研究課題/領域番号 |
21H03589
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長濱 智生 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (70377779)
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研究分担者 |
村田 功 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (00291245)
森野 勇 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 室長 (90321827)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | イソプレン / 対流圏オゾン / 大気汚染物質 / 赤外分光法 / 長期変動 / リトリーバル解析 |
研究開始時の研究の概要 |
都市域とその周辺において大気汚染物質の増加による大気質の低下は住民の健康影響を引き起こす。そのため、それらを抑制し、大気質を保全することは今日的な課題である。 なかでも、イソプレンは大気中の酸化過程により、対流圏オゾン等の大気汚染物質を生成する。本研究では大気中のイソプレン濃度を太陽光赤外吸収スペクトル観測データから解析する手法を確立し、対流圏オゾン等の大気汚染物質と併せて上空のイソプレン濃度の過去20年間以上にわたる長期動態を世界で初めて観測的に明らかにする。さらにイソプレンと大気汚染物質の濃度変動の関係とその要因を化学輸送モデルも活用して解明し、大気質の評価と将来予測の精緻化等に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究は赤外分光法による太陽光吸収スペクトル観測データから、大気中のイソプレン濃度を解析する手法を新たに開発し、過去20年以上に及ぶ赤外観測データからイソプレンと大気汚染物質の濃度を同時に解析し、それらの因果関係について化学輸送モデルも活用して解明することが目的である。 初年度は陸別及びつくばで稼働する高分解能FTIRによる太陽光吸収スペクトル観測を継続しつつ、名古屋に設置してある高分解能FTIRで新たに観測を行うのに必要な準備を進めた。COVID-19の影響でメーカからの技術者派遣が遅延したが、FTIR装置のHe-Neレーザー、ランプ冷却装置、真空ポンプ等の消耗品を交換し、装置の内部光学系の調整を行って、整備作業は完了した。しかしその後、装置と制御コンピュータの間で通信障害により観測開始が遅れている。現在、メーカと共に原因と対策を検討している。 また、陸別でこれまでに観測された太陽光吸収スペクトルデータの一部を用いて、大気中のイソプレン濃度のリトリーバル解析を試みた。イソプレンの吸収スペクトルが存在する波数900cm-1付近の観測データに対してリトリーバル解析ソフトSFIT4を用いてイソプレンの対流圏カラム量と解析誤差を求めた。波数幅6.5cm-1の狭帯域と波数幅25.4cm-1の広帯域で解析を行い、結果を比較したところ、広帯域ではイソプレンの吸収スペクトル周辺の水蒸気による吸収との干渉の影響が狭帯域と比べて少ないがデータ当たりの計算時間が狭帯域の場合の10倍以上必要であることがわかり、今後の解析では狭帯域でさらに水蒸気吸収部分を除外する最適化をおこなってイソプレン濃度解析に最適な解析プロトコルの検討を進める。さらに、過去の陸別の全観測データから対流圏オゾンやホルムアルデヒド等の大気汚染物質の濃度解析を行い、陸別における大気汚染物質の季節変動や長期変動等の特徴を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
名古屋での観測に関しては、COVID-19の影響で装置の整備作業が遅延したが。予定通りFTIR装置の整備・調整を完了できた。しかし、観測を開始するには、その後発生した通信障害への対応が必要である。イソプレン濃度の解析に関しては、2種類の解析プロトコルについて誤差解析や水蒸気等の他の微量成分のスペクトル上での干渉の影響を評価し、国際地上観測ネットワーク(NDACC)に標準解析プロトコルとして提案する下準備が、計画通りに進んだ。また、設備備品費で購入した計算機へのラグランジュ型化学輸送モデルの移植作業が完了した。過去に他の計算機で実行した結果を再現することを確認し、2年次のモデル計算開始に支障がない状況を実現できた。
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今後の研究の推進方策 |
赤外高分解能分光観測スペクトルからのイソプレン及び大気汚染物質の濃度解析とイソプレン濃度解析に関する標準プロトコル作成については、概ね計画通り進展しており、今後、陸別とつくばの全観測データを使ってイソプレンカラム量の解析と誤差評価を通じて、異なる観測サイトのデータに対する標準解析プロトコルの適性を評価することを行う。また、購入した計算機へのラグランジュ型化学輸送モデルの移植も計画に沿って進んでおり、引き続いてイソプレン反応モデル及びエアロゾル生成モデルの組み込みを進め、いくつかのテストケースにおける計算結果と観測データとの比較を行う。 一方で研究を遂行する上での問題点が2つある。1つは現時点で名古屋での観測が開始できていない点である。FTIR装置と制御コンピュータとの通信障害の早期解決のためにメーカとの密な連絡を取っているが、さらに長期化が予想される場合には陸別観測所より移送した別の高分解能FTIR装置(Bruker 120M)に変更して観測を始めることを検討する。もう一つはイソプレン解析の標準プロトコル作成を共同して行う研究員の確保が困難な点である。当初想定していた外国人候補者がCOVID-19の影響で採用できず、研究員確保のめどが立っていない。残りの研究期間を鑑みて、国内で短期雇用の可能性も含めて研究員を確保すべく関連するコミュニティで継続して募集を行う予定である。
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