研究課題/領域番号 |
21H03738
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊豫本 直子 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40508173)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 放射線 / 超伝導材料・素子 / 低温物性 / 超伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
熱計測型の放射線検出器であるマイクロカロリメータは、電荷計測型より1桁から2桁優れたエネルギー分解能を持つことから、可視光から数百keV程度のガンマ線までの幅広い領域で開発が進んでいる。本課題ではより高エネルギーの数百keVから数MeVのガンマ線を対象としたマイクロカロリメータを開発する。この帯域で十分な検出効率を得るために必要なガンマ線吸収体のサイズでは、ガンマ線が吸収された場所から温度計まで熱が伝わるのにかかる時間が距離に依存するため、信号パルス波形のばらつきが無視できなくなることによりエネルギー分解能が悪化する。本課題では位置検出型のマイクロカロリメータの開発によりこの問題を解決する。
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研究実績の概要 |
(1) 位置検出型TES型マイクロカロリメータの開発 20 mm x 20 mm x 1 mm のビスマス吸収体に4つのTES(Transition-Edge Sensor)温度計を取り付けて2次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータを製作したが、既存の素子のメンブレンでは吸収体の重量を支えることが難しかった。そこで、今後厚いメンブレンの素子を製作する場合の熱伝導への影響を調べる目的で、厚さ10 umと12 umのメンブレンの素子を設計・製作し、メンブレンの熱伝導度を測定したところ、既存の5 um厚のメンブレンの場合と異なりメンブレンが厚くなると熱伝導度にTES温度計から熱浴までの距離が影響することが明らかになった。
(2) シミュレータの開発 位置検出型TES型マイクロカロリメータでは信号波形により吸収体へのガンマ線入射位置を推定する。従来は信号波形のシミュレーション結果のみを位置検出性能のシミュレーションに利用していたが、本年度は同シミュレータで発生させた雑音を信号波形のシミュレーション結果に加えることで、雑音の影響まで含めた位置検出性能のシミュレーションを行った。20 mm x 1 mm x 1 mmの吸収体の1次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータにおいて、雑音の影響下でも1 mm程度の位置分解能が得られる見込みであることがわかった。さらに、放射線挙動計算コードPHITSを利用して、位置検出型TES型マイクロカロリメータの吸収体内部でのガンマ線の挙動をシミュレーションすることで、1つのガンマ線が吸収体の複数の場所でエネルギーを付与する場合についても調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
位置検出型TES型マイクロカロリメータの位置分解能について雑音や吸収体内部での複数回の反応を考慮した上でも、1 mm程度の位置分解能が実現できる可能性が見込まれることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は2次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータ用の大面積の吸収体を支えることが可能な厚いメンブレンを持つTES素子を製作して2次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータを製作し性能評価を行う。さらに、位置検出型TES型マイクロカロリメータの組み立て方法を改良することで、ビスマスだけでなく鉛をガンマ線吸収体とした1次元の位置検出型TES型マイクロカロリメータにおいても両端読み出しを可能にする。また、信号波形に雑音を加えたシミュレータの開発を引き続き行う。
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