研究課題/領域番号 |
21H03659
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64050:循環型社会システム関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
井岡 聖一郎 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (40598520)
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研究分担者 |
若狭 幸 弘前大学, 地域戦略研究所, 准教授 (40442496)
天野 由記 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 環境技術開発センター, 研究副主幹 (60421674)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 湧水 / 硫酸還元 / 地熱 / 硫酸還元反応 / 有効エネルギー / 微生物 / 探査法 / 硫化水素 / 火山 / 水質 |
研究開始時の研究の概要 |
地熱発電の有望地を見つけるためには,地下の熱水・蒸気が賦存している断層,割れ目からなる断裂構造の評価のために様々な探査を行う。熱水は火山活動により発生するため,熱水に含まれる火山活動由来の硫化水素が深部断裂の存在を示唆する指標と考えられるが,低温湧水に含まれる硫化水素は,微生物硫酸還元反応の生成物である可能性もある。したがって,低温湧水中に含まれる硫化水素が火山活動起源か微生物活動起源か判定させる新しい指標作りが急務である。 本研究では地熱地域において硫化水素を含んでいる低温湧水を研究対象として,硫化水素の起源を明らかにし,その硫化水素の起源判定に基づく新しい地熱資源探査法の開発を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究では,地熱資源探査地域において存在する低温湧水中に含まれる硫化水素が火山活動起源か微生物活動起源か判定させる新しい指標作りが必要と考え,1)微生物硫酸還元反応が生じた地下水が流出しているのか,2)硫酸還元微生物相は存在するのか, 3)微生物硫酸還元反応に必要な有効エネルギーは存在するのか,4)湧水流出域に有機酸や水素を生成する有機態炭素は存在するのかについて評価することにより,硫化水素の起源を明らかにすることを試みている。2021年度では,豪雨災害の発生により当初予定した陸奥燧岳地熱探査地域から北八甲田火山群周辺地域に研究対象地域を変更した。そして,硫化水素を含む低温湧水(岩盤や堆積物の間隙から流出する湧水)を見出した。2022年度では,北八甲田火山群周辺に位置する下湯地域において新たな硫化水素を含む低温湧水探査のためのフィールド調査を行ったが,硫化水素を含む低温湧水は見出すことができなかった。一方,微生物硫酸還元反応が生じた地下水が流出しているのかどうか明らかにするために2021年度から継続して実施している湧水中に含まれる硫酸イオンの安定同位体比分析や微生物が硫酸還元反応に利用する有機酸や水素を生成する有機態炭素濃度分析の結果からは,堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む低温湧水において微生物硫酸還元反応が生じている可能性が示唆された。また,2022年度では,堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む低温湧水を用いた微生物解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,はじめに北八甲田火山群周辺域である下湯地域において,硫化水素を含む低温湧水の発見を目指してフィールド調査を実施したが見出すことはできなかった。一方,岩盤や堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む低温湧水の試料採取,分析は2021年度に引き続き実施した。微生物硫酸還元反応が生じた地下水が流出して硫化水素を含む低温湧水を生み出しているのかどうか明らかにするために,硫化水素を含まない周辺の湧水等も比較のため採取して硫酸イオンの安定同位体比の分析を実施した。その結果,堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む低温湧水は,微生物による硫酸還元反応が起きている可能性が示唆された。また,有効エネルギー解析はpHの値にも依存しており,微生物硫酸還元反応に必要な有効エネルギー解析結果からは,十分な有効エネルギーが存在することが示唆された。そして,微生物が硫酸還元反応に利用する有機酸や水素を生成する有機態炭素がどれくらい含まれているか明らかにするために2021年度に引き続き硫化水素を含む低温湧水の溶存有機炭素濃度分析を実施した。その結果,硫酸イオンの安定同位体比から微生物による硫酸還元反応が起きている可能性が示唆された堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む湧水の方が溶存有機炭素濃度を高濃度含有していることが明らかになった。さらに,2022年度は,堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む湧水を対象に,16S rRNA遺伝子に基づく微生物群集組成解析を行った結果,岩盤の間隙から流出している硫化水素を含む低温湧水とは明瞭に異なった微生物群衆結果を示し,堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む湧水の方がより深部から流出している可能性が示唆された。以上,研究が進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,北八甲田火山群周辺域において,硫化水素を含む低温湧水の発見を目指したが見出すことはできなかった。そして,微生物硫酸還元反応が生じた地下水が流出して硫化水素を含む低温湧水を生み出しているのかどうか明らかにするために,硫化水素を含まない周辺の湧水等も比較のため採取して硫酸イオンの安定同位体比の分析を実施した。その結果,岩盤の間隙から流出している硫化水素を含む低温湧水ではなく,堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む低温湧水では微生物による硫酸還元反応が起きている可能性が示唆された。さらに,微生物が硫酸還元反応に利用する有機酸や水素を生成する有機態炭素がどれくらい含まれているか明らかにするため溶存有機炭素濃度分析を実施した結果,堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む湧水の方が溶存有機炭素濃度を高濃度含有していることが明らかになった。微生物群集組成解析の結果は,岩盤や堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む低温湧水では,硫酸還元反応に関連する微生物の種が評価された。以上の結果から,2023年度は,岩盤の間隙から流出している硫化水素を含む低温湧水の硫化水素の起源推定法として,硫化水素の生成について飽和指数に関する熱力学的解析等について,堆積物の間隙から流出している硫化水素を含む低温湧水では,再度微生物有効エネルギー解析等を行う予定である。さらに,これまで実施している水質分析等も引き続き行う予定である。
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