研究課題/領域番号 |
21H03737
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
伊藤 清一 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 助教 (70335719)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
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キーワード | ビーム物理 / イオンプラズマ / 空間電荷効果 / バッファガス冷却 / 荷電粒子ビーム |
研究開始時の研究の概要 |
荷電粒子ビームは現代文明を支える重要な基盤ツールの一つである.近年では加速器技術の進歩に伴いビームの低温化・高密度化が進んでいるが,今後その傾向はより一層強まると考えられる.このような高品位ビームにおいてその安定性を阻害すると予想されるクーロン相互作用に起因する集団運動を調査するために,これと等価な系である高密度なイオンプラズマを生成する技術を確立することが本課題の目標である.具体的には,イオンプラズマを低温のヘリウムガスで冷却し,温度が室温以下の低温(高密度)イオンプラズマを実現する.このイオンプラズマの挙動を調べることで次世代の高性能加速器設計に関する重要な指針が得られる.
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研究実績の概要 |
本課題の目的は,イオントラップに捕捉したイオンプラズマを低温のヘリウムガスで冷却することで集団振動が発現するのに十分な状態にし,これを用いて集団振動が加速器ビームの安定性に与える影響を実験的に調査することである.昨年度までに超高真空に到達できる真空系,4 Kまでの冷却が可能な2段GM型クライオスタット,クライオスタットによる冷却可能なイオントラップの製作・組み立てを行った. 本年度はイオントラップを真空容器内に設置し,これをクライオスタットの一段目に接続して冷却を行い下記の結果を得た. 1) クライオスタットの2段目にHeガス冷却用の熱交換器を設置し,Heガス導入系の配管を接続した状態で冷却試験を行った.熱交換器は約100分で4.8Kに到達した.これはクライオスタット単体での到達温度4.2Kよりは僅かに高いが十分な到達温度である.またヒーターで温調かけることにより,熱交換器の温度を4.8Kから300Kの範囲で制御できることを確かめた. 2) 真空容器内にイオントラップを設置し排気試験を行った.この状態での到達真空度は10の-5乗Pa台であり,真空容器のみの場合に比べ3桁ほど悪化した.これは,真空容器とトラップ間の熱絶縁を確保するためにトラップマウントに採用したポリイミド樹脂からの脱ガスが多いためであった.そこで,熱伝導度は10倍ほど大きいが脱ガスの少ないセラミックス製に変更した.その結果,到達真空度は10の-8乗Pa台と本研究に十分な値に改善した. 3) クライオスタットの1段目を使ったイオントラップの冷却試験を行った.本研究での目標値は100Kであったが,当初は115Kまでしか冷却できなかった.しかし,構造を変更することで90Kまで冷却することに成功した.またヒーターで温調をかけることにより,イオントラップの温度を90Kから300Kの範囲で制御できることも確かめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では,R4年度前半にHeガス冷却系とイオントラップの冷却試験を終え,後半にイオンプラズマを適切に冷却できる条件を探索する予定であった.Heガス冷却系の冷却は順調に進んだ.しかし,イオントラップの断熱のために当初採用したポリイミド樹脂からの脱ガスが思ったよりも多く本研究のために必要な到達真空度が得られないことが実験により確かめられた.そのため,これを脱ガスが少ないセラミックスに置き換えた.ただし,セラミックスの熱伝導率はポリイミド樹脂の10倍程度大きいため,断熱性能を維持するためにマウントの構造自体も変更しなければならなかった.数度の試行錯誤の末,目標値としていた100Kよりも低い90Kを得ることに成功した.またイオントラップに設置した温度センサーとヒーターで温調かけることにより,イオントラップの温度を90Kから300Kの範囲で制御できることも確かめた. 本実験においてHeガスの温度とその制御はもちろん重要である.同様にトラップの到達温度と温度制御もまた重要であり,これらの目標をクリアすることは必須であった.そのため,今年度はこの過程に多くの時間を費やすことになり,イオンプラズマの適切な冷却条件の探索まではできなかった.しかし,現状ではイオントラップの温度として目標よりも低い90Kを得ており,R5年度初頭にはイオンプラズマ冷却条件の探索を開始できる.従って,やや遅れていると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
R5年度の目標は低温かつイオン数が多いイオンプラズマを生成する条件を見つけ,その低温・高密度イオンプラズマを用いて集団振動による不安化の条件を調査することである.本年度の序盤は,クライオスタットにより冷却したHeガスを導入して,イオンプラズマの冷却実験を行う.バッファガス冷却法は冷たいHeガスとイオンプラズマを衝突させることでイオンプラズマを冷却する手法である.従って導入するHeガスの温度が低く,その圧力が高いほどイオンプラズマの温度は下がる.しかし,Heガスを冷却するためにクライオスタットの温度を下げすぎると,Arガスがクライをスタットに氷結してしまいイオンプラズマ生成の効率が低下する.また,ガス圧が高すぎるとイオンプラズマの挙動に対して空間電荷効果よりも衝突の効果が支配的になってしまう.従って本研究で必要とするイオンプラズマを生成する適切な温度とガス圧が存在するはずで,これを探索する.イオンプラズマの冷却を確認するには,イオンプラズマの断面方向分布を測定するのが有効である.そのための画像計測装置の整備も本年度初頭に行う.ここまでをR5年度の序盤をめどに行う. 中盤以降は,判明した最適な冷却条件により得られた低温・高密度イオンプラズマを用いて集団振動が励起していることを確認する実験を開始する.集団振動はその振動を電気信号として検出することや,イオンプラズマの形状の変化から観測することができる.集団運動はモード固有の振動数を持つので,特定の条件下においては特定のモードの振動が共鳴的に増大しイオンプラズマ全体が不安定化する.この集団共鳴の発生条件を探索し,これを抑制するための指針を明らかにする. なお,結果の物理的理解を助けるために実験と並行してクーロン相互作用を近似的に導入した多粒子シミュレーションも行う.
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