研究課題
基盤研究(B)
がんの根絶には、がん組織におけるがん幹細胞の誕生・生存機構の解明が必須である。我々は近年、高強度ハイドロゲルを用いてがん幹細胞を迅速に誘導するリプログラミング現象を見出した(Nature Biomed. Eng. 2021)。これは、高機能ハイドロゲルが分化したがん細胞を未分化ながん幹細胞へ初期化することを可能としたものである。本研究では高強度ポーラスゲルを最適化して3次元がん組織モデルを創出し、がん組織の多種細胞間の時空間的相互作用、およびがん幹細胞が誕生・生存・形質転換する動的分子機構を解明する。最終的にはがん幹細胞を根絶し得る治療標的分子を同定し、がん制圧に向けた基盤の構築を目指す。
がん幹細胞はがん組織中の特殊な微小環境(癌幹細胞ニッチ)で創出・生存し、がんの再発を引き起こすと考えられているが、詳細は不明である。本研究では、近年研究代表者らが開発したハイドロゲルによるがん幹細胞へのリプログラミング技術を基盤として、ハイドロゲルに癌幹細胞ニッチの環境を付加することで、がん組織におけるがん幹細胞の誕生・生存機序を解析した。膠芽腫細胞は、血管内皮細胞との直接接触によりリプログラミングを促進した。また、アストロサイトに接着して優位に増殖し、アストロサイト由来の分泌蛋白が幹細胞性を増加させた。さらにドラッグスクリーニングにより、膠芽腫幹細胞に対して効果が認められる薬剤を同定した。
ヒト膠芽腫細胞では低栄養環境および血管内皮細胞との直接接触がリプログラミングを促進した。膠芽腫では特徴的な微小血管増生や糸球体様血管束が認められ、その周囲ではpalisading necrosis(低酸素、低栄養環境)が認められることから、癌幹細胞が生成・生存しやすい環境が整っていることが示唆された。また、アストロサイト由来の分泌蛋白が幹細胞性を増加させたことから、脳に存在する支持細胞が至適な環境下で腫瘍の幹細胞性を誘導し、がん幹細胞の生存に有利に機能していることが示唆された。膠芽腫幹細胞に対して効果が認められた薬剤は、高悪性度の膠芽腫に対して生命予後を改善できる可能性があると期待される。
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