研究課題/領域番号 |
21H03474
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
黒田 嘉宏 筑波大学, システム情報系, 教授 (30402837)
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研究分担者 |
長谷川 晶一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (10323833)
金子 暁子 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40396940)
田辺 健 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (60847557)
井野 秀一 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70250511)
羽田 康司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80317700)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
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キーワード | 温度感覚 / 牽引力錯覚 / 非対称刺激 / 伝熱工学 / ゼロハプティクス / ハプティクス / 非接触冷覚提示 / 運動誘導 |
研究開始時の研究の概要 |
安全かつ継続的に感覚提示や身体・情動の誘導を行う新たなハプティクス技術の基盤を構築することが本研究の究極的目的である。感覚提示技術の発達により、ユーザの行動を制限することなく高い現実感や動作誘導を一時的に与えることが可能となった。しかし、感覚の閾値は皮膚温度など身体の状態によって変化するため、従来の身体変化を伴う方法では安定した感覚を与えることが難しく、安全かつ継続的に身体や情動を誘導することが難しい。本研究では、身体的変化を時間的にゼロに保ちつつ感覚・知覚・生理的応答を変容させるゼロハプティクス技術基盤を確立し、それを応用した感覚検査システム等の構築を目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、前年度に開発した本課題における基盤技術である非対称温冷機能および非対称振動機能の高度化および医療・福祉分野への応用に向けた基本機能の開発を行った。 非対称温冷機能については、冷気流による皮膚温度変化モデルを高度化し、流量に加えて、対象物体までの距離による違いを表現可能とした。実験の結果、0.16℃の誤差で皮膚温度を推定できることが確認され、提案手法の有効性が示された。また、熱工学的な観点でボルテックスチューブについて、冷風と温風にエネルギーが分離する際の要所となる部分に注目しエネルギーバランスについて検討した。実験では流入圧縮空気、冷風、温風の圧力、温度、流量を計測し、流入出するエンタルピー、運動エネルギー、内部損失を計算した。さらに諸量からボルテックスチューブの熱的特性を考察した。その結果、冷風割合に応じて冷風、温風のエンタルピー、運動エネルギー、および内部損失のバランスが変化することがわかった。 非対称振動機能については、応用システムとして視覚障害者に対して適切な白杖の操作方法を誘導する訓練支援システムのプロトタイプを開発した。プロトタイプでは、振動刺激由来のゼロハプティクス技術である牽引力錯覚を利用して白杖の振り幅を教示していたが、アクチュエータが有線駆動であり、さらに錯覚を誘発するための制約によって、一般的な白杖の握り方とは異なる把持方法を採用していた。本年度は、バッテリーで駆動する振動アクチュエータのモジュールを開発し、さらに振動刺激を生成する機構を改良することで、一般的な白杖の握り方に対応させ、有用性を向上させた。また、医学的見地から末梢神経感度の定量化に向け、安定した刺激提示のために非接触温刺激のフィードバック制御システムを構築し、椅子型温冷刺激装置の改良を医師と進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年目の2022年度において、本課題における基盤技術の一つである非対称温冷機能について、その高度化した内容について、当該分野で最も権威のある雑誌論文IEEE Transactions on Hapticsに論文が掲載された。また、新たに開発技術の特許を申請するとともに、さらに、前年度に本課題で申請した特許についても国際出願を行ったことから、基盤技術を高度化できたといえる。また、熱工学の観点からもボルテックスチューブのエネルギーバランスに関する調査が行えたことから、基礎研究としての成果もあがっている。 もう一つの基盤技術である非対称振動機能についても、プロトタイプの改良が進み、実際の視覚障害者が握る方法での運動教示が可能となっており、実用面でも大きな成果があがっている。研究成果は雑誌論文IEEE Accessに採択された。このように基盤技術の高度化に加えて、応用における有用性も向上しており、想定以上に当該課題を進めることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、これまで開発・高度化してきた非対称の温冷刺激機能および振動刺激機能において、ゼロハプティクス技術を俯瞰して概念を昇華させる。そして、温冷・振動刺激によるクロスモダリティの相互作用を検証する。また多感覚融合提示システムへの組込みを効率化するためにモジュール化を行い、結果として、ゼロハプティクス技術基盤を確立・展開する。また、熱工学的な観点では、ボルテックスチューブの冷風割合を変化させた際に、温風出口においてのみ、その幾何学的形状が変化することが判明したため、今後温風出口付近の流れを詳しく調べることで、高効率の非接触熱源の実現に向けた基礎的研究も併せて進める。さらに、応用システムとして視覚障害者に対する使いやすい訓練支援システムの開発と糖尿病などによる末梢神経障害の検査を目的とした効率的な検査システムの開発を進める。
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