研究課題/領域番号 |
21H03507
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤原 直哉 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00637449)
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研究分担者 |
青木 高明 滋賀大学, データサイエンス学系, 准教授 (30553284)
藤嶋 翔太 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50706835)
秋山 祐樹 東京都市大学, 建築都市デザイン学部, 准教授 (60600054)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 人流 / ネットワーク分析 / コミュニティ抽出 / コミュニティ検出 |
研究開始時の研究の概要 |
人々の地理空間での流動(人流)は社会経済活動の根幹をなす。近年、大量かつ高精度な人流データが取得可能となっており、実データに基づき人流の理解を深めることは重要な課題である。人流はネットワークとしての側面を強く持ち、ネットワーク科学の手法を用いて人流の性質が解析されてきた。しかし、既存手法は人流の特徴を十分に捉えていないので、本研究では、人流の特殊性を考慮したネットワーク解析の基盤を整備して大規模人流データに適用する。本研究は人流と関連する諸分野への学問的波及効果の他に、社会基盤整備事業の効果や災害時の避難行動など、将来的に政策立案・評価などの実務にも役立つことが期待される。
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研究実績の概要 |
2022年度は、(1)人流ネットワークの新たな集計方法の確立とその定量化、(2)ホッジ=小平分解によるポテンシャルを用いた人流ネットワーク分析、(3)人流の数理モデル、を中心に研究を実施した。 (1)に関して、関東都市圏におけるGPSデータを用いて、自宅位置、ある時刻および次の時刻での滞留位置ごとの人口集計を実施した。集計はCOVID-19感染拡大前後の時期に対して行った。構築したネットワークのうち、自宅位置を集計した場合の情報損失をエントロピーを用いて定量化した。居住地ごとに集計したOrigin-Destination (OD) 行列のエントロピーを計算すると、自宅位置を考慮しない場合と比較してエントロピーの値は低い傾向にあることを明らかにした。また、人流データのサイズに応じて最適な集計単位を統計学的に設定する手法を提案し、パーソントリップ調査に基づいたデータに対して適用した。 (2)に関して、ホッジ=小平分解を用いて各地域のポテンシャルを決定し、その値を用いて、都市における流動において湧き出しと吸い込みとしての役割を果たす地域を決定した。本件に関する論文をarXivで公開し、国際誌に投稿中である。また、2021年度に実施した研究に関する論文がScientific Reports誌に掲載されたほか、日本経済新聞にも紹介記事が掲載された。 (3)に関して、人流の数理モデルとしてよく知られている放射モデルを拡張し、求職者と雇用者の性質を表現する変数の分布が異なる場合のモデルを提案し、国際会議で発表を行った。 以上の実施内容を通じ、人流に特化したネットワーク解析基盤の整備と大規模人流データへの適用、および、データに基づいた人流数理モデルの提案という、本研究課題の目的の達成に向けて進展を見た。代表者は石田實記念財団研究奨励賞を本研究の内容などを理由として受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に遅れていた人流ネットワーク構築が完成し、2022年度にデータ解析を開始した。遅延が生じていた時期に集計手法についての検討を行っていたため、データ解析を迅速に開始でき、その結果としてOD行列の集計法を情報論的な観点から議論することができた。ホッジ=小平分解の研究は当初の計画を超えた進展を見せており、論文を出版したほか、中心地検出に関する研究も論文を投稿することができた。これらの結果も、本研究の方法論の妥当性を示唆している。人流の数理モデルに関しては既存モデルの拡張を提案し、国際会議において発表することができた。 以上のように、おおむね順調に研究が進展しており、新たな知見が得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2023年度は、引き続き人流ネットワークの特徴を考慮した分析手法、人流の数理モデルなどの研究を実施するとともに、研究結果を公表し、研究の取りまとめを行う。ネットワーク分析の多くはパーソントリップ調査結果に対して行っていたが、GPSデータを元にした集計データの取得が2022年度に完了したため、これまで開発した手法をGPSデータに対して適用する。 人流ネットワークの定量分析に関しては、自宅位置を考慮したOrigin-Destination (OD) 行列を考慮し、エントロピーなどの特徴量の挙動について、自宅位置を考慮しない場合との比較を引き続き行う。また、滞留人口が時刻によって変化することを考慮に入れて、地域の時空間的なコミュニティ構造を明らかにする手法についても適用・開発を行う。さらに、ホッジ=小平分解に基づく手法をGPSデータに対して適用し、リアルタイムデータに基づく都市構造の分析を深化させる。 上記のネットワーク分析手法をCOVID-19前後のデータに対して適用し、都市圏内の人流の変化を特徴づける。ポテンシャル場の変化を通じて、流動量の減少のみならず、ネットワーク構造の変化を定量化する。 これらの結果をもとに数理モデルを構築し、外的変化が存在する場合における流動量変化を推定し、実際の結果と比較・検証を行う。 最後に、本研究で提案する分析の枠組みについて総括し、研究成果を学会で発表するとともに論文を執筆し、学術誌に投稿する。
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