加したときのチャネルコンダクタンス変化の線形性と保持特性がチャネル材料に元素ドープすることにより向上できることをわかってきた。また、動作温度や集積化に制限があるLiイオンに代わって、プロトン伝導を利用する可能性を見出したことは当初予期していなかった成果である。一方、Li固体電解質のALD薄膜も目処が立ったが、論文を投稿するためにはもう少しデータを取得する必要がある。以上を踏まえると、概ね当初の計画通り進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
論文で実証した画像エッジ検出はシミュレーションだったが、最終目標は実デバイスでの実証である。そのために側方抑制ニューロン素子を微細化し2次元アレイ化するための微細加工プロセスの可能性を検証する。側方抑制ニューロン素子を人工視覚システムに応用するためには、光入力を電圧に変換する受光回路が必要である。本研究ではこれを光や電圧によるインターカレーションでチャネル抵抗がアナログ的に変化してシナプス動作するトランジスタで実現することを目標としている。そのためのプラットフォーム技術を構築する。 現在のLi固体電解質のALD成膜は250-300℃の基板温度で行っており、微細加工プロセスに適用するには温度が高い。Liプリカーサとして、熱分解温度が低いリチウムビス(トリメチルシリル)アミドを用いることにより成膜温度を180℃以下に下げることを目指す。Li固体電解質の低温ALDは世界でも未だ報告がない。
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