研究課題/領域番号 |
21H03702
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
友常 勉 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (20513261)
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研究分担者 |
高 榮蘭 日本大学, 文理学部, 教授 (30579107)
石田 智恵 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (50706661)
武内 進一 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60450459)
上原 こずえ 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60650330)
キム ウネ 明治学院大学, 国際平和研究所, 研究員 (70875799)
野平 宗弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (80711803)
呉 世宗 琉球大学, 人文社会学部, 教授 (90588237)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 生存権 / 生存思想 / 社会運動 / 東アジア / 社会運動研究 / 内戦研究 / ポスト冷戦社会研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、①冷戦期東アジアにおける社会運動・文化運動における生存権・生存思想の実践の集積にむけて韓国‐沖縄を貫きつつ、大西洋諸島までみすえた、政治・文化・労働の軍事化と抵抗、そしてベトナムの思想的実践をとおして生存思想の多様性を集積し比較する。②ポスト冷戦期の政治闘争や内戦における生存権・生存思想の可能性の検証。東アジアにおける生存権・生存思想の諸形態をモデルとしながら、アフリカ地域やラテンアメリカ地域の「ポストコロニアル家産制国家」のもとでの内戦と、そこにおける生存権・生存思想の可能性を見定める。③最後に、人文学における生存権・生存思想のアウトプットを考える。
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研究実績の概要 |
COVID-19の感染拡大という状況ではあったが、デスクリサーチを中心にした資料収集とテキスト分析を体系的に進めることができたと考える。また、制限された範囲ではあったが、沖縄をはじめとする国内調査を進めることができた。また、東京外国語大学の集中講義や連続講演会を継続することで、科研メンバーの相互討論の機会を重ねることができた。これによって初年度の研究課題はおおむね達成されたといえよう。なお、研究計画初年度にあたる2021年度の研究体制にもとづいて、それぞれは次の調査研究を遂行した。友常は沖縄における崎山多美の文学的実践を通して沖縄における基地と軍事性暴力に対する対抗的言説を、さらに新左翼運動の総括的議論の検討を行った。野平宗弘は学会報告でベトナムの思想家ファム・コン・ティエンにおける西洋批判と西洋におけるその受容にかかわる分析を進めた。上原こずえは1970年代沖縄青年の反差別・反開発闘争の考察を進めた。武内進一はルワンダを中心に、新自由主義のもとで進行するアフリカにおける土地改革政策の分析を進めた。高榮蘭は東アジアの冷戦下での「レイプ、男性セクシュアリティ」についての分析を、大島渚や大城立裕のテキストを通して考察した。呉世宗は韓国‐済州島、沖縄を中心に、「沖縄構想」をめぐる在日朝鮮人の関わりについての考察を進めてきた。石田智恵はアルゼンチン強制失踪者と家族をめぐる言説の考察を進めた。これらの調査研究を通して、政治的暴力や差別に対する対抗的言説を明らかにするだけでなく、社会運動におけるオルタナティブな生存権と生存思想を発掘していく作業を進めることができたといえよう。また、研究代表の友常、研究分担者の上原、キムウネは、東京外国語大学で開催された集中講義を組織し、冷戦期東アジア、とりわけ韓国、日本、沖縄における政治的暴力の系譜についての議論を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の感染拡大という状況のもとで、デスクリサーチを中心にした資料収集とテキスト分析に比重が置かれた。ただし、沖縄における現地フィールド調査の機会を保証し、相互討論と共通認識は形成されたと考える。以下の課題はそれぞれ論文化することができた。すなわち、友常の沖縄における基地と軍事性暴力に対する対抗的言説と新左翼運動の総括的議論、野平宗弘のベトナムの思想家ファム・コン・ティエンを通してベトナムにおける1960年代の社会運動の思想、上原こずえの1970年代沖縄青年の反差別・反開発闘争の考察、武内進一の新自由主義のもとで進行するアフリカにおける土地改革政策の分析、高榮蘭の東アジアの冷戦下でのセクシュアリティについての分析、呉世宗による韓国‐済州島、沖縄を中心にとした文学と社会思想の考察、である。また石田智恵はアルゼンチン強制失踪者と家族をめぐる言説の考察を進めることができた。社会運動におけるオルタナティブな生存権と生存思想を発掘し、さらに、これを人文学に問題提起できる内容に仕上げていく準備はできたものと考える。また、東京外国語大学での連続講演会や集中講義を活用することで、対面での研究会やシンポジウムに代わる場を設定することができたことも、指摘しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画初年度のデスクリサーチを中心にした資料収集とテキスト分析を踏まえて、次年度は、沖縄における現地フィールド調査の機会を保証し、相互討論と共通認識を形成していく予定である。友常は沖縄における基地と軍事性暴力に対する対抗的言説と新左翼運動の総括的議論を継続する。野平宗弘はベトナムの思想家ファム・コン・ティエンを通してベトナムにおける1960年代の社会運動の思想を考察する。上原こずえは1970年代沖縄青年の反差別・反開発闘争の考察を継続する。武内進一は新自由主義のもとで進行するアフリカにおける土地改革政策の分析を継続する。高榮蘭は東アジアの冷戦下でのセクシュアリティについての分析を継続する。呉世宗は韓国‐済州島、沖縄を中心にとした文学と社会思想の考察を進める。石田智恵はアルゼンチン強制失踪者と家族をめぐる言説の考察を継続する。これらの調査研究を通して、社会運動におけるオルタナティブな生存権と生存思想を発掘し、さらに、これを人文学に問題提起できる内容に仕上げていく。また、東京外国語大学での連続講演会や集中講義を通して、冷戦期東アジア、とりわけ韓国、日本、沖縄における政治的暴力と生存思想についての共同討議を進めていく。
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