研究課題/領域番号 |
21H03558
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62020:ウェブ情報学およびサービス情報学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小林 透 長崎大学, 情報データ科学部, 教授 (90637399)
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研究分担者 |
今井 哲郎 広島市立大学, 情報科学研究科, 講師 (10436173)
荒井 研一 長崎大学, 情報データ科学部, 准教授 (60645290)
征矢野 清 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 教授 (80260735)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 生け簀ロボット / IoT / センサープラットフォーム / センサプラットホーム / センサプラットフォーム / レジリエント・ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、長崎県で注目されている沖合養殖をモデルにした“ネイチャー・レジリエント・ネットワーク型生け簀ロボット”の確立を目指す。具体的には、沖合でも波浪の影響を受けにくい浮沈式生け簀向けに、申請者らが開発した自動給餌装置を多様なセンサと制御コンピュータによりフォグ化する。それにより得られるセンサ情報からオプティカルフローによる魚群行動解析をクラウド上で行うことで、魚の空腹度に基づいたインテリジェントな給餌制御方式を実現する。さらに、本給餌制御を、魚に近いフォグ側が主体となる処理方式とすることで、クラウドとの通信障害が発生してもサステイナブルでレジリエントな自律分散処理方式を明らかにする。
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研究実績の概要 |
(課題2)センサからの情報を基にしたインテリジェントな給餌方式に関して、Optical Flowを当研究室が開発したマルチセンサプラットフォームで撮影した生け簀内の魚群に適用した。餌を生け簀に投入すると、それまでは、水平方向にゆっくり回遊していた魚群が、一斉に上方向に動きを活発化させる。その時のそれぞれの魚の動きをベクトルとして定量化する。具体的な定量化の対象は、ベクトルの大きさと角度であり、これをベクトル量と呼ぶ。本ベクトル量を学習させることで、魚群活性度AIを構築した。魚群活性度AIでは、魚が空腹の時は、餌への反応が早い(移動量大、しかも上方向)、満腹時は、反応が遅い(移動量小、しかも水平方向)という仮説に基づいている。 魚群活性度AIを評価するために、長崎県総合水産試験場内にある実験生け簀の一部を借用し、評価実験を行った。評価実験においては、給餌中の魚群の活性度を下記の2つの状態に分類した。 ①高活性:餌が水面に着水した瞬間、勢いよく食いつき、上下の動きが激しい状態 ②低活性:給餌しても魚群の反応が低い状態 高活性と低活性の区別は、水産試験場のベテラン給餌担当者の判断に基づき分類した。それぞれの状態の時の映像情報からOptical Flowにより算出した魚群のベクトル量を、Support Vector Machineという機械学習にかけることにより学習モデルを作成した。評価実験により作成した学習モデルに、学習する際に用いなかった魚群のベクトル量を入力し、魚群の活性度を正しく判定できるかどうかの検証を行った。その結果、94%の精度で、魚群の活性度を正しく判定できることが確かめられた。この結果から、Optical Flowによる魚群活性度の定量化手法に基づく、魚群活性度AIの有効性が確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(課題2)センサからの情報を基にしたインテリジェントな給餌方式に関して、映像情報からOptical Flowにより算出した魚群のベクトル量を、Support Vector Machineという機械学習にかけることにより学習モデルを作成し、評価実験により作成した学習モデルに、学習する際に用いなかった魚群のベクトル量を入力し、魚群の活性度を正しく判定できるかどうかの検証を行ったこと。その結果、94%の精度で、魚群の活性度を正しく判定できることが確かめられた。また、給餌装置として、農業用大型ドローンを活用し、肥料散布用のアタッチメントを改造することで、生け簀上空から餌の散布が可能な空中給餌装置を開発した。ドローンに着目した理由は、餌の運搬にも活用できるため、大きな省力化効果が見込めるためである。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価する。 マルチセンサプラットフォームに関する論文が査読付き論文として公表された。また、魚群活性度AIに関する成果を、3件の研究会発表、1件の国際会議で発表した。また、これまでの成果を網羅した書籍「スマート養殖技術」を発刊した。
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今後の研究の推進方策 |
(課題2)センサからの情報を基にしたインテリジェントな給餌方式に関して、魚群の活性度を正しく判定できるAIについては、目途が立ったため、今後は、空中給餌装置との連動部分に着手する。具体的には、フォグ化した生け簀において、撮影した映像から画像処理を施し、Optical Flowによる魚の活動量の定量化、およびSVMによる活性度判定をリアルタイムに実施できるようにする。その後、2022年度試作した農業用大型ドローンを空中給餌装置とみなして、生け簀のフォグ側とのリアルタイム通信を可能とする。これにより、フォグ側からの指令に基づき、空中給餌装置から餌の自動投入を可能とし、人手を全く介さない自律的な自動給餌を実現する。 (課題3)通信障害が生じても自律的に給餌制御が可能な分散処理方式に関しては、ドローンを活用した非同期通信方式を確立する。これは、餌を運搬し自動給餌を行う仕組みとして、ドローンを活用することに着目したためである。フォグとドローンの連携により、クラウドに頼らない自律的な自動給餌が可能となっているため、必ずしもフォグとクラウド間の定常的な通信の確保は必要でない。そこで、フォグとクラウド間での5Gによる通信が不可の場合は、ドローンに搭載された記憶媒体を活用して、非同期でフォグとクラウド間の通信を確保する。具体的には、フォグからクラウドへセンサ情報を転送し、クラウド側でアップデータした学習モデルを、クラウドからフォグへ転送する仕組みを開発する。
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