研究課題/領域番号 |
21H03798
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 充 九州大学, 農学研究院, 准教授 (70584209)
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研究分担者 |
園田 英人 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (00465725)
小川 剛伸 京都大学, 農学研究科, 助教 (10793359)
田原 祐助 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (80585927)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | バイオマーカー / 質量分析 / がん / がん診断 / ラマン分光 |
研究開始時の研究の概要 |
尿などの非侵襲生体試料中の脂肪酸計測は、がん、認知症、さらには、様々な生活習慣病の疾病状態の予測・診断の可能性を秘めている。そこで本研究では、鎖長・不飽和度の組み合わせで 複雑多岐に渡る脂肪酸を、簡便・迅速かつ網羅的に測定可能な新たな測定技術基盤(ラマン分光法および質量分析法)を構築するとともに、疾患臓器を特定可能な新たな疾病診断技術として確立する。
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研究実績の概要 |
尿などの非侵襲生体試料中の脂肪酸計測は、がん、認知症、さらには、様々な生活習慣病の疾病状態の予測・診断の可能性を秘めている。申請者らは、「乳がん細胞から中鎖不飽和脂肪酸が高排出される(PLoS One 2020)」という基盤知見を報告し、当該脂肪酸が、がん組織での低酸素状態等の代謝状態変化を反映し、非侵襲試料である尿へ排出される最終代謝産物であることを突き止めている。 そこで本研究では、鎖長・不飽和度の組み合わせで複雑多岐に渡る脂肪酸を、簡便・迅速かつ網羅的に測定可能な新たな測定技術基盤(ラマン分光法および質量分析法)を構築するとともに、疾患臓器を特定可能な新たな疾病診断技術の確立を目的とした。 本年度は、がん患者尿中の中鎖不飽和脂肪酸定量を、乳がんに特化して解析し、非がん患者由来検体 n=68および乳がん患者由来尿検体 n=37を分析し、乳がん診断への適応性を検証した。 また、新たな尿中バイオマーカーの簡易・迅速検出法(簡易一次スクリーニング用)として、ラマン分光法に着目し、SERS基板を適用した検出強度の増強を試みた。 さらに、精密二次スクリーニング検査を想定した早期がん診断技術として、新たなカーボンブラックを用いた簡易・迅速かつ網羅的な尿中代謝物一斉解析法の構築を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、がん患者尿中の中鎖不飽和脂肪酸定量を、乳がんに特化して解析し、非がん患者由来検体 n=68および乳がん患者由来尿検体 n=37を分析し、乳がん診断への適応性を検証した。 尿検体からの中鎖不飽和脂肪酸の抽出には、保持型液-液抽出を採用し、N-(4-aminomethylphenyl) pyridinium (AMPP)を用いた高感度LC-MS定量法を構築した。その結果、本法が良好な直線性、再現性、回収率を示すことを明らかにした。本法を用いて、現在尿検体(非がん患者由来検体 n=68および乳がん患者由来尿検体 n=37)の分析ならびにデータ解析を実施している。 一方で、新たな尿中バイオマーカーの簡易・迅速検出法(簡易一次スクリーニング用)として、ラマン分光法に着目し、SERS基板を適用した検出強度の増強を試みており、SERS基板の適用により、検出強度の増大が認められた。現在、本ラマン分析の尿検体への最適化、ならびにデータ取得を実施している。 次いで、精密二次スクリーニング検査を想定した早期がん診断技術として、新たなカーボンブラックを用いた簡易・迅速かつ網羅的な尿中代謝物一斉解析法の構築を試みた。カーボンブラックをイオン化支援剤としたマトリックスを用いない新たなレーザー脱離イオン化質量分析法を確立し、親水性・疎水性の化合物を迅速に一斉検出可能であることを示した。 さらに、さらなるがん患者からの尿検体採取を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに取得している中鎖不飽和脂肪酸定量データを解析し、乳がん診断の可能性を検証する。次いで、構築したSERS増強ラマン分光法を尿検体分析へ適用し、がん診断の可否を検討する。さらに、尿中代謝物の一斉網羅解析法として構築したカーボンブラックLDI-MS分析法を用いて、これまで収集した尿検体を分析し、新たながん診断法として確立する。さらなる診断確度の向上を目指し、引き続き尿検体収集を行う。
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