研究課題/領域番号 |
21H03531
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61060:感性情報学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
石津 智大 関西大学, 文学部, 教授 (50726669)
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研究分担者 |
河合 隆史 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90308221)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
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キーワード | 神経美学 / ウェルビーイング / 崇高 / 畏怖 / ユーダイモニア / 畏敬 / 向社会性 / 畏怖畏敬 / 崇高畏怖 / 崇高・畏怖・畏敬 / 社会性 / ウェルネス |
研究開始時の研究の概要 |
「崇高さ」には向社会性を促進させる効果があり、近年認知神経科学で注目されている感性概念である。高齢福祉分野では、社会的な交流が高齢者のウェルネスに重要であることが知られているが、本邦の高齢者施設では入居者の交流の少なさが問題となっている。そこで、崇高さが持つ向社会性の促進効果を利用し、高齢者の社会的交流を促進させることで老齢ウェルネスへアプローチすることを目指す。この目的のため、(1)基礎研究、(2)VR研究、(3)高齢者施設でのフィールド研究と、段階的に効果を検証する。
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研究実績の概要 |
「崇高・畏怖・畏敬」は美学では主要な美的体験のひとつである.崇高体験には共感性や利他性など向社会性・他者への意識を促進させる効果があることが心理学実験からわかっており,近年認知神経科学で注目されている感性概念である.高齢福祉分野では,社会的・人的な交流が高齢者のウェルビーイングに重要であることが知られている.しかしながら,本邦の高齢者施設では入居者同士や入居者と外部の人員との交流の少なさが問題となっており,ウェルビーイング低下の一因として考えられている.そこで,崇高体験が持つ向社会性と他者への意識の促進効果を利用し,高齢者の社会的交流を自然なかたちで促すことで老齢ウェルビーイングへアプローチすることを目指す.この目的のため,(1)崇高体験に関する基礎研究,(2)オンライン実験による高齢世代を含めた各世代の崇高観の検討,(3)実験室での脳波実験および高齢者施設でのフィールド研究と段階的に効果を検証する.基礎感性科学と社会的課題を架橋することで,両分野に同時に寄与するものである. 基礎研究では,崇高な聴覚刺激のもつ音響特徴を明らかにした.崇高な音を判断させるオンライン実験で取得した800名以上のデータを機械学習した.また,同じく世代別のオンライン実験のデータから,高齢世代では水流の音や風の音など,特に自然音から崇高さを感じる傾向を示し,世代による崇高な音の対象の違いを明らかにした.現在,国際学術誌への投稿準備中である.実験室での脳波実験では,ドライ電極を利用することで被験者の負担を軽減し脳波計測を行う手続き法を確立した.これにより,最終年度で効率的に脳波計測を実施できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インフルエンザと新型コロナウィルス感染症に対応するため,対面実験とフィールド研究の実施開始を遅らせ,代替として大規模オンライン実験を行なった.その研究実験方法の変更作業及び実験工程の見直しなどに時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
年代別の崇高音と崇高な音の音響特徴が大規模オンライン実験によるデータから明らかになった.この音響特徴を利用することで,効果的に崇高さを体験させられる音刺激を作成した.次年度では,効果的な崇高化刺激を利用することで実験を進める.行動実験による向社会性の促進の検証と脳波実験による崇高音体験の脳活動を調べることで,崇高の理解をさらに進める.また,分担研究者のグループにより作成された仮想空間で崇高感を得られるコンテンツを利用し,VR空間での崇高体験の性質についても検証を始めている.さらに,これまで研究分野で混同して用いられてきた崇高,畏怖,そして畏敬について,日本人を対象とし大規模オンライン調査を実施し,差異を検討する.32の情動リストから各概念について評価させたデータを多変量解析し,概念間の距離の関係からその特徴を明らかにする予定である.
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