研究課題/領域番号 |
21H03578
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
中嶋 秀 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (10432858)
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研究分担者 |
茅根 創 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60192548)
森岡 和大 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70794056)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | センサー / pH / ISFET / 海洋酸性化 / pHセンサー / イオン感応性電界効果トランジスタ |
研究開始時の研究の概要 |
海洋酸性化の影響が顕著である海底堆積物中の間隙水のpHをモニタリングすることは,海洋酸性化の進行度を評価する上で極めて需要である。しかし,海底堆積物中の間隙水のpHを連続的に計測する技術は未だ確立されていない。そこで本研究では,微小な拡張ゲート電極をアレイ化したイオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)センサーを開発し,これを海底堆積物中に設置することにより,周囲の環境を維持した状態で,海底堆積物中の間隙水の深度方向のpHを連続的に計測する技術を開発する。
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研究実績の概要 |
(1) ISFETアレイセンサーの作製と性能評価 イオン感応部(Ta2O5)とゲート電位検出部(Ag/AgCl)を4個ずつ有するISFETアレイセンサーを作製し,人工海水[Tris (pH8.15)とAMP (pH6.81)]を用いてISFETアレイセンサーの性能を評価した。その結果,いずれのセンサーもpHの変化に対して応答することが確認されたので,ISFET制御用電子回路,データロガーおよびバッテリーを耐水容器に入れ,これを沖縄県備瀬崎の海底に設置して海水のpHを測定した。その結果,1個のセンサーは感応膜の損傷によりpHを計測できなかったが,残りの3個のセンサーは少なくとも24時間連続してpHを計測できることが確認された。しかし,ゲート電位検出部のAg/AgClに劣化が観察された。
(2) カーボンファイバーをゲート電位検出部とするISFETセンサーの作製と性能評価 多くの化学物質や夾雑物を含む試料に浸漬しても劣化しない導電性材料としてカーボンファイバーを検討した。すなわち,Ta2O5をイオン感応部とし,カーボンファイバーをゲート電位検出部とするフロー型ISFET pHセンサーを開発し,3種類のpH標準液(pH 4.01, 6.86, 9.18)を用いて開発したISFETセンサーの性能を評価した。その結果,相関係数0.999の良好な直線性を示すpHに対する検量線が得られ,感度は38.7 mV/pH,ヒステリシス誤差は1.4mVと見積られた。さらに,TrisとAMPを用いてセンサーの校正を行い,実海水のpHを測定したところ,海水のpHは8.02と見積られ,この値は市販のガラス電極を用いるpHメーターで得られたpH値とよく一致した。これらの結果から,カーボンファイバーをゲート電位検出部に用いることにより,Ag/AgClよりも長期間安定して海水のpHを計測できると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ISFETアレイセンサーの作製と性能評価 センサーのイオン感応部とゲート電位検出部をアレイ化し,24時間連続して海水のpHを計測できることが確認できたため。
(2)カーボンファイバーをゲート電位検出部とするISFETセンサーの作製と性能評価 ゲート電位検出部の材料を劣化の少ない導電性材料であるカーボンファイバーに変更してもpHを計測できることが確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 模擬環境でのpH計測 海砂と海水を用いて1mほどの大きさの水槽内に海中の模擬環境を構築し,開発したISFETアレイセンサーの性能評価を行う。耐水性の密閉容器内に電子回路やバッテリーを入れ,イオン感応部とゲート電位検出部だけが外部に露出したシステムを構築する。このシステムを上記水槽内に沈め,イオン感応部とゲート電位検出部を海砂に埋め込み,長期間連続して海水の pH を計測できることを実証する。
(2) 実海域での実証試験 沖縄県琉球大学瀬底研究施設と周辺の海域にて,開発したISFETアレイセンサーの実証試験を行う。サンゴ礁域の海底堆積物中の間隙水の深度方向のpHを連続計測し,データの取得を目指す。また,従来のガラス電極を用いる計測も同様の条件で行い,本センサーで得られたpH応答と比較する。可能であれば,期間を空けて複数回の測定を同じ海域で実施し,計測時期(季節)の違いにより深度方向の pH 分布がどのように変化するかを明らかにする。
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