研究課題
基盤研究(B)
放射壊変および海洋拡散により濃度が低くなったセシウム (特に短半減期の134Cs) の実測値に基づく分布パターンの解析は、測定の困難さから著しく少ない。本研究では、日本列島を取り巻く海洋環境に影響を与える北太平洋北西域の親潮寒流域において、134Cs、137Cs、 さらには226Ra (半減期;1600年)、228Ra (5.25年) 濃度を極低バックグラウンドガンマ線測定法により求め、広範囲の高精度なデータベースを作成・解析する。そのうえで、グローバルスケール (または縁海スケール) の海水循環、さらには溶存汚染物質循環モデルを構築する。
あらゆる海洋では、海流の運搬による原発事故等由来の放射能汚染やその他にも様々な海洋汚染の危機にさらされている。海洋環境における溶存成分の循環に関する情報は、海洋物質動態のみならず、有事の事故に関わる海洋汚染に備え非常に重要である。本研究では、2021-2023年の調査航海において採取された海水試料から、化学処理により134Cs、137Cs、226Ra、228Raを分離、地下測定室を利用した低バックグラウンドガンマ線測定法を適用し、定量した。そのうえで、亜寒帯海域を中心としたこれら複数の溶存放射性核種濃度の空間的に高分解能かつ高精度なデータベースを作成した。特に、海洋において現在検出しうる短半減期の134Cs (半減期2.06年) は、2011福島第一原子力発電所事故由来のみである。環境中に放出された時期・地域の限定される 134Csの分布は有効な海水循環のトレーサーとして有効であった。例えば、道東沖では表層の134Cs濃度が、2020 年に最大値を示した。福島原発由来の134Csが主要海流とともに反時計回りに北太平洋を循環、アメリカ西海岸近海を経由し10年かけて道東に到達したことを示唆した。さらに137Csおよびラジウムのから得られる水塊情報を加え、北海道道東沖を中心とした亜寒帯海域を取り巻く時間軸を含む溶存汚染物質の循環パターンモデルを構築した。さらに本研究で得られる日本列島を取り巻く海水の134Csおよび137Cs濃度の分布は、風評被害対策にも重要であった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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