研究課題/領域番号 |
21H03792
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
吉野 大輔 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80624816)
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研究分担者 |
郷 勇人 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30443857)
船本 健一 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (70451630)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 胎盤オルガノイド / マイクロ流体デバイス / 妊娠高血圧症 / 血行力学環境 / 病態分子メカニズム / 胎盤オルガノイドチップ / 血圧刺激 / 血管障害 / オルガノイドチップ / 人工胎盤 / 血管応答 / メカノバイオロジー |
研究開始時の研究の概要 |
妊娠高血圧症による胎盤・臍帯血管形成不全は、胎児の発育不全、早産、新生児仮死などの重篤な合併症を誘引する。超少子高齢社会の我が国の“安全かつ安心な出産”の実現には、妊娠高血圧症の治療法の確立が社会的急務である。治療標的となる分子の探索において病態の分子メカニズムの解明は必要不可欠であるが、胎盤構造が動物種によって異なり、妊娠自体が母体に劇的な変化を起こす現象のため病態の再現は困難を極める。本研究は、高血圧刺激という力学的観点から妊娠高血圧症の病態に着目し、妊娠高血圧症による胎盤・臍帯血管形成不全の分子機構を解明することを最終目標とする。
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研究実績の概要 |
2022年度は、(1)ヒト妊娠高血圧症のin vitroモデルの確立と(2)血管障害に繋がる血管恒常性制御の分子メカニズムの時空間変容の解明に取り組んだ。 (1)について、まず、前年度に開発したヒトの胎盤構造を再現した流路をコインサイズのチップ内に再現したマイクロ流体デバイスを用いて、ヒト妊娠性絨毛癌細胞株(JEG3)、臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を3次元的に配置することで胎盤構造の再現を試みた。これまでのコラーゲン基質をマトリゲル基質に変更し、デバイス内の細胞動態を観察した。これまで同様に細胞の配置後5日程度でJEG3の融合が観察され、栄養膜モデルの形成が促された可能性が示唆された。また配置後2日から3日程度で、HUVECsによる管腔構造(血管網)形成が確認できた。今後、タンパク質レベルで胎盤構造・機能の再現の可否について検証する。妊娠高血圧症の病態を再現するために、細胞を配置したデバイスを独自の流れ負荷培養系に接続した。リザーブボトルに高低差をつけることで、デバイス内に正圧を負荷することが可能であることを確認した。今後、細胞動態を詳細に解析し、妊娠高血圧症モデルとして妥当な応答を示すか検証を重ねる。 (2)については、これまで不明瞭であった持続的な高血圧刺激に対する血管障害のメカニズムについて、血圧刺激誘導性のアポトーシスの発現とそれに関連するシグナル伝達経路の一部を特定することができた。高血圧刺激の負荷時間が12時間を超えたあたりから、細胞質に局在したままのERK活性が認められ、それによってアポトーシス誘導に関わるCaspase-3の活性化が引き起こされることを前年度に確認したが、これらのタンパク質活性変化にBcl-2、Badなどが制御因子として関わっている可能性が確認できた。今後、持続的な高血圧刺激による血管障害に繋がるシグナル分子機構の時空間変容メカニズムの全容を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト胎盤オルガノイドチップの基盤となるマイクロ流体デバイスを開発し、マトリゲルを基質とした胎盤絨毛がん細胞株とヒト臍帯静脈内皮細胞の共存培養が可能であることを確認した。一方、妊娠高血圧症の生体外モデルとしての妥当性については検証ができておらず、研究計画にわずかな遅れは認められる。また、持続的な高血圧刺激に対する血管障害のメカニズムについても前年度に目星をつけたシグナル分子機構が間違いであり、それ以外の特定のシグナル分子機構が関わっていることを明らかにできたため、概ね当初の計画通り、研究が遂行できていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、妊娠期特有のヒト絨毛性ゴナドトロピン、成長分化因子15、妊娠特異糖タンパク質の分泌量を解析することで開発したヒト胎盤オルガノイドチップおよび妊娠高血圧症の生体外モデルの妥当性を検証する。また、2021年度および2022年度に明らかにした血管内皮細胞の血圧刺激感知・応答機構の時空間的変化に着目して、高血圧刺激により血管障害が発生する分子メカニズムをより詳細に明らかにする。特にBcl-2やBad等のアポトーシス抑制性あるいは促進性のタンパク質活性を解析する。 最終的には上記2項目の研究を組み合わせ、本研究の最終目標である「高血圧環境下の胎盤・臍帯血管形成不全の分子メカニズムの解明」を実現する。
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